人生の中で大きな買い物の一つに挙げられる、“車の購入”。
数百万円以上する車を一括で払える人もそうはおらず、ローンを組んで月々支払っていく人も多いのではないでしょうか。
このローンの一種に、「残価設定ローン」というものがあります。
「毎月の返済額を抑えられる便利なもの」と“毎月の返済額の安さ”ばかりが注目されますが、実はデメリットも多く利用時には注意が必要です。
今回は、この「残価設定ローン」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「残価設定ローン」とは?
概要
これは、ローンの支払い方法の一つです。
“残価=契約満了時の想定下取り価格”のことで、契約時に前もって設定することで、毎月の支払い額を抑えることができます。
「残価」の詳細は、以下記事を参照下さい。
契約期間が終わるとどうなるのか?
注意点として挙げられるのは、「残価はあくまでも据え置いているだけ」ということです。
決して“差し引かれている訳ではない”ため、契約期間が終了した後に何らかの形で清算しなくてはいけません。
残価を清算する方法としては、以下の3つが挙げられます。
②残価を支払って乗り続ける
③車を返却する
まず①は、利用していた車を下取りに出すことで、残価を清算する方法のことです。
こうすることで、利用者は安く別の車に乗り換えることができ、販売店側は新たな車の販売と状態の良い中古車を入手できる……という、双方にとってメリットを得ることができます。
ただし、乗り換えは、同じメーカーのものに限られます。
②は、契約時に設定された残価を支払い、利用していた車をそのまま自分のものにする方法です。
残価は、現金で一括支払いをするか、新たにローンを組んで分割して支払うかを選択できます。
最後の③は、乗っていた車を返却し、残価を清算する方法です。
車を返却するため、残価を支払う必要はありません。
どれを選択するかはもちろん人によりけりではありますが、再度残価設定ローンを利用して新車に乗り換える人の方が多いようです。
本当にお得なの?
お得なのは間違いないが、注意すべき点もある
車購入時に一般的に利用されるローンとしては、以下の3つが挙げられます。
②「銀行のマイカーローン」
③「残価設定ローン」
「ディーラーローン」や「銀行のマイカーローン」の場合は、車両価格の全額を負担して月々の支払いを行っていきます。
その点、残価設定ローンの場合は“残価を据え置く”ため、仮に同じ車種を購入したとしても、月々の支払額を他よりも抑えることができます。
ただし、注意しなければいけないのは、「利息負担額」です。
金利は契約するローンによって異なりますが、結果として利息の負担額は3種とも大体同じくらいの金額となります。
その理由は、「残価にも金利がかかる」からです。
確かに、残価を設定することで月々の返済額を抑えることはできるのですが、元金の減りが遅くなるため、利息総額が大きくなってしまうのです。
そして、「契約期間終了後の残価清算」にも注意しておかなくてはいけません。
車を“乗り換える”もしくは“返却する”のであれば、残価の支払いは発生しません。
そのため、結果として支払総額を抑えることができます。
しかし“買い取る”のであれば、残価を支払う必要があり、一括清算やローンを組みなおして支払わなくてはいけません。
こうなると、金銭的な負担が大きくなってしまいます。
仮に、同じ車に長く乗り続けるのであれば、一般的なディーラーローンや銀行のマイカーローンを利用した方が、負担は抑えられるかと思います。
「リセールバリュー」を考えて判断しよう
月々の支払額を抑えることができる……これだけでも相当なメリットであることは間違いありません。
ただし、どんな車を購入しても必ずお得になる訳ではなく、車の「リセールバリュー」を考慮して判断しなくてはいけません。
リセールバリューというのは、「一度購入したものを販売する際の、再販価値」のことをいいます。
人気のある車種の場合は、売却価格が設定した残価を上回ることもあり、結果として“損をした”ことになってしまうのです。
残価は、車購入時にディーラーが独自に設定をしますが、いくらプロの販売員といえども数年後の車の市場価値がどうなるかを正確に把握することはできません。
プロでも難しいことならば、一般の車利用者なら猶更です。
大切なのは、「目先のお得さだけで利用を決めないこと」です。
“月々の返済額だけで見る”と確かにお得に感じるかもしれませんが、必ずしもすべてが優れている訳ではなく、注意すべき点もあれば、他のローン返済の方が優れている(自分にとってお得な)場合もあります。
決して安い買い物ではないため、色々な方法を比較・検討して、自分に合った方法を見つけてみて下さい。
「残価設定ローン」のメリットについて
上手く利用できれば大きなメリットが得られる反面、注意しておくべきデメリットも存在します。
メリット・デメリットとして挙げられるのは、以下です。
1.月々の返済額を抑えられる
2.乗り換えがしやすく、数年おきに新車に乗り換えられる
3.一定の買取価格が保証されている
【デメリット】
1.利息負担額が高くなる
2.走行距離に制限がある
3.追加費用のリスクが高い
4.返却or残価清算が発生する
5.乗り換えが同じメーカーの車種に限られる
6.所有権がない
7.中途解約ができない
8.残価以上の価値があると、損をしてしまう
順に補足を加えていきます。
メリットについて
月々の返済額を抑えられる
最大のメリットは、やはり「月々の返済額を抑えられる」にあります。
