近年利用者が増加している、個人向けの「カーリース」。
“契約者の希望に合わせた車をリース会社が調達し、月額制で貸し出す”というものであり、普通に車を購入するよりも負担額を大幅に抑えることができます。
このカーリースと切っても切れない関係にあるのが、「残価設定」です。
この“残価”とは一体何なのか。
そして、車を購入する際に耳にする「残価設定ローン」とは何が違うのか。
今回は、こういった点に注目して解説していきたいと思います。
「残価」とはなにか?
「残価」=「残存価格」の略である
残価とは「残存価格」の略であり、“将来の車の価値”を指しています。
車はさまざまなパーツで構成されており、仮に一切使用していなくても時間が経てば経つほど劣化していきます。
つまり、“車の価値”が低くなっていくのです。
一般的には、新車から3~5年ほど経つと、新車価格の1/2~1/3の金額がその車の価値となると言われています。
この金額が「残価」となるのです。
ただし、これはあくまで将来的な話であり、車の使い方によって価値は変動します。
将来の話を正確に予測することはできないので、一般的には「無事故+走行距離が1年に1万km以内」といった条件に設定されます。
カーリースはなぜ月々の支払いを抑えることができるのか?
カーリースは、月々の定額料金を支払うだけで最新の車に乗ることができます。
ガソリン代や駐車場代こそ別途かかるものの、購入時の頭金や登録諸費用は必要ありませんし、保険料や税金もリース料に含まれているため維持費の負担も少なくて済みます。
では、なぜカーリースはこれだけ月々の支払いを抑えることができるのか。
その理由の一つは、「あらかじめ車に残価が設定されている」からです。
例えば、新車で購入してから5年が経過した車があるとします。
その車を下取りや中古買取に出した際に、100万円の値段がついたとしたら、その車の5年後の残価は「100万円」になります。
もし新車を300万円で購入し上記の条件に当てはまったとしたら、結果的に“差し引き200万円でその車に5年間乗ることができた”ということになるのです(ただし、諸費用は除く)。
上記はあくまで一例ですので、実際にいくらで売れるかは車のコンディションなど状況によって変わります。
残価設定とは「カーリースの契約満了時に、その車にどれほどの価値があるのか、その予想査定価格をあらかじめ設定しておく」ことを指しているのです。
「残価設定ローン」とはなにか?
そもそも「ローン」とはなに?
“ローン=銀行などからお金を借りて、後から少しずつ支払う約束”のことです。
車は高額な買い物であり、一括で支払える人もそう多くはありません。
そのため、車の購入資金調達の方法として、ローンを利用することもあるかと思います。
この分割払いの方法は、下記が挙げられます。
◆「頭金」を入れて残額をローンで支払う
◆「残価設定」をしてローンで支払う
近年では、「ローンの支払いを少しでも抑えたい」という要望に応える方法として、残価設定ローンが注目を集めています。
「残価設定ローン」とは?
これは、「新車価格から残価を差し引いた金額を月々支払う」というものです。
契約時に設定した残価をローン最終回の返済に据え置いて、“残価を除いた残りの金額を契約月数で割って返済する”ことをいいます。
ディーラーが先に残価を設定し車体価格から引いた分を月々支払うため、他のローンに比べて支払額が少なくなります。
(自賠責保険・自動車税・重量税・車検費用は別途支払う必要があります)
ただし、残価設定ローンの場合は、支払額に金利が計算されます。
そこから残価を差し引くため、最終的に“金利を多く支払ってしまう”という点には注意が必要です。
「カーリースの残価設定」と「残価設定ローン」の違いはなに?
まずカーリースの残価設定ですが、契約時に先行してリース終了後の残価を決めて差し引くという点はローンと同じです。
ただし、税金や保険などの諸経費もリース料に含まれており、“車にかかるすべての金額”から残価を差し引いた形となります。
対して、残価設定ローンは、“車両本体価格だけ”に対して残価を引きます。
そのため、ローンを支払っている間であっても、税金や車検などの諸経費は別途支払わなくてはいけません。
そもそも、両者には決定的な違いがあります。
それは、「車の所有者は誰なのか?」です。
カーリースの場合は、あくまで車を“車を借りている”だけであり、所有権はカーリース会社側にあります。
そのため、税金や車検などの諸経費はカーリース側が支払うことになり、その分がリース料に加算されるのです。
しかし、ローンの場合は“車を購入している”ため、所有権は購入者にあります。
だからこそ、車にかかる諸経費はすべて自己負担となるのです。
両者は、同じ「残価」が関係してきますが、微妙な違いがあるのです。
「オープンエンド方式」と「クローズドエンド方式」の違い
カーリースの契約方式には、「オープンエンド方式」と「クローズドエンド方式」の2種類があります。
どちらを選ぶかによって、返却時に必要となる費用や支払総額が異なります。
そのため、両者の違いを事前にしっかりと把握しておく必要があるのです。
この項目にて、両者の違いをご紹介していきます。
「オープンエンド方式」とは?
これは、「契約時にカーリース側が設定した残価を、契約者に開示する方式」のことです。
“毎月のリース料を安く抑えることができる”というメリットがあります。
ただし、“契約期間が終わった後の残価を生産する責任は、契約者側にある”という点には注意しておかなくてはいけません。
想定残価が実際の残価を上回っていれば差額が返金されますが、逆に想定残価が実際の残価よりも低かった場合は、契約者はその差額を支払わなくてはいけません。
そのため、残価を高くし過ぎると、生産時に思いもよらない額を請求されるリスクがあるのです。
残価は、カーリース会社が設定します。
基本的には契約者の同意の上で残価設定を高くすることがほとんどですが、中には「想定される市場価格よりも高い残価を設定して安く利用できるように見せかけ、最終的に残価精算で高額な費用を請求する」……といった会社もあるため、注意しておく必要があります。
「クローズドエンド方式」とは?
こちらは、「契約時にカーリース側が設定した残価も、返却時の実際の残価も、契約者に開示しない」方式となります。
契約満了時の残価清算の責任はカーリース会社側にあり、契約満了時の車の価値が設定していた残価より低かったとしても、差額はリース会社の負担となります。
契約者は残価に関する詳細を一切知ることができませんが、差額を請求される心配もありません。
どちらの方がお得なの?
どちらもカーリースの契約方式であり、「月額料金を支払って車に乗る」という仕組み自体に違いはありません。
違いは、“契約時に設定する残価の扱い方”にあります。
まとめると、以下のようになります。
【残価の開示】
・公開
【残価清算の責任の所在】
・契約者
【残価】
・契約者の同意の上で、高く設定可能
【契約者の選択肢】
①残価で車を買い取る
②延長(再リース)
③返却(リース会社と残価の精算)車を査定し、その時点の市場価格と設定した残価との差額を精算
≪クローズドエンド方式≫
【残価の開示】
・非公開
【残価清算の責任の所在】
・リース会社
【残価】
・オープンエンド方式と比較すると上限は低くなりがち
【契約者の選択肢】
①車の買い取りができない
②延長(再リース)
③返却(リース会社へ返却)残価精算は行われない。ただし車に大きな問題がある場合には契約者負担での原状回復が必要となる。
どちらにも一長一短があるため、どちらを選択するかは契約者次第となります。
安心できるのはクローズドエンド方式ではありますが、どうしても「月々の支払いを安く抑えたい」という場合はオープンエンド方式にしてみるのも良いかもしれません。
自身の状況に応じて、必要な方を選択してみて下さい。
カーリースの残価設定のメリット・デメリットとは?
カーリースの残価設定には、メリットがあればデメリットも存在します。
この項目にて、それぞれの特徴をご紹介していきます。
カーリース残価設定のメリットについて
最大のメリットは、「月々の利用料金が安くなる」です。
カーリースは新車価格を元に利用料金を算出しています。
その中には、新車登録時の諸費用や税金、定期点検の費用、車検の費用や保険料なども含まれており、新車価格のままリース料金を計算すると割高となってしまいます。
しかし、残価を設定していれば契約満了後にその車を販売することができるので、その分利用料金を抑えることができます。
カーリース残価設定のデメリットについて
仮に、契約期間中に事故に遭遇してしまったなど“車の価値が大きく下がった場合”には、契約満了時に清算しなければいけません。
また、走行距離が当初定めた年間走行距離よりも多くなった場合も、車の価値が下がってしまいます。
カーリースは、あくまでも“車を借りている状態”であるため、普段から丁寧に車を扱う必要があるのです。
特に、オープンエンド方式で車を借りた場合は、契約満了時の多額請求を防ぐためにも、より大事に扱わなくてはいけません。
残価設定ローンのメリット・デメリットについて
合わせて、残価設定ローンのメリット・デメリットについても解説しておきます。
残価設定ローンを利用すれば、新車価格そのままでローンを組むよりも、支払額を抑えられるというメリットがあります。
ただし、ローン支払い終了時点で、車が自分のものになる訳ではないというデメリットも存在します。
なぜなら、ローンの支払いが終わっても、残価部分の支払いが終わっていないからです。
そのため、
◆厳禁で買い取る
◆車を返却する
◆次に買う車への下取り車として利用する
などの手段を講じなくてはいけません。
ただし、ローンを組んだとしても所有権は“車の購入者”にあるため、税金・車検・定期点検などは購入者が行う必要があり、当然費用も契約者負担となります。
普通に車を購入するよりは月々の支払いを安く抑えることはできますが、それでも決して安い支出ではないため、注意が必要ではあります。
まとめ
カーリースの残価設定にしろ、残価設定ローンにしろ、メリットがあればデメリットも存在します。
そのため、「どちらの方が向いているか?」は、利用者によって異なることとなります。
長所と短所をしっかりと把握した上で、利用者の車の使い方や予算に合ったものを選択してみて下さい。