「交通事故」というのは、いつ何時起こるかまったく予想ができません。
自身が事故を引き起こしてしまう可能性もあれば、別の誰かが引き起こした事故に巻き込まれる可能性だってあるのです。
そして、万が一にも事故を引き起こしてしまった際に役立てられるのが、「自動車保険」です。
自動車にまつわる保険には、「自賠責保険」と「任意保険」というものがあります。
「任意保険」の方はCMなどでも馴染み深いため、ご存じの方も多いと思います。
しかし、「自賠責保険」についてはあまりよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、この「自動車保険」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「自動車保険」とはなにか?
結論からいうと、これは「自動車に関連した損害が発生した場合に、保険会社が保険金などによって損害を補償する保険」のことをいいます。
交通事故を起こしてしまい、相手が死傷したり相手の自動車などを破損してしまったりした場合、予期せぬ多額の賠償を求められることがあります。
こういった場合に備えて、自動車の運転者は「自動車保険」に加入する必要があるのです。
車を運転している以上、必ず事故の危険が伴うこととなります。
もしかしたら中には「自分は安全運転を心がけているので、自動車保険に加入する必要はない」と考える人もいるかもしれません。
しかし、どれだけ自分が安全運転を徹底していたとしても、どれだけ自動車の安全装置が進化したとしても、“絶対に事故は起きない”と断言することはできないのです。
例えば、もし仮に目の前にいきなり歩行者が飛び出してきたら……?
ドライバーの運転技量や自動車のブレーキ性能などに関わらず、歩行者と接触してしまう可能性も在りうるのです。
そのため、どれだけ安全運転を心がけているベテランドライバーであったとしても、自動車を運転する以上は自動車保険への加入は欠かせないのです。
自動車保険の種類について
冒頭でもお伝えした通り、自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」の2種類に大別することができます。
この項目で、それぞれの特徴をご紹介します。
「自賠責保険」とは?
正式名称は「自動車損害賠償責任保険」であり、バイクや原動機付自転車を含むすべての自動車に契約が義務付けられている“強制保険”です。
これは、「自動車損害賠償保障法」に基づいています。
上記の通り、“強制保険”であり、もし未加入で運転した場合は法律違反となります(車検にも通らない)。
契約が切れたまま運転してしまうと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を受けてしまいます。
加えて、違反点数6点が付加されて免許停止処分となります。
また契約期間中であったとしても、「自賠責保険証明書」を携行せずに運転したことが発覚すれば、30万円以下の罰金処分が下されます。
法律を基としたものであり、法律違反した場合は罰則が科されるということを肝に銘じておきましょう。
「任意保険」とは?
こちらは“任意”と記載されている通り、「個人の自由意志で加入する保険」となります。
テレビCMやWEB広告などで見かけることが多い保険会社が提供しているものであり、個々のドライバーの判断で加入するものとなっています。
上記の保険ではカバーしきれない損害に対して、「保険金による備えが欲しい」という場合に加入するものと考えるのが良いと思います。
両者の違いはなんなのか?
