盗難や車上荒らしなど、車に関わる犯罪は今も絶えることはありません。
実際、自動車の盗難は少なくなく、万が一盗まれでもしたら、解体され部品を転売されてしまうケースもあります。
大切な車を盗まれないためには、どのような盗難防止策を取っておく必要があるでしょうか。
また、もし盗難の被害に遭ってしまった場合、どのように対処すればいいでしょうか。
今回は、「車の盗難」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
被害の可能性は誰にでもある
車を所有している人であれば、盗難被害は誰にも起こりうる可能性があります。
「自分は大丈夫」と他人事で済まされる問題ではなく、車の所有者であれば誰しもが盗難防止対策を行っておく必要があるのです。
警察庁が発表している「自動車盗難等の発生状況について」によると、自動車盗の認知件数は以下のように公表されています。
◆平成25年:21,529台
◆平成26年:16,104台
◆平成27年:13,821台
◆平成28年:11,655台
◆平成29年:10,213台
◆平成30年:8,628台
◆令和元年:7,143台
◆令和2年:5,210台
◆令和3年:5,182台
この過去10年のデータを見ると、最多の認知件数は平成25年の「21,529台」であり、その後は年々減少傾向にあります。
自動車そのものの盗難防止対策が進化し続けていることもあって、この10年間で実に約7割もの減少に成功しているのです。
とはいえ、車の盗難が完全に根絶されたわけではないため、減少傾向が続くからといって油断をしてはいけません。
盗難の手口について
車の盗難手口はさまざまであり、手口ごとに対策が異なります。
古くから知られている方法として挙げられるのは、「車に直接侵入して盗む手口」です。
◆開いた窓の隙間から針金などを差し込んでロックを解除して盗む
◆ハンマーなどでガラス窓を割って侵入する
一見すると原始的な方法に感じるかもしれませんが、こういった強引な手口は、所有者の防犯意識がどんなに高くても狙われてしまえば防ぐことが難しくなります。
また、自動車の多機能化に伴い新たな手口も明らかとなっており、例えば以下のようなものも存在します。
◆「イモビカッター」:車両に備わる盗難防止装置「イモビライザー」の機能を悪用する手口
◆「コードグラバー」:ドアロックのコードを盗み取る手口
◆「CANインベーダー」:自動車のシステムに直接侵入して車両を操作する手口
車業界は時代とともに常に進化し、それと同時にさまざまな防犯対策も施されています。
また、犯罪対策も強化されており、実際に被害件数は減少傾向にはあります。
しかし、それでも犯罪を犯す人は少なからずいるため、自身でできうる限りの防犯対策も行っておいた方が良いのです。
盗まれた車はどうなるのか?
盗難対策をしっかりしていたとしても、車が盗まれてしまう可能性はあります。
そして、盗難を犯す人は計画的に犯行を行うことが多く、一度盗まれてしまうと取り返すことが難しくなってしまいます。
盗難車は、その後どうなってしまうのか。
ケースとしてよくあるのは、以下の2つです。
②「バラバラに解体される」
前者は、盗難車を一旦解体して、海外に輸出します。
本来であれば、自動車を輸出する際は税関で車体番号が照会され、盗難車でないことを確認してからでなければ輸出許可は出ないのです。
しかし、窃盗グループなどは車をパーツごとに分解・輸出し、相手先国で輸入許可が出てから再び組み立てて販売するのです。
一度輸出されてしまうと追跡することはかなり難しく、取り戻すことはできないと考えておいた方がいいかと思います。
そして後者の方ですが、盗難車は国外に輸出するだけでなく、解体してパーツを取り出し、国内で販売されることもあります。
パーツごとに解体してしまえば、盗難車であったかどうかは判断することができなくなります。
こちらの場合、車体の一部が捨てられている可能性もありますが、パーツが抜き出されているため、この状態で車を走らせることはできません。
どうやって盗難を防止する?