毎月の負担を軽減することもできますし、本来であれば購入が難しい車も選択肢に入れることができます。
乗り換えがしやすく、数年おきに新車に乗り換えられる
同じメーカーの新車に乗り換える場合、“残価の支払い”が発生しません。
また、ローンは3年や5年などの短期間で契約することが多いため、金額を抑えて・数年おきに新車に乗り換えることができます。
一定の買取価格が保証されている
契約時に設定した残価は、契約終了時まで変わることはありません。
つまり、「一定の買取価格が保証されている」のと同じ状態になります。
確かに、残価よりも買取価格が高くなった場合は損をすることもあります。
しかし、数年後の買取市場を正確に把握する方法はありませんので、思った以上に値崩れしてしまう可能性もあるのです。
中古車市場の動向やトレンドなどに悩む必要がなくなり、費用の見通しがしやすくなるので、安心して車を購入することができるはずです。
デメリットについて
利息負担額が高くなる
上項でもご紹介した通り、“残価にも金利がかかる”ため、利息負担額が他のローンよりも高くなってしまいます。
車を買い取る場合は、残金を一括で支払うorローンを組みなおす必要もあるため、人によっては金銭的な負担が大きくなってしまいます。
走行距離に制限がある
“残価を設定する=車の価値を保つ必要がある”ため、走行距離の制限が定められています。
普段から車を利用する(走行距離が多い)人によっては、この制限がネックになる場合もあるでしょう。
追加費用のリスクが高い
上記でご紹介した走行距離の制限をオーバーしたり、事故などで車に傷やへこみを作ってしまうと、契約満了時に残価との差額を請求される可能性があります。
また、原則として“返却”を前提としているので、カスタマイズも原則禁止されています。
簡易的なものであれば可能ではありますが、現状維持費がかかるため、注意が必要です。
返却or残価清算が発生する
フルローンであれば返済終了後に車を自分のものにできますが、こちらの場合はローン返済が終了しても車が自分になる訳ではありません。
何らかの方法で、残価の清算を行わなくてはいけません。
乗り換えが同じメーカーの車種に限られる
残価設定ローンで車を乗り換える場合は、原則として「購入した販売店に車を返却し、新しい車を選ぶ」必要があります。
もし他のメーカー車に乗り換える場合は、残価を一括清算して車を買い取り、その上で別途購入手続きを行わなくてはいけません。
所有権がない
残価設定ローンの場合、車の所有権は“ディーラー”にあります。
車を自分の所有物にするには、残価を一括清算して買い取らなくてはいけないのです。
つまり、ローンを組んでいる間は、自由に売却することもできません。
加えて、買取後に所有者を変更する手続きを行うには、時間と手間がかかってしまいます。
車購入時点で「車を自分の所有物にしたい」という場合は、残価設定ローンは向かないかと思います。
中途解約ができない
これは一般的なローンと同様ではありますが、中途解約することはできません。
もし途中でローンの返済を終わらせたい場合は、残りの金額をまとめて支払わなくてはいけません。
どんなローンでも同様ですが、ローンを組む際は必ず計画性を持って行動して下さい。
残価以上の価値があると、損をしてしまう
残価はリセールバリューの影響を受けないため、残価よりも買取価格が高くなった場合は損をしてしまいます。
車や車の中古市場に詳しい人、ある程度リセールバリューを想定することができる人は、残価設定ローンを選択すると損をしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
「残価設定ローン」に向いている人・向いていない人とは?
まず、残価設定ローンに向いているのは、以下のような人です。
◆毎月の支払額を安く抑えたいと考える人
◆車の利用頻度が少ないor走行距離が長くならない人
◆車の利用期間が決まっている人
◆新車にこだわりがある人
◆乗り換えの手間を面倒と感じる人
逆に、以下のような方は、残価設定ローンには向かないかと思います。
●長期的に利用したい人(長期的なコストを抑えたい)
●ロングドライブが多いor車の使用頻度が高い人
●維持費の負担が気になる人
●車の自分の所有物としたい人
車を入手する手段は一つではありません。
近年では「カーリース」を利用する人も多く、こちらであれば月額のリース料を払うだけで車を入手することができます。
頭金もかからないですし、保険・車検などの維持費もリース料に含まれているため、車にかかる維持費を抑えながら利用することができます。
ただし、どんな方法であってもメリットがあればデメリットも存在します。
大切なのは、「特徴を理解した上で、自分に合った方法で車を入手すること」です。
情報収集を行い、さまざまな方法を比較・検討してみて下さい。
まとめ
残価設定ローンは、月々の支払いを抑えることができるお得なローンです。
とはいえ、利息の負担が大きくなったり、車の使用方法に制限があったりとデメリットも存在します。
また、中古車市場の価値が高い車種……例えば以下のような場合は、通常のローンを組んで購入し、売却や下取りに出した方がお得になる場合もあります。
◆定番カラー
◆オプション付き
それに、日本国内で人気がなくても、海外で需要があれば高く買い取ってもらえる可能性があるため、“車の価値”はしっかりと把握しておかなくてはいけません。
車の入手方法はいくつか存在するので、それぞれの特徴をしっかりと理解した上で、自分に合った方法で車を入手してみて下さい。