火災や災害から人々の命や資産を守る「消防士」。
基本的には、「消防車」を使って、陸路から“消火・救出・救助・救急活動”を行うこととなります。
しかし、現在ではその範囲は“空”にも伸びているのです。
大空から消防活動を行う人のことを、「消防の航空隊」と呼ばれています。
今回は、この「消防の航空隊」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「消防の航空隊」とはなにか?
「消化活動」と聞くと、「消防車が出動して消火作業を行う活動のこと」をイメージする人も多いかもしれません。
それは間違いではないのですが、消火活動を行うのは「消防車」だけの役割ではないのです。
例えば、
◆陸路からの侵入が難しい場合の、救出・救助活動
◆遠隔地からの医療機関への搬送
など、“陸路を使っての活動が困難な場合”に、“空路”から、消火・救出・救助活動を行う場合があります。
この役割を担うのが、「消防の航空隊」です。
各自治体の消防機関では、消防車両の他に「消防ヘリコプター」を所有しています。
そして、この「消防ヘリコプター」を使用して消火活動を行う部隊のことを「航空隊」と呼んでいるのです。
消防の航空隊が行っている「消防活動」とはなにか?
行う活動は、主に以下の5つが挙げられます。
2.航空救助
3.航空救急
4.上空からの情報収集
5.広域応援
順に補足を加えていきましょう。
1.空中消火
例えば、大規模な火災の消火活動などの場合、陸路からだけでは消火作業が追い付かない場合もあります。
そういった際に、上空から対象の水を散布し、空の上から消火活動を行う必要があります。
この時に活躍するのが、「消防ヘリコプター」です。
これは、“大規模な市街地の火災”や“広範囲に及ぶ林野火災”などに有効となります。
ちなみに、空中消火には、下記のようにいくつかの方法があり、これは火災の規模や機体の機能などによって変化します。
◆ヘリに備えているタンクにつめた水を、上空から放水する方法
◆火災現場上空を飛びながら撒く方法
など
また、周囲に注意を呼び掛けるため、上空からサイレンを鳴らすことも可能となっています。
2.航空救助
その名の通り、「空から救助活動を行う」ことを指しています。
◆氾濫した河川や海に取り残された人
◆山岳地帯で遭難した人
など
これは、陸路からの侵入が難しい場合などに有効な手段となります。
陸路からの侵入が難しい場合でも、空からであれば“消火”と“救助”を、状況に応じて同時に行うことができるのです。
もちろん、状況によっては地上にいる消防隊員と連携して活動にあたることもあります。
3.航空救急
陸上と同様に、空路であっても「救急隊員」が搭乗することがあります。
陸上の救急車内と同等の救急処置をしながら、ヘリコプターで医療機関へ搬送することができるのです。
これは、特に僻地や離島など、陸上からの救急手段が乏しい救急通報に対して、真価を発揮するケースが多いです。
4.上空からの情報収集
火災・事故・災害が発生した際は、場合によっては地上からではその全容を把握するのが難しい場合もあります。
そういった時に、消防ヘリコプターが活躍することとなります。
上空から情報収集を行い、その情報を地上にいる隊員や災害対策本部などに送ることができるのです。
加えて、震災などの大規模災害が起きた際にも、まずは被害状況をしっかりと把握する必要があります。
こういう場合にも、航空隊が先発隊となって被災地に赴き、上空から情報収集を行うのです。
5.広域応援
火災や災害は、いつどこで発生するか分かりません。
仮に、大規模な火災や災害が発生したとき、場合によってはその自治体の消防の人員や資機材だけでは対応できないことも十分あり得ます。
そういった場合に、「緊急消防援助隊」として、消防組織では都道府県の垣根を越えて、被災地などの現場に応援に駆け付ける制度があるのです。
消防ヘリコプターは、こういった場合にも活躍できるのです。
(陸路よりもいち早く現場に駆け付けることができますし、広域応援活動も行える)
また、国内だけでなく海外の大規模災害に対しても、被災国から日本に応援要請を受けた際に、国際消防救助隊を派遣するシステムというものが存在します。
実際に、消防ヘリコプターや国際消防援助隊として派遣され、多くの海外での災害現場でも活動を行ってきた実績があるのです。
どうすれば「消防の航空隊」になれるの?
まず、消防の航空隊になるためには、「自治体の消防職員」にならなくてはいけません。
↓
◆消防学校に入り、知識とスキルを学ぶ
↓
◆消防署に配属され、現場で経験をする
↓
◆「航空隊」に選抜される
↓
◆適性試験に合格する
↓
◆「航空隊」に配属される
このように、消防士として現場を経験したのちに「航空隊に選抜」され、その後適性試験に合格することで、航空隊に配属されることとなるのです。
ちなみに、中途採用で航空隊の活動において有利な資格(整備士や事業用操縦士など)をすでに所持していたとしても、いきなり航空隊に配属されることはありません。
まずは、消防署で現場を経験することから始めなくてはならないのです。
ただし、上記は「航空救助隊」や「救急隊」になりたいという場合の話です。
例えば、「消防ヘリコプターの整備士や操縦士になりたい!」という場合は、(東京消防庁を除き)民間の航空会社などに就職し、そこから出動する場合もあります。
「レスキュー隊」「ハイパーレスキュー隊」とはなにか?
「レスキュー隊」とは?
正式名称は「特別救助隊」です。
これは、消防吏員で構成された人命救助の専門部隊のことであり、各自治体の消防署に配属されています。
交通事故・火災・自然災害などの幅広いシーンで活躍しています。
消防士との違いは、「消防官のなかでも選りすぐりの体力・技能・知識を持ったスタッフのみで構成されている」ということ。
オレンジ色の救助服に身を包み・専用の救助用資機材を積み込んだ車両に乗って出動し、日常的な消防活動だけでなく水難救助隊や山岳救助隊を兼任しているケースが多く見られます。
「ハイパーレスキュー隊」とは?
こちらの正式名称は「消防救助機動部隊」であり、主に地震などの大規模な災害に対応するための特殊な技能を持つ隊員で構成されています。
全国で東京消防庁にのみ設けられており、レスキュー隊のうち最高ランクの区分である「特別高度救助隊」のひとつとなります。
(このことから、正式な名称は「東京消防庁消防救助機動部隊」となる)
ちなみに、ハイパーレスキューが発足したのは、「1996年」となります。
なぜ、ハイパーレスキューが誕生したのか?
それは、前年の1995年に発生した「阪神淡路大震災」にあります。
その際、既存のレスキュー隊だけでは十分に対処することができず、その教訓として“大規模災害に突破した機動部隊”を作ることとなったのです。
「エア・ハイパーレスキュー隊」とは?
上記の通り、東京消防庁には「ハイパーレスキュー隊」が配備されています。
東京都内だけでなく、日本全国の大規模事故や災害にも対応できる、高度な救助技術と知識を持った救助の精鋭部隊のことです。
そして、2016年には空のハイパーレスキュー隊にあたる「航空消防救助機動部隊」……通称「エア・ハイパーレスキュー隊」が発足されたのです。
これは、2011年3月の「東日本大震災」が発足のキッカケとなります。
◆近年起きると予想されている「首都直下型地震」や「南海トラフ地震」のような大災害にも対応できるようにする
特に、日本の中でもビジネスの中心地となっている地域では、オフィス街や高層ビルも多くなっています。
陸路からの進入、消火・救助活動が困難な際は、やはり空からの支援が必要不可欠となる場合も多いのです。
まとめ
以上が、「消防の航空隊」についてのご紹介となります。
ちなみに、消防組織の配置は“市町村単位”となっています。
しかし、すべての市町村の消防局に消防ヘリコプターや航空隊を設置するのは、規模や予算の関係で難しく、現状は「東京都」「一部の政令指定都市」、そして「都道府県単位」で消防ヘリコプターや航空隊が配置されていることとなります。
現在、特に都市部はオフィス街や高層ビルが多くなっています。
陸路からの進入、消火・救助活動が困難な場合、空からの消火・救助・救急活動を行うことができる「航空隊」の存在は貴重かつ重要です。
また、「地震大国」である日本は、これからも大規模な震災が予想されており、「消防士」はもちろん「航空隊」の重要性は増していくことが考えられます。
配属されるには、まずは自治体の消防職員として現場を経験することから始まります。
そして、消防職員になるには、高難度の消防士採用試験に合格し、消防学校で厳しい訓練をクリアしなければいけません。
その上で、“選抜”され、“適性試験に合格する”ことで、配属されるようになるのです。
道のりは非常に険しいですが、配属されれば「やりがい」と同時に「キャリアアップ」も目指すことができるようになるでしょう。
関心がある方は、知見を広げて、その一歩を踏み出してみてください。