対策1.盗難防止グッズ・用品を活用しよう
ここまでにご紹介した通り、車を盗む手段はいくつかあり、もし盗まれてしまうと、仮に戻ってきたとしても元のままの状態で返ってくることはほとんどありません。
そのため、「いかに防犯対策を施しておくか?」が重要となります。
車に備わっている盗難防止対策も年々進化していますが、それだけでは不安が残りますので、+αで自身で対策強化を行っておいた方が良いです。
自身で防犯対策を行う方法として有効な手段の一つは、「防犯対策グッズ・システムを活用する」です。
盗難対策として意外と有効なのが、「ボディカバーを活用する」です。
なぜ有効なのかというと、「犯人は盗むまでに手間や時間がかかる車は狙わない傾向にある」からです。
“カバーを剥がす”という工程が加わるだけでも、犯行への抑止効果は高まります。
ボディカバーは、比較的安い値段で簡単に導入することができますので、非常にオススメです。
他にも、ハンドルロックやタイヤロックのように、「車を物理的に移動させないための道具」も活用してみるといいでしょう。
“妨害”と“抑止”の両面で有効となります。
また、防犯対策グッズ・用品も、時代とともに進化し続けており、ハイテクを活用した高性能なものも販売されています。
例えば、異常時の警報や緊急通報機能、盗難後の位置検索機能を備えたカーセキュリティシステムなど、さまざまな種類が存在します。
盗まれたときのために、「車両追跡サービス」に契約しておくのも良いかと思います。
対策2.駐車場にも盗難対策を行うこと
車本体だけでなく、駐車するスペースにも盗難対策を施しておくと、尚効果が上がります。
最たる例は、「防犯カメラ」や「人の侵入を感知して発光するセンサーライト」などの設置が挙げられます。
前者の場合は、異常時の映像を記録し、万一の場合にも犯人追跡の手がかりを得ることができます。
後者の場合は、周囲を自動で明るく照らすことで、無人の状態であっても犯人を警戒させることができます。
上述にも記載した通り、車の盗難は計画的に行われることが多いため、犯人は「車を盗みやすい環境にあるか?」という下見を行うことがほとんどです。
防犯カメラやセンサーライトなどがあれば、下見に訪れた時点で犯行を諦めさせる抑止効果にも期待できることでしょう。
対策3.盗まれにくい環境に車を置く
自宅などに車を駐車する場合、長時間駐車することが多いことから、上記の対策も行いやすくなります。
しかし、外出時の一時的な駐車の場合、毎回車への防犯対策を行うのも手間がかかりますし、他所の駐車スペースに勝手に防犯対策を施すこともできません。
そのため、外出時の一時的な駐車の場合、「盗まれにくい環境に車を置く」ことが重要となってきます。
最たる例は、「人通りの多い駐車場に停めること」「防犯カメラが設置されている駐車場に停めること」です。
人の目がある場所ならば、犯人も警戒して犯行に及びにくくなりますし、仮に問題が発生すれば周囲の人が警察に通報してくれる可能性もあります。
また、車からほんの少し離れる場合であっても、盗難への意識をしっかり持っておくこともオススメです。
少しの意識で被害を回避できる可能性が高まりますので、普段から盗難対策意識をもって、盗まれにくい状況を作りましょう。
対策4.複数の盗難防止策を活用しよう
ここまでにご紹介した通り、車を盗難する手口は一つではありません。
また、一つの対策だけでは犯人に突破されるリスクもあるため、複数の盗難防止策を活用することをオススメいたします。
上記に記載した通り、「犯人は盗むまでに手間や時間がかかる車は狙わない傾向にある」ため、複数の盗難防止策を用意しておけば、それだけ狙われる可能性が低くなります。
車のカバーとタイヤロックを併用するだけでも、十分効果があります。
車は重要な移動手段の一つであり、そもそも非常に高価な買い物です。
盗まれてしまうと取り返すことは難しく、自身にとって痛手でしかないので、できる限りしっかりと防犯対策を行って、大切な車を盗難から守るようにしてください。
もし盗難に遭ってしまった場合はどうしたらいい?
