車を長く安全に走らせるためには、点検が必須です。
整備不良のままで走っていると、ドライバーや同乗者だけでなく、関係ない周囲の人たちをも巻き込んだ事故に発展する可能性が高まってしまうからです。
この“車の点検”には、いくつかの種類があります。
一つは、車の所有者が目視などにより点検を行う「日常点検」。
もう一つが今回ご紹介する、法律で定められた「定期点検」というものです。
定期点検とは具体的にどういうものなのか。
法律で定められている=受けないと罰則や罰金はあるのか。
車検との違いはなんなのか。
この記事では、こういった点を詳しく解説していきたいと思います。
「法定点検」とはなにか?
これは、「定期点検」とも呼ばれます。
意味は、「自動車の故障を未然に防ぎ、その性能維持を図るために行う点検」です。
“定期”と呼称している通り一定期間ごとに行うものであり、“法定”と呼称している通り点検を受けることが(道路運送車両法により)義務付けられています。
ちなみに、道路運送車両法の第47条により、ドライバーは「法定点検」だけでなく、日頃からの「定期点検」も義務付けられています。
法定点検は(基本的に)業者に依頼をしますが、日常点検は車の所有者自身が状況に応じて目視で点検を行うこととなります。
例えば、「ブレーキ液の量」「エンジンオイルの量」「タイヤの溝の深さ」などです。
点検の頻度は、走行距離や運転時の状態などから判断し、実施していきます。
特に、長距離走行前や大雨・雪などの悪天候時にはしっかりとチェックを行う必要があります。
法定点検の種類(期間)について
法定点検を行う期間(種類)は、車によって異なります。
例えば、自家用車の場合は、1年ごとに行う「12ヶ月点検」と2年ごとに行う「24ヶ月点検」があります。
(点検内容はそれぞれで異なる)
他にも「3ヶ月点検」や「6ヶ月点検」などもありますが、これらは事業用自動車(バス・タクシー・レンタカーなど)や貨物自動車などで適用されるものであり、自家用車では必要ありません。
日本の旅客交通や物流は、バスやトラックなどのさまざまな車両によって支えられています。
自家用車に比べると事業用車両は走行距離が非常に長く、車体も大きいことから事故が起こると被害が大きくなる傾向があります。
そのため、一般の乗用車に比べ点検のサイクルが短期間に設定されているのです。
「車検」とはなにが違うの?
「法定点検」と「車検」、両者は一見すると似た印象を受けるかもしれませんが、実際は内容と目的が大きく異なることとなります。
まず「法定点検」ですが、これを行う目的は“車が故障なく快適に走れるかどうかを確認するためのもの”です。
対して「車検」は、“車の安全面や公害防止面が保安基準に適合しているかどうかを検査するためのもの”となります。
厳密にいうと、車検は“点検”ではなく、次の車検までの安全性を保障するものではないのです。
だからこそ、「予防整備(法定点検)」と「保安基準への合格(車検)」の両方を実施することが必要となるのです。
尚、「車検」については別の記事で詳細をご紹介しておりますので、以下にリンクを貼っておきたいと思います。
法定点検を行わないと「罰則」や「罰金」はあるの?
上述でも記載した通り、法定点検は道路運送車両法により規定されている義務です。
しかし、受けなかった場合の罰則規定はありません。
とはいえ、“車の安全を守る=事故やトラブルを未然に防ぐ”という重要な役割があるため、罰則規定がないなら……と考えるのは大きな間違いです。
そもそも“車の所有者が行う義務”であるため、法定点検は必ず受けるようにしましょう。
ちなみに、乗用車や軽自動車を利用している人で、義務化されている法定点検のことをキチンと認識してできていない人もいます。
その理由は、「車検とセットで24ヶ月点検を受ける」ことが一般的だからです。
ただ、近年は「ユーザー車検」を行う人も増えており、ユーザ車検を行う場合は、別途法定点検を業者に依頼しなければいけません。
この点には十分注意しておきましょう。
「ユーザー車検」についても、別の記事でご紹介しておりますので、以下を参照ください。
尚、上記でご紹介したのは、自家用車や軽自動車などの場合です。
バスやトラックなどの事業用車両に対しては、法定点検を行わないと罰金や最悪の場合「運行停止命令」となることもあります。
この理由は、「不特定多数の乗客を乗せたり、たくさんの荷物を積んで走ったりする(車に負担がかかりやすい)」こと。
そして、「自家用車に比べて走行距離が長く・車体が大きい」こと。
総じて、「事故が起こると被害も大きくなる可能性が高い」からです。
法定点検を受ける「メリット」とは?
「事故を未然に防ぎ、安全に車を利用できる」
これもメリットの一つではありますが、それ以外にも法定点検を受けるメリットが3つあります。
一つは、「メーカー保証が受けられる」という点です(ユーザーの重大な過失は除く)。
12ヶ月法定点検を受けている場合、点検項目に該当する箇所の不具合や故障が起きた場合はメーカー保証の対象となり、保証期間内であれば保証を受けることができます。
もう一つは、「整備不良等に起因する事故が起こった場合、ドライバーの法的責任が軽くなる可能性が高い」ということ。
最後は、「売却時に査定評価が上がりやすい」という点です。
定期点検の内容が「点検整備記録簿」に記載されるため、過去の点検実施の履歴が把握できるようになり、安心感が高まるのです。
将来的に売却を検討している人は、「点検整備記録簿」を大切に保管しておくといいでしょう。
発生する費用について
法定点検を受ける際の費用ですが、所有している車によって異なります。
例えばですが、12ヶ月点検をディーラーに依頼した際の費用の目安は、以下となります。
◆1,000cc~1,500cc:10,000円~16,000円前後
◆1,800cc~2,000cc:10,000円~17,000円前後
◆2,000cc~3,000cc:11,000円~20,000円前後
◆3,000cc以上:12,000円~26,000円前後
ちなみに、新車をディーラーで購入した場合、特典が受けられるケースもあります。
また、フランチャイズ系業者では、よりリーズナブルに点検を受けられる可能性もあります。
値段は依頼する業者によっても変動しますので、複数の業者から情報を集め、自分に合ったところを選択するようにしましょう。
どこで受けられるの?
法定点検が受けられる場所としては、以下が挙げられます。
◆カー用品店
◆ディーラー
◆整備工場(指定整備工場・認証整備工場・民間整備工場)
どれを利用するかは、もちろん人それぞれで変わります。
ディーラーから新車を購入した際に割引特典が付くこともありますので、その場合は購入したディーラーで受けるのも良いでしょう。
また、「料金を重視したい」という方は、フランチャイズの車検業者も視野にいれると選択肢が広がると思います。
尚、特に整備工場に多いのですが、規模は企業レベルから個人レベルまでさまざまに存在し、業者によって費用も技術レベルも異なることとなります。
どれにおいても言える重要ポイントは、「信頼できる業者に依頼すること」です。
いろんな業者から情報を仕入れ、自分が信頼・納得できる業者を選定できるように工夫してみてください。
法定点検って、自分でもできるの?
「法定点検って業者に依頼ではなく、自分で行うことはできないの?」と考える人もいるかもしれません。
結論としては、「自分で行うこともできるが、手間が増えるため業者に依頼した方が手っ取り早い」です。
国土交通省では、「自動車の点検及び整備に関する手引」というものを公表しています。
これは、日常点検と合わせて定期点検の内容を記したものとなります。
12ヶ月点検は整備工場でなくてもできる項目が多いといわれており、こちらであれば上記の手引を利用して自力で行うこともできるかもしれません。
ただし、24ヶ月点検は12ヶ月点検よりも項目が増える+専門性が求められることとなるため、少なくとも素人が行うには無理があります。
加えて、自分で法定点検を行った場合、注意すべき点が2つあります。
一つは、「点検整備済のシール・ステッカーを張ることができない」という点。
もう一つが、「自分で点検整備記録簿に記入しなければいけない」という点です。
後者はあくまで任意ではありますが、点検整備記録簿は車の売却の際に“査定評価が上がりやすい”というメリットがあります。
将来的に車を売却する可能性がある人は、自身で行った点検内容を記入しておくようにしましょう。
なんにせよ言えることは、「自力で法定点検を行うのは手間がかかる」ということです。
専門性が求められますし専門工具も必要となりますので、よほど車の点検・整備に関する知識や技術がある人でもなければ、自力で行うことはあまりオススメできません。
「車を長く安全に使用するために行う点検である」という点も含め、信頼のおけるプロの専門家に任せるのが得策かと思います。
まとめ
法定点検を行うことは義務であり、車を長く安全に使用するために行う重要な点検となります。
罰則や罰金が科されることはありませんが、安全かつ快適なカーライフを送るために必要なことなので、適切な時期に実施できるようきちんとスケジュールを把握して行動に移してみてください。
尚、上述の通り自力で定期点検を行うことも可能ではありますが、基本的には業者に依頼した方が安心かと思います。
「点検したは良いものの、後から不良が発覚して結局整備費用がかかってしまった」ということも十分にあり得ます。
自分で点検を行う場合は、しっかりと情報収集をし、正しい知識で点検箇所をチェックしていくこと。
少しでも不安を感じるようであれば、いろんな業者から情報収集を行い・選定し、安心できるところに点検をお願いしてみてください。