「自動車の免許を取得したい!」となったとき、まず真っ先に思い浮かべるのはなんでしょうか。
それは、「教習所に通う」だと思います。
しかし、自動車免許の取得方法はそれだけではありません。
教習所ではなく、運転試験場や運転免許センターに直接出向き、その場で学科・技能試験を受ける「一発試験」というものも存在するのです。
ただ、知識や技術がない状態でいきなり一発試験に挑んでも不合格となるのは目に見えており、実際一発合格の合格率は“10%以下(※)”とも言われています。
(※受験する免許により、合格率は若干変動する)
非常に合格率が低いことで有名な「一発試験」。
なぜ、このような試験が設けられているのでしょうか?
今回は、この点について詳しくご紹介していきたいと思います。
「一発試験」とはなにか?
冒頭でも記載した通り、「自動車免許を取得しよう!」となった場合にまず頭をよぎるのが、公安委員会が指定する「自動車教習所」に入所することだと思います。
その理由は、“運転に関する知識や技術を学ぶため”であり、一般的にはこの方法で免許を取得する人が多いと思います。
しかし、世の中には「一発試験」というものが存在します。
これは、“自動車教習所に通わずに、「運転試験場」もしくは「運転免許センター」へ行って、学科と実技試験を受験すること”を指しています。
※自動車教習所に通い卒業後に受験する場合は、実技試験は免除されます※
ただ、一発試験の合格難度はかなり高く、その合格率は“約10%”と言われています。
もちろん、自動車教習所に通っても一発試験であっても、交付を受ける免許証はまったく同じです。
合格率が恐ろしく低いのに、「なぜ一発試験はなくならない」のでしょうか?
そして、「なぜ一発試験に臨む人がいる」のでしょうか?
どういう人が「一発試験」を受けるの?
上項でもお伝えした通り、一発試験を受ける場合は「学科」と「実技試験」を受験しなければなりません。
学科については、市販のテキストを購入し勉強することでクリアはできるかもしれません。
しかし、実技の練習となるとそう簡単な話ではなく、免許のない人が車の運転をすることはできません。
つまり、実技を練習するためには「教習所に通う」ことがもっとも手っ取り早いのです。
では、なぜ教習所に通わずに一発試験に臨む人がいるのでしょうか?
この項目にて、“一発試験を利用する人の特徴”をご紹介したいと思います。
特徴その1.運転および車の操作に慣れている人
上記の通り、運転免許を所持していない人が車を運転することは基本的にタブーです。
しかし、以下の条件が揃っていれば、運転(実技練習)をすることも可能ではあります。
◆練習ができる「車両」および「私有地」がある
また、“AT免許”ではなく“MT免許”を取得する場合、すでに別の免許でマニュアル操作に慣れている場合もあります(バイク・普通自動車などでMT操作に慣れている、など)。
そういう人も、クラッチ・ブレーキ・アクセルの仕組みが理解できているため、「一発試験に臨もう」と考える人がいます。
特徴その2.「非公認自動車学校」を利用している人
基本的に、教習所=公安委員会がしている「公認自動車教習所」に通う人が多いと思います。
しかし、「非公認自動車学校」という“運転に精通した教官のもとで、技能教習を受けることができる学校”というものも存在します。
“非公認”だからといって問題があるわけではありません。
時間単位で利用することができ、運転の仕方やポイントを学ぶことができる……仕事などでなかなか教習所に通うことができない多忙な人が利用することができる学校なのです。
これを利用することで、費用と時間を抑えつつ、確実に運転に関する技術を学ぶことができるようになります。
特徴その3.過去に「運転歴」がある人
一発試験を受ける人の理由としてもっとも多いのが、この「過去に運転歴がある人」です。
◆免許取消
◆更新のし忘れ
◆免許切替
などの理由で“免許を再度取得したい”と考える人が多く、実際に一発試験では80%以上の人が、上記理由で受験に臨んでいます。
特徴その4.「時間がある」および「チャレンジ精神がある」人
数は比較的少ないものの、「時間およびチャレンジ精神がある人」も一定数存在します。
というのも、教習所に通っていた人であっても、必ずしも“一発合格する”とは限らないのです。
技能試験は、“運転の慣れ”が重要です。
「何度も受験し、少しずつ慣れていく」ことも大切ではあります。
一発試験をうける「条件」ってあるの?