どれだけ厳重に盗難対策を施していたとしても、100%盗難を防げる保障はありません。
ちょっとした油断から盗まれてしまう場合だってあるのです。
もし万が一にも盗難に遭ってしまった場合は、どうしたらいいのか。
この項目にて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
対処1.警察へ「盗難届」を提出する
車が盗まれていることに気づいたら、まずは警察へ「盗難届」を提出してください。
警察に報告しておかないと、盗難された車でトラブルや問題が引き起こされた場合に、所有者に対して責任が問われることとなるのです。
車を悪用されたり、下手をすれば犯罪に巻き込まれてしまう可能性もあるため、必ず行ってください。
尚、盗難届の出し方についてですが、以下のような流れとなります。
↓
②最寄りの警察署もしくは交番へ行く
↓
③警察官からの質問に回答する(盗難された日時や場所、状況と盗難に気付いたタイミングなどを聞かれます)
↓
④盗難届を提出・受理される
盗難届を提出するのにかかる時間は、15分~30分ほどです。
受理されると、「盗難届の受理番号」を取得することができます。
これが、=盗難届を提出したという証明になり、今後のその他の手続きにも必要となりますので、きちんと番号を控えておいてください。
対処2.保険会社への連絡や駐車場の手続きなどを行う
自動車の任意保険に加入している人は、盗難が保険の対象となる場合がありますので、契約している保険会社に連絡をしてください。
また、駐車場を借りている場合は、その契約会社にも連絡をしてください。
上記で記載した「盗難届の受理番号」は、“自動車を所有していない証明”となり、それぞれの連絡時に必要なものとなります。
対処3.税関に連絡する
上述にも記載した通り、盗んだ車を現金に換えるため、海外に輸出される可能性もあります。
海外での違法取引に使われる前に、税関で輸出を止められる可能性があるため、被害に遭った際は税関にも連絡をしておいてください。
詳細は、税関のホームページにある「密輸情報提供のお願い」を参照ください。
対処4.廃車手続き(一時抹消登録手続き)を行う
運輸支局の自動車検査登録上では、「盗難された車の登録は生きている状態」であるため、盗難車であっても公道を走ることができてしまいます。
そのため、車を使用できないように、運輸局に「廃車の手続き」を行わなくてはいけないのです。
この、自動車の使用を一時的に中止する手続きのことを「一時抹消登録」といいます。
また、一時抹消登録をすることで、車の自動車税の請求を止めることもできます(すでに自動車税を払っている場合は、都道府県の税事務所で還付手続きを進めてください)。
この登録を行うためには、以下の書類が必要となります。
◆ナンバープレート前後2枚 ※
◆印鑑登録証明書(所有者のもので、発行より3か月以内)
◆盗難届の受理番号
◆印鑑登録されている実印
※一緒に盗難に遭っていた場合は、「理由書」の提出が必要となる
ちなみに、もし盗難された車が見つかった場合は、再度乗れる状態かどうかの確認を行う必要があります。
一時抹消登録を済ませている場合、「中古新規登録」という、再度車の使用を開始する検査を受けなければいけないのです。
このように、自動車を盗まれてしまうと、被害者である車の所有者自身がいろいろと手続きを進めなければいけません。
「自動車を盗まれたのに、こんな手間まで……」と感じる人もいるかもしれませんが、いずれもトラブルを回避するために必要な手続きとなります。
このような被害を防ぐためにも、できる限りの盗難対策を行っておいた方が良いのです。
盗難は、保険の対象になる?
これについては、“加入している保険”によって変わります。
もし、車の盗難保険に加入していれば、保険金を受け取ることができます。
ただし、加入している保険によって金額は変わるため、保険金が全額出ることもあれば、一部しか出ない場合もあります(最悪一円も出ない可能性も……)。
この点は、保険加入時にその内容をしっかりと検討しておいてください。
また、手続きの方法や請求期間などは保険会社によって異なるので、保険会社に連絡をして確認を取ってみてください。
加えて、保険金の支払いには、上記でご紹介した「盗難届の受理番号」などが必要となることが多いので、この点もお忘れなきようご注意ください。
尚、保険金について、一つ注意しておくべきことがあります。
それは、「過失の場合は保険金が出ない可能性もある」ということです。
一般的には、「被害者側に過失(ミス)がない場合」にのみ保険金が出ることが多いのです。
例えば、以下のような場合。
◆キーをロックせずに駐車場に置いておいた
◆鍵は閉めたが窓は開けたまま路駐していた
こういった場合、「被害者側にも落ち度があった」と判断され、保険金が出ない可能性もあるのです。
そのため、ほんの一時的な場合であっても、車を離れる場合はしっかりと鍵をロックしておくことが重要となります。
余談ですが、車上荒らしの場合は、「身の回り品担保特約」が車両保険に付いていれば、補償対象となります。
これも、各保険会社やプランによって異なりますので、その内容を事前にしっかりと確認しておいてください。
まとめ:盗難防止対策は車の購入時から始めよう
車は、大切な移動手段の一つであり、非常に高価な買い物となります。
また、購入したあとも維持費がかかり、便利ではあるものの非常にお金のかかるものでもあります。
だからこそ、大切に扱わなくてはいけません。
盗まれてからでは遅いので、盗難防止対策は車の購入時からしっかりと行っておくことをオススメいたします。
対策手段も豊富に存在するので、それらをうまく組み合わせて、盗まれにくい工夫をしてみてください。
そして、万が一にも盗難の被害に遭った場合は、その後の対応もしっかりと行ってください。
◆保険検車や駐車場の管理会社に連絡する
◆税関へ連絡する
◆廃車手続き(一時抹消登録)を行う
何もせずに放ったらかしにしておくと、のちのトラブル……下手をすれば犯罪に巻き込まれる可能性もあります。
「被害者なのに……」という気持ちもわかりまますが、無用なトラブルを避けるためにも、必要な処置をしっかりと行ってください。