「タイヤ=消耗品」であり、当然ながらタイヤにも寿命があります。
劣化したものを使い続けていると、乗り心地や燃費が悪くなるだけでなく、事故のリスクも高くなってしまいます。
そのため、一定期間ごとに交換をしなければいけません。
この「タイヤの寿命(交換時期)」はどのくらいなのでしょうか。
また、交換時にかかる費用やタイヤを長持ちさせるコツはどういったものがあるのでしょうか。
今回は、自動車の「タイヤ」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
タイヤの平均寿命はどのくらいなの?
結論からいうと、耐久性はメーカーや商品によって異なります。
また、走行距離・使用環境・車体の保管条件によっても変わってきますし、仮にほとんど運転することがなかったとしてもタイヤは劣化していきます。
この項目では、一般的なタイヤの平均寿命について解説します。
走行時の摩耗による劣化
タイヤは消耗品であり、走るごとに摩耗していきます。
加えて、走行距離・カーブの頻度・停車時の摩擦の程度など、使用環境によってもその寿命は変わってきます。
メーカーや商品によっても異なりますが、耐久性は「5,000km走行すると1mmほど摩耗する」のが一般的です。
そして、タイヤの溝は「いずれの部分においても1.6mm以上」と道路運送車両法の保安基準によって定められています。
その深さがどこか一部でも1.6mm未満になった場合は、整備不良として車検を通すことができなくなるのです。
新品のタイヤの溝は約8mmなので、溝1.6mmをタイヤの寿命と考えた場合は、「6.4mm×5,000km=32,000km」が一つの目安となります。
運転の仕方によって摩耗具合は変化しますが、基本的には「30,000km~40,000km走行したら寿命を迎える」と考えておいてもいいかと思います。
運転していなくても劣化はする
寿命を図るうえでの一つの基準となるのが「走行距離」ですが、仮にまったく車を運転していなかったとしてもタイヤは自然と劣化していきます。
“運転しない=タイヤの溝は減らない”のですが、タイヤのほとんどは“ゴム”でできているためゴムの柔軟性が徐々に失われていくのです。
つまり、“柔軟性が失われる=タイヤが固くなる”ということです。
そうするとグリップの効きが悪くなり・制動距離も伸びてしまうため、スリップ事故の発生リスクが高くなってしまいます。
最近は耐久性が高いものも増えているので、一概に寿命=〇年ということはできませんが、「5年前後」が交換の目安となるかと思います。
スタッドレスタイヤの寿命は短めである
積雪や凍結など、通常とは異なった状況下でも安全に走行することを目的とした冬タイヤ。
その中の一つが「スタッドレスタイヤ」です。
これは、積雪路や凍結路といったいわゆる滑りやすい路面でグリップ力を発揮し、安定した走行を生み出してくれるのが特徴となります。
ただ、気温が低い環境下でもしなやかさが失われないように、ノーマルタイヤよりも柔軟性の高いゴムが試用されています。
柔らかいタイヤは路面との接着面積が増えるためグリップ力が高くなる一方で、「道路との摩擦が大きくなる」という特徴もあるため、摩耗スピードはノーマルタイヤよりも早くなります。
装着期間は冬のみではありますが、摩耗スピードのことを考えると寿命は「約3年」といわれていますので、3度目の冬を超えた辺りでタイヤの交換を検討してみるといいでしょう。
劣化したタイヤを使い続けるとどうなる?
結論としては、「スリップを招く原因となる」「バースト(破裂)を引き起こす可能性がある」であり、下手をすれば周囲を巻き込む重大な事故を引き起こす原因となっていまいます。
「スリップ=滑る」であり、路面に対してタイヤが滑ってしまう現象のことを指しています。
特に雨や雪などの悪天候の日は路面状態が悪くなり、スリップによる事故が増える傾向にあります。
劣化したタイヤは、このスリップの危険性が高くなるのです。
そして、「バースト=タイヤが破裂する」ことを意味しており、これは「スタンディングウェーブ」という現象が元で起こることが多いとされています。
スタンディングウェーブ現象とは、空気圧が不足している状態+高速走行することによって起きるもので、特にスピードが出やすい高速道路上で発生する可能性が高くなります。
「タイヤの空気圧が不足している=タイヤが不安定な状態にある」です。
スピードを上げるごとに急激な速度でタイヤは回転することとなり、タイヤの表面は摩擦圧によって急激に加熱していきます。
不安定な状態にあるタイヤの表面は、やがてこの熱に耐えられなくなり、破裂してしまう……これが「バースト」の原因なのです。
スリップにしろバーストにしろ“コントロールが効かない状態となる”ため、自損事故だけでなく周囲の人をも巻き込んでしまう恐れのある非常に危険なものです。
だからこそ、防げる事故を未然に防ぐために、日々点検をし、定期的にタイヤ交換をした方が良いのです。
劣化を放置することによって得られるメリットは何一つありません。
それどころか、デメリット……もしくはそれ以上に重大な事故を引き起こす危険性があるため、注意が必要なのです。
タイヤ交換の目安について
摩耗の程度は、「スリップサイン」と呼ばれる箇所を確認することで知ることができます。
タイヤの側面に描かれた三角(△)マークの延長線上にある溝の奥にゴムが盛り上がった部分があり、タイヤの摩耗が進行することで、やがてタイヤが地面と接触する「トレッド面」と「スリップサイン」とが同じ高さになります。
「スリップサインが浮き出ている=タイヤの溝が1.6mm未満にまですり減っている」ことを意味するため、こうなると早々にタイヤ交換を行うべきです。
ただし、この数値は道路交通法で定められた最下限の数値となります。
例えば、残り溝が3mm程度あっても、雨天時の高速走行ではタイヤのグリップ力は極度に落ち込み、制動距離が大きく伸びてしまうことが報告されています。
安全に走らせるためにも、3mm以上の溝の確保を意識して、定期的に確認しておくことをオススメします。
後は、以下の点にも注意してみてください。
◆「消費期限」:5年前後が目安
◆「見た目」 :傷やひび割れなど
見た目にも「そろそろ交換した方がいいかな?」と感じる目安はありますので、もし少しでも不安を感じるようならば、業者に点検を依頼してみるのもいいかもしれません。
タイヤ交換はどこでやるべき?
車のタイヤ交換を行う際に最初に考えるのは、「自分で行うか、業者に依頼するか」だと思います。
タイヤ交換は一般的な自動車整備資格が不要ですので、自分でタイヤ交換を行うことも可能です。
特に雪が降る地方ではシーズンが変わるごとにタイヤ交換を行う必要があるので、人によってはチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
ただ、タイヤ交換に関する知識や技術が必要となりますので、不安がある方は業者に依頼するのが得策ともいえるでしょう。
業者に依頼する場合は、以下の場所を利用することとなります。
◆「整備工場」
◆「タイヤ・カー用品店」
◆「ガソリンスタンド」
“ディーラー=特定のメーカーと特約店契約を結んでいる業者”となるため、メーカーの指導が入っており、サービスの質や技術力は高く・安定しています。
ただし、純正用品を使用することとなるため、費用は他より高額になりやすいです。
整備工場は、互換品やリサイクルパーツを使用することもあり、ディーラーに比べて費用が安くなる傾向があります。
ただし、企業規模はさまざまであり、サービスの質や技術力は企業によって異なります。
「良い整備工場を見つける」という点で、少し手間と時間はかかるかもしれません。
タイヤ・カー用品店やガソリンスタンドは、作業場所があるかなどによって、対応可能かどうかが店舗によって変わることがあります。
特にガソリンスタンドはセルフ式も増えたので、対応可能な店舗を見つけるのに少し苦労が必要となるかもしれません。
どの業者を利用するかはもちろん人それぞれなので、情報収集をしっかり行ったうえで決めてみてください。
タイヤ交換にかかる費用について
費用についても、「自分で行うか、業者に依頼するか」で変わってきます。
自分で交換する場合は、以下が必要となります。
◆「ジャッキ」 :1,500円程度
◆「十字レンチ」 :1,000円程度
金額はあくまで目安であり、特にタイヤ代金は車種やタイヤのサイズ・性能によって異なることとなります。
対して業者に依頼した場合ですが、タイヤ代金の他に「工賃(=作業台)」が掛かります。
工賃は、1本あたり2,300円~11,000円ほどが目安となりますが、依頼先によってばらつきがあります。
どちらかというと、ディーラーが高くなりがちであり、ガソリンスタンドは(ディーラーに比べて)安く設定されていることは多いです。
とはいえ、依頼先によって変動するので、この点はしっかりと情報収集を行い、納得できる業者を選択してみてください。
タイヤを長持ちさせるコツについて
この記事内でも何度かお伝えしている通り、タイヤは“消費期限のある消耗品”です。
そのため、どれだけ丁寧な運転を心がけたとしても、いずれは交換をしなくてはいけません。
ただ、タイヤをできるだけ長持ちさせるためにできることはあります。
それが、“日々の定期的な点検を行う”ことです。
スペアタイヤも含め定期的に点検しておけば、突発的に発生する問題にもある程度備えておくことができます。
点検箇所は、「スリップサイン」や「クラック(ひび割れ)」などの見た目だけでなく、「空気圧」のチェックも重要となります。
空気圧のバランスが悪いと、“偏摩耗”の原因となりタイヤの劣化を早めてしまいます。
(偏摩耗とは、タイヤの接地面が不均一に摩耗すること)
これは高すぎても低すぎてもダメで、タイヤに合った適切な空気圧が求められることとなります(適正空気圧は、車によって異なる)。
また、タイヤのバルブやバルブキャップ、ホイールの不具合などによる“空気漏れ”でも変化しますし、見た目には何の損傷がなかったとしても自然と下がっていきます。
空気圧が適正でないとタイヤの寿命も短くなってしまいますので、普段から適正値を保てるよう意識してみてください。
尚、点検は少なくても月に一回、また長距離運転の前には行うことをオススメします。
自身で測り調整するのもいいですし、ガソリンスタンドでの給油時に店員に頼んでチェックしてもらうでも構いません。
加えて、「摩耗を均一にする」ことも寿命を延ばすためには重要です。
タイヤにかかる負担は、車の重量・運転の仕方・路面状況によって変わりますし、装着位置によっても受ける力が異なります。
場合によっては片側だけが極端に摩耗することもあるため、タイヤの摩耗を均一化するために“タイヤの位置交換”を行うのが効果的なのです。
ローテーションは5,000kmほどの走行距離を目安に行うといいでしょう。
ただし、位置交換の方法は車種やタイヤの種類によって異なります。
もし取扱説明書などで指定されている場合は、その指示に従ってみてください。
最後に。
太陽光に含まれる「紫外線」は、タイヤの劣化を早める要因となり得ます。
そのため、屋根付きの駐車場を設けたり、紫外線カット(UVカット)機能を持つボディカバーを被せたりして、タイヤに当たる紫外線を抑えることも寿命を延ばすうえで大切なことです。
いずれは訪れる寿命ではありますが、対策することで極端な劣化を防ぐことはできます。
できる範囲ででも構いませんので、対策を講じてタイヤの寿命を延ばしてみてください。
まとめ
自動車を動かすなかで重要視されやすいのは「エンジンである」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、タイヤも車を動かすための重要なパーツの一つとなります。
いくらエンジンが動いても、タイヤがなければ車は走らないのです。
そして、タイヤは常に地面と接するパーツであり、車の中でもっともダメージを受けやすいパーツでもあります。
走らせることはもちろん、運転する機会が少ない場合であっても、タイヤは自然と劣化していきます。
劣化したタイヤをそのままにしておくと、思わぬ事故やハプニングが起こる危険性もありますので、タイヤの寿命を意識し、適切なタイミングで交換することをオススメいたします。