結論から言うと、“受験できる資格および回数に制限はない”です。
ただし、取得したいと考える運転免許によって、“一定の条件”を満たす必要はあります。
例えば、普通自動車免許の場合、以下3つの条件をクリアしていなくてはいけません。
◆視力:両眼で0.7以上かつ片目で0.3以上(※)
◆免許の取り消しおよび停止処分中ではない人
(※)一眼の視力が0.3に満たないもしくは一眼が見えない場合、他眼の視野が左右150度以上で視力が0.7以上必要となる
(※)眼鏡やコンタクトレンズの使用は可
他の運転免許であっても同様ですが、まずは「適性検査」を受けなくてはいけません。
(条件は取得したいと考える免許によって異なる)
その適性検査に合格した後、「仮免許学科試験」および「仮免許技能試験」へと進むことができるのです。
一発試験の「メリット」「デメリット」とは?
この記事の最後に、一発試験の「メリット」「デメリット」について、ご紹介をしておきたいと思います。
ただし、仮免許・本免許の実技試験の合格までの回数には個人差があります。
そのため、あくまで参考程度にとどめておいてください。
「メリット」について
最大のメリットは、「費用が抑えられる」ことと「時間を短縮できる」という点でしょう。
まず教習所に通う際の費用相場は、“300,000円~350,000円”と言われています。
(通う教習所や地域によって、多少前後する)
対して一発試験の場合は、仮免許からでも“計30,000円以下”となっており、掛かる費用は教習所の1/10程度で済むのです。
もし仮に、一発試験に文字通り”一発”で合格することができれば、30万円以上を支払って教習所に通う必要がありません。
そして、「免許取得までの時間も大幅に短種が可能」です。
自動車教習所で通常受けるのは、「学科26時間」+「技能34時間」であり、免許取得まで1カ月以上は掛かることとなります。
(合宿を利用しても、約2週間はかかる)
しかし、一発試験の場合は上記時間が不要であり、大幅に時間を短縮することができます。
「デメリット」について
最大の難点は、「技能試験の難易度が高い」という点でしょう。
冒頭でもお伝えした通り、一発試験の合格率は“約10%ほど”と言われています。
その理由が「技能試験の判定の厳しさ」にあります。
教習所や合宿で練習する場合、教官からフィードバックをもらいながら、運転について学んでいくこととなります。
しかし一発試験はそれ(フィードバック)がないため、運転の技術・知識をしっかり持っていないと、合格することが非常に困難なのです。
そしてもう一つ。
一発試験の場合、試験管を務めるのは「警察官」であり、警察官の同乗のもとで試験を行うこととなります。
これも、合格難度を高めている要因なのです。
ちなみに一発試験の受験は、祝日・休日・年末を除いた平日のみ(月曜日~金曜日)となります。
また、2回目以降の技能試験は“完全予約”となるのが一般的なので、繁忙期や年末年始などは予約が取りづらくなる可能性があります。
この点にも注意しておきましょう。
結論:運転歴のある人の「救済措置」である
以上が、「運転免許の一発試験」に関する情報となります。
確かに、免許取得までの費用や日数を考えれば、一発試験は非常に魅力のある試験であるといえます。
しかし、運転技術や知識が不十分な人ほど、一発合格は難易度が高いものとなります。
また、過去に運転歴がある人が受験したとしても試験管を務めるのは「警察官」のため、より判定基準が厳しくなり、1回で合格するのは至難の業です。
このことから、「一発試験に”1回”で合格するのは、基本的には不可能である」と考えておいてもいいかと思います。
不合格を積み重ねてしまうと、受験費用が積み重なって、結局教習所に通うのと変わらない費用が発生してしまう可能性もあります。
特に地方の場合は、一発試験の受験場所も限られてくるため、人によっては交通費も余計に掛かってしまう恐れもあります。
基本的には、時間+費用が掛かったとしても、まずは教習所に通うことをオススメします。
一発試験は、あくまで過去に運転歴のある人の「救済措置」であると考えておきましょう。
(それでも難易度は高い)
実際、一発試験を受ける80%以上の人が、何らかの理由で“免許を失っている人”なのです。
つまり、受験者の大半が「ある程度、運転に関する技術や知識を持っている人たち」ということなのです。
そういう人たちですら難度が高い免許取得を、知識や経験が浅い初心者が易々と取得できることはありません。
一応、受験者の中には初心者が一定数いるのも事実ではありますが、ほとんどの人が不合格となっています。
「急がば回れ」
特に初めて免許を取得しようと考えている人は、多少時間や費用が掛かっても、教習所に通う方法がベストだと考えてください。
仮に初心者が一発試験に合格したとしても、その後に公道で交通事故を引き起こしてしまっては何の意味もありません。
一発試験は、運転の“試験の場”であり、“学ぶ場”ではないことをしっかりと理解しておきましょう。