近年、新型コロナウイルスの影響もあって、さまざまな事業で「オンライン化」が進んでいます。
そしてそれは、「自動車教習所」でも同様のことが起こっており、学科教習の「オンライン化」が全国各地の教習所で実施され始めているのです。
この「オンライン学科教習」とはどういうものなのでしょうか?
また、実施する上での「メリット・デメリット」はどのようなものが挙げられるのでしょうか?
今回は、「自動車教習所のオンライン学科教習」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「オンライン学科教習」とはなにか?
概要
日本各地の自動車教習所では、2020年12月から「学科教習のオンライン授業」がスタートしました。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大学などでもオンライン授業が実施されるようになり、職場においてもリモートワークなどを行う企業が増えています。
こうした影響を受け、警察庁が「3密」対策の一環として、自動車教習所でもオンライン式の教習を実施することが認められるようになったのです。
これまでの学科教習との違いは?
これまでの学科教習の常識は、「自動車教習所の教室で受ける」というものでした。
しかし、大学と同じような大きな教室で、50人以上の指導員や教習生が一同に集まるというのは、新型コロナウイルス感染のリスクが高まってしまいます。
もちろん、コロナ禍では隣との間隔を空けたり・教室の入場制限などを行い対策を施してはいましたが、それでも限界があります。
だからこそ、「密を防ぐ」という意味合いから、自動車教習所でもオンライン授業が実施されるようになったのです。
どんな風に授業を受けるの?
その名の通り、これは“インターネットを通して映像で授業を受けること”を指しています。
自宅にいながら、学科教習に必要な授業を受けることができるのです。
通常、普通自動車免許を取得するために必要な学科教習は「26時限」存在します。
その中で、“実技を伴う講義を除いた「21時限」”で、利用することが可能となります。
ちなみに、配信方法は以下の2種類が認められています。
◆録画配信(オンデマンド)
すでにご存じの方も多いと思いますが、それぞれの配信内容についても簡単にご紹介しておきたいと思います。
まず「ライブ配信」は、“リアルタイムの生放送”のことです。
配信方法は教習所によって変わりますが、基本的には「ZOOM」などのビデオ会議システムを使って行われます。
もちろん、教習生の顔も映りますし、指導員・教習生双方の通信も可能です(質疑応答も可能である)。
対して「録画配信(オンデマンド)」というのは、“録画してある授業を、好きな時に観ることができる”というものです。
こちらに関しては、独自のアプリを使ったり・チャンネルを持っていたり……と、配信方法はそれぞれで変わります。
ちなみに、どちらの配信方法であっても、「なりすまし受講」「居眠り」「サボり」などを防止するために、AI顔認証技術などを使って個人の識別を行ったり、授業中もモニターで監視されたりします。
(そもそもサボっていれば、学科試験で合格が難しくはなりますが…)
また、教習後に指導員による質疑応答の機会も設けられているため、授業の理解度も確認されることとなります。
オンライン授業の「メリット」ってなに?
次に、オンライン授業の「メリット」について、ご紹介していきたいと思います。
先に要点をまとめておくと、以下が挙げられます。
②「自分の都合に合わせて受けることができる」
③「3密を回避し、感染症を心配せずに授業が受けられる」
④「一度に大人数が受講できる」
⑤「何度でも繰り返し視聴することができる」
順に捕捉を加えていきましょう。
「教習所に行かなくても学科教習を受けることができる」
最大のメリットは、やはり「教習所に行かなくても学科教習を受けることができる」という点でしょう。
パソコンがなくても大丈夫です。
スマートフォンなら誰でも所持していると思いますので、後はネットがつながる環境であれば、どこにいても授業を受けることができます。
自宅・喫茶店など、自分の好きな場所から教習を受けられるのは便利であるとしか言えません。
もちろん、「教習所に行かない=交通費や時間の節約になる」にもつながります。
「自分の都合に合わせて受けることができる」
これまでの「教習所に授業を受けに行く」というスタイルだと、どうしても“教習所の都合”に合わせて動かなくてはいけませんでした。
予約を取らなくてはいけませんし、今だと感染症のリスクもあって、なかなか教習所に行くことをためらう人も多いはずです。
しかし、オンライン授業の場合は「ネットがつながるところであれば、自由に授業を受ける」ことができます。
ライブ配信の場合は、ある程度日時を押さえる必要はありますが、場所を選ぶことはありません。
録画配信の場合は、それこそ24時間365日いつでも視聴が可能なため、いつでもどこでも授業が受けられるというのは、かなりのメリットとなります。
自動車教習所に通う人は、基本的に多忙な人が多いです。
◆仕事が忙しい社会人
◆子育て中の女性
など
時間に余裕がない人でも、自分の好きな時間に授業を受けることができるのです。
「3密を回避し、感染症を心配せずに授業が受けられる」
これまでの学科教習の場合、混んでいるときはそれこそ大勢の人が、一つの教室で一緒に授業を受けていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の関係もあって、「3密を避ける」という概念が広がり、上記のような授業の受け方は基本的にできなくなってしまいました。
また、感染症のリスクを抑えるために、できるだけ「蜜を避けたい」と考える教習生も多いことでしょう。
オンライン授業の場合、上記を一切気にする必要がなくなります。
これは、オンライン授業が導入された主たる目的でもあります。
なんにせよ、オンライン授業は多くの人々の感染リスクを抑えるのに、重要な役割を果たしてくれるのです。
「一度に大人数が受講できる」
教習所で授業を受ける場合、希望者が多すぎると対応しきれない(別日に予約を取る)ことがありました。
特に繁忙期などではこれが顕著で、「なかなか授業を受けることができない……」とストレスを感じていた人もいらっしゃるのではないでしょうか。
オンライン授業の場合、人数に制限はありませんので、どれだけ受講希望者がいても対応が可能です。
ライフ配信でも録画配信であっても、希望者は方々違った場所から動画を視聴するため、すべての人がストレスなく授業を受けることができるのです。
もちろん、どれだけ多くの人がオンライン授業を受けていたとしても、授業の質は変わりません。
また、感染症対策に影響を及ぼすこともないのです。
「何度でも繰り返し視聴することができる」
これまで一般的な学科教習は、一度受けた授業には「押印」がされて、基本的には同じ教習は一度しか受けることができませんでした。
しかしオンライン化に伴って、この“授業は一度しか受けることができない”という部分は変更され、何度でも動画を自由に見返すことができるようになったのです。
人によっては、一度の教習だけでは把握しきれないこともあったと思います。
(聞き逃した、メモが追い付かなかったなど)
動画は何度でも繰り返し観返すことができるため、さまざまな躓きを克服できるようになったのです。
もちろん、これは復習や試験対策にも非常に役立てることができます。
オンライン授業の「デメリット」ってなに?
メリットが多いオンライン授業ですが、それでも「デメリット」も存在します。
大きく3つが存在しますので、順に説明をしていきたいと思います。
「ネット回線の不具合でやり直しになる可能性がある」
オンライン授業の最大のデメリットは、「通信環境に左右されやすい」ということです。
◆聞き取りにくい
◆遅れて聞こえてくる
など。
最悪の場合、ネットの回線状況によっては途中で動画が遮断されてしまったりすることもあります。
通信環境は、人それぞれで変わってしまいます。
授業の内容を理解できないこともあれば、途中で遮断された場合は「教習の不成立」となり、再度受講が必要となることもあるのです。
できる限り、通信環境が整った場所で場所で、授業を受けるようにしてみてください。
「録画配信の場合、その場で直接質問ができない」
ライブ配信の場合は通話が可能なので、授業の後などで質問をすることができます。
しかし、録画配信の場合は“動画を視聴するだけ=一方通行”なため、不明点があってもすぐに質問をする(問題を解決する)ことができません。
一応、教習所によっては電話やメールなどで質問を受け付けてくれるところもあります。
とはいえ、それでもある程度のタイムラグが発生してしまうので、「分からないところをすぐに解決する」ということができないのです。
「いつでも・何度でも視聴できる」のが録画配信のメリットではありますが、同時に「不明点をその場ですぐに質問できない」というデメリットにもつながってしまいます。
ちなみに、分からない部分は、後で自動車教習所に質問するようにしてください。
タイムラグが発生してしまいますが、それでも「不明点をそのままにしておく」よりはよっぽど良いです。
不明点をメモなどに残しておいて、教習所に赴いた際に教官などに質問をするようにしましょう。
「教習所間の格差が発生する可能性がある」
実は、教習所業界は他の業界と比べて「IT関連が遅れている」という点が挙げられます。
施設によっては、「パソコン自体をほとんど使用していない」というところもあるくらいです。
もちろん、IT関連に強い(いち早く導入している)教習所もあり、オンライン授業も実施と同時に取り入れているところもあります。
だからこそ、この両者の間で“格差”が生まれてしまうのです。
特に地方の小さな教習所の場合は、これ(IT導入が遅れている)が顕著です。
都市部との間で大きな格差が生まれてきますし、場合によっては地域格差になる可能性もあります。
住む場所によっては、「オンライン授業が実施されていない」ということもあるかもしれませんので、事前に通う教習所でオンライン授業が実施されているかどうかは、確認しておいた方がいいかもしれません。
まとめ
以上が、「オンライン授業の説明」および「オンライン授業のメリット・デメリット」についてのご紹介となります。
これらは、通信環境さえ整っていれば、誰でも・どこでも受講することができるため大変便利です。
また、パソコンを所持していなくてもスマートフォンで授業を受けることもできます。
スマートフォンなら誰でも持っていると思いますので、「オンライン授業を受けられない」なんてこともありません。
また、この内容はこれからに期待……とはなりますが、「外国人」や「聴覚障がい者」の方も学科教習が受けやすくなる可能性が期待されています。
というのも、録画配信の場合、「動画を編集する」ことができるのです。
例えば、外国人向けに字幕を付ければ、日本語をまだ十分に習得していない方も授業が受けやすくなるでしょう。
聴覚障がい者の方も同様です。
動画に「手話通訳」を付ければ、授業を受けやすくなることは間違いありません。
このように、オンライン化を進めることで、多くの人が恩恵を受けられるようになるのです。