両者の最大の違いは、「加入の必要性」と「補償範囲・内容」にあります。
前者は上記でもご紹介した通りで、「自賠責保険=強制保険」であり、「任意保険=個人の自由意志で加入する保険」となります。
そして後者ですが、まず自賠責保険の補償範囲は、交通事故などで他人を死亡させたり怪我をさせたりした場合の「被害者の身体に対する損害賠償」のみに限定されます。
その補償内容は、以下の通りです。
◆後遺障害(逸失利益、慰謝料) :最高4,000万円
◆死亡(逸失利益、慰謝料、葬儀費) :最高3,000万円
この金額だけを見ると大きく感じる人もいるかもしれませんが、交通事故の損害賠償額としては決して十分なものとは言えません。
なぜなら、(事故の状況や規模にもよるが)加害者が数億円の賠償義務を負うことも珍しくはないからです。
もし不足分が発生した場合は、自身で補填する必要があります。
加えて、運転者自身も怪我をした場合は治療費もかかりますし、休業補償もないため会社を休むことになった場合は貯蓄だけでやりくりをしていかなくてもいけません。
この点をカバーするために、任意保険が存在するのです。
対して任意保険の場合は、多種多様な補償が用意されています。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
◆「対物賠償補償」
◆「車両補償」
加害者側のドライバーや同乗者、財物なども補償の対象とされており、自賠責保険では補いきれない損害をカバーすることが可能となります。
また、補償範囲や保険金額は、契約者自身が自由に決められる場合があります。
加えて、任意保険には保険会社が独自に提供するさまざまなサービスも用意されています。
大別すると、「事故対応サービス」と「ロードサービス」の2つです。
前者は、「事故の当事者に寄り添い、解決までをサポートしてくれる」というものです。
事故を起こすと、多くの人は動揺してしまい、正確な判断や行動が取れなくなってしまいます。
そういった際に、以下のような問題解決までのサポートをしてくれるのです。
◆相手方との連絡
◆相手方との示談交渉
◆修理工場の紹介・手配
◆治療費の支払い手続き
◆損害・事故状況の確認
◆事故に関する相談 など
そして後者の方は、トラブル発生時に以下のようなサービスが利用できるようになります。
◆レッカー移動サービス
◆緊急修理・作業サービス
◆宿泊・帰宅費用サービス
◆治療費の支払い手続き など
他にも、「自動車の故障に関する電話相談」や「GPSによる現在地情報の提供」、「ガソリンスタンド案内」などのサービスを提供している保険会社もあります。
サービスの内容は保険会社によって異なりますので、自分に合った保険会社を選択するようにしましょう。
「保険料」について
保険料は、両者で大きく異なります。
まず自賠責保険の保険料は、どの保険会社や代理店で加入したとしても同じ金額となります。
こちらは交通事故の損害調査などを担う「損害保険料率算出機構」によって算出され、国の審議を経て決められます。
目的はあくまで“被害者救済”であって、“営利”ではありません。
そのため、利益や損失を出さないように運営されており、交通事故の発生件数や保険金の支払い状況から自賠責保険の収支を予測し、最適な保険料が算出されることとなるのです。
対して任意保険の方は、保険会社によって金額は大きく異なることとなります。
なぜなら、保険会社の裁量で自由に決めることができるからです。
もちろん補償内容によっても金額は変動しますし、補償を充実させるほどに保険料は高くなります。
そのため任意保険に加入する際は、1社だけでなくいくつかの保険会社に見積もりを依頼して比較してみることをオススメします。
ちなみに、任意保険は一般的に「ノンフリート等級」という方式を採用しています。
契約条件が20等級に分かれており、等級によって保険料が変動するのです。
最初は6等級からスタートし、1年間保険を使用しなければ1等級上がり、等級が上がるたびに保険料が安くなります。
逆に、事故を起こして保険を使用してしまうと、等級が下がって保険料が高くなってしまうのです。
自動車保険の「車両入替」について
概要
「車両入替」というのは、“保険の対象とする車を変更すること”をいいます。
車検が切れるタイミングや車が壊れてしまったときなど、車を買い替える理由は人それぞれにあります。
こういった“車を買い替えた(乗り換えた)”ときに車両入替手続きを行わなくてはいけないのです。
新しい車を購入しても、新しい車に古い車が契約している保険が自動的に適用されることはありません。
そのため、車両入替をしないまま新しい車で事故を起こしてしまうと、古い車で保険に加入していたとしても補償されない可能性があるのです。
これは、「自賠責保険」でも「任意保険」でも同様です。
ただし、自賠責保険の場合は、ディーラーなどの販売店を通じて購入する際は、一緒に手続きをすることが一般的ではあります。
任意保険の場合は、加入している保険会社に連絡をとってみてください。
いつまでに手続きを終えておけばいいの?
上記に記載の通り、車両入替を行っていないと、万が一事故を起こした場合に保証を受けられない可能性があります。
せっかく保険料を払っているのに補償が受けられないのでは意味がありません。
そのため、基本的には“納車日まで”に車両入替の手続きを完了させておくのが好ましいといえます。
手続きに必要なものはなに?
必要なものは保険会社によって変わることもありますが、一般的には以下が必要とされることが多いです。
・ナンバープレート
・初年度登録年月
・型式
・車台番号
・所有者または使用者
②積算距離(オドメータ)の数値
→車両変更前の車の走行距離を算出するため
③銀行口座
→車両入替に伴い、返還保険料が発生した場合に必要となる
④クレジットカード
車両入替に伴い、追加保険料が発生した場合に必要となる
①についてですが、もし納車前で手元に保険証がないという場合は、ディーラーなどの販売店に車両入替の旨を伝え、コピーを用意してもらうといいでしょう。
念を押しておきますが、保険会社によって必要となるものは異なります。
そのため、車両入替の際は必ず保険会社に必要なものを確認するようにしてください。
車両入替で「等級」や「保険料」に影響はあるの?
まず等級に関しては、車両入替による影響を受けることはありません。
ただ、同時に記入被保険者(主に運転する人)を変更する場合は、等級を引き継げるのは“同居の親族まで(配偶者や子どもなど)”となります。
また、自家用普通乗用車から二輪自動車には入替ができないなどの一定の条件もありますので、この点には若干の注意が必要です。
そして保険料についてですが、これは自動車の車種や型式などによって異なることとなります。
そのため、車両入替を行うことによって、保険料が変更になる可能性もあるのです。
一般的には、保険料が高くなった場合は保険会社に差額を支払い、保険料が安くなった場合は差額が変換されます。
ちなみに、支払い方法は保険会社によって異なります(クレジットカード・払込票・口座振込など)。
この点についても、契約している保険会社に確認をとってみてください。
自動車保険って「中断」はできるの?
中断を積極的に活用しよう
車を廃車したり、転勤や留学など何らかの理由で車が不要になった場合、保険の解約を検討することもあるかと思います。
しかし、このときに注意しなければいけないことがあります。
それは、「一度解約をして再度車を購入するとなると、任意保険の等級は元に戻ってしまう」ということです。
将来的に、また車を運転する機会はあるかもしれません。
せっかく無事故を続けて高い等級を獲得したのに、それがリセットされてしまうのはもったいないと感じる人も多いのではないでしょうか。
それを防ぐための方法は、保険を“解約”するのではなく、“中断”するという方法を取ると良いです。
中断であれば、再契約時に現在の等級を継続することができます。
中断できる期間は最長で「10年間」であり、本人が再度自動車保険に入る場合以外にも、家族に引き継ぐことも可能です。
もちろん、中断したあと結局車に乗らなかったとしても、特にペナルティはありません。
積極的に活用してみてください。
中断するための「条件」について
まず、自動車保険を中断するには、保険会社に「中断証明書」を発行してもらう必要があります。
証明書を発行してもらうためには、以下が必要となります。
◆「車両の廃車や譲渡に関する証明書」
◆「自動車保険証券の写し」
ただし、条件を満たしていなければ、中断証明書を持っていたとしても利用できない場合もあります。
具体的な条件としては、以下が挙げられます。
●新規に取得した車の納車から1年以内の加入であること
●中断前後で車の所有者、被保険者が同一であること
また、保険会社によっては他にも条件が付く場合があります。
例えば、等級。
そもそもですが、上述でも記載した通り、等級は6等級からスタートします。
そのため、6等級以下の場合は中断が出来ない場合が多い……というよりも、引き継ぐ意味がないのです。
自信が置かれている状況や保険会社によっても取り扱いが異なる場合がありますので、気になる方は事前に保険会社に問い合わせを行っておくと安心かと思います。
まとめ
以上が、「自動車保険」に関するご紹介となります。
結論として「自賠責保険だけでは補償が足りないことが多く、十分な補償を受けるためには任意保険にも加入しておいた方が安心である」です。
交通事故は、いつ発生するか分かりません。
どれだけ安全運転を徹底しようと、どれだけ安全装置が進化しようと、“絶対に事故は起きない”と断言することはできないのです。
万が一のためにも、任意保険にも加入をしておいた方が得策だと思います。
そして、保険会社は数多く存在し、会社によって特徴や保険料は異なります。
加入を検討する際は、1社だけでなく複数の会社に見積もりを依頼し、自分に合った保険会社を選択するようにしてください。
また、車を買い替える(乗り換える)際は、「車両入替」の手続きを行うことも忘れないでください。
保険料を払っているのに、万が一のときに保証が受けられないでは何の意味もありません。
交通事故は起こさないに越したことはありません。
しかし、何が起こるか分からない……万が一の可能性も在りますので、その点を考慮して行動に移してみてください。