「ウインチ」は、重量が大きいものを移動する際に重宝する代物です。
これは、一般家庭で使用できるタイプから、建設業・林業・船舶・車などに使用する大型のタイプまで、実にさまざまな種類が存在します。
この「ウインチ」とは、どういったものなのでしょうか?
また取り扱う際には、特別な資格などが必要となるのでしょうか?
今回は、「ウインチ」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「ウインチ」ってなに?
概要
これは、「歯車装置などでドラムにワイヤーを巻き付け、重量物を移動させる機械」のことを指しています。
街中でもっともよく見かけるのは、「建築現場での重量物の吊り上げ・吊り下げ」や「けん引車による事故車・廃車の移動」などではないでしょうか。
これを使用することで、重量物をさまざまな方向に移動させることができるのです。
ちなみに、ワイヤーなどを巻き上げて荷物を動かすことから、これは「巻上げ機」と呼ばれることもあります。
そしてもう一つ。
このウインチは、“原動機”によって、以下のように分類されます。
◆手動式
◆エンジン式
◆油圧式
◆空圧式
以下で、それぞれの特徴を捕捉していきたいと思います。
「電動式」
一般的には、「ウインチ=電動式」を指すことが多いです。
モーターと減速機を組み合わせたものであり、起動トルクが大きく、重要のあるものも簡単に移動することができます。
ちなみに、インバーターモーターなどを使用すると、巻き取りの速度調整も可能となります。
家庭用~業務用までさまざまな用途で使用されており、荷重も“100kg~6,000kg”と非常に幅が広いのが特徴です。
「手動式」
その名の通り、“手動”で動かすウインチです。
ただし、大まかに以下の2つに分類されます。
◆「ラチェット式」:ハンドルを引いたり戻したりして動かすタイプ
他に比べて「小型」「軽量」であり、価格も比較的リーズナブルなことが特徴に挙げられます。
家庭用として利用されることが多いですが、業務用でも“狭い場所”で使用されることがあります。
「エンジン式」
こちらもその名の通り、「エンジン」を動力として動かすウインチです。
「クランクシャフト」を回転させることで動力を生み出すのが特徴であり、電源のない場所でも作業が可能です。
ただし、エンジン式は価格が高く(数十万円する)、基本的には業務用として使用されることがほとんどです。
例えば、伐採した木材を移動させる「林業」などで重宝しています。
「油圧式」
これは、「油圧モーター」を原動機としたウインチです。
速度調整が可能であり、特に船舶(アンカー・巻き網・船の引き上げ)などで重宝しています。
また、こちらもエンジン式と同様に高価であり、一般的には業務用として使用されることがほとんどです。
「空圧式」
これは、「エアモーター」を原動機として使用されるものです。
主に、「防爆性」が求められる場所で使用されます。
(トンネルなどの坑内・化学工場・電力設備など)
こちらもやはり値段が高価であり、エンジン式や油圧式と同じく業務用として使用されることがほとんどです。
「ウインチ」と「ホイスト」の違いってなに?
実は、ウインチと同様に「ワイヤーの巻き上げで重量物を移動できる機械」は、他にも存在します。
それが「ホイスト」と呼ばれるものです。
どちらも「巻上げ機」と呼ばれ+原動機も同じものが使用されていることから、両者は混同されやすく注意が必要となります。
この2つの違いは、以下にあります。
◆「ホイスト」:荷物の上げ下ろしのみが可能
また、ウインチは床や壁に固定しますが、ホイストは梁などに吊り下げて使用します。
加えてもう一つ。
ホイストは「クレーン」と混同されることもあります。
クレーンは「荷物を吊り上げ、かつ水平に運搬することを目的」とした機械です。
上記でも記載した通り、ホイストは「荷物の吊り上げ・吊り下げ」しかできません。
どれも似ているようで微妙にその内容が異なっていますので、注意しておきましょう。
使用の際に、資格は必要なの?
「資格の有無」について
結論から言うと、ウインチを業務上で使用するためには、必須となる資格(教習)があります。
それが、「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」です。
なぜ特別教育の受講が必要なのかというと、ウインチによる業務が労働安全衛生法における「危険または有害な業務」に指定されているためです。
この作業には負傷や死亡事故などの危険が伴うため、安全または衛生のための教育を受ける必要があり、ウインチを用いた業務がこれに該当するというわけです。
これは、「サイズ」「動力の大小」「吊り上げられる荷重の重さ」に関わらず、業務にて使用する場合は必ず受講しなければいけません。
余談ですが、上項でご紹介した「ホイスト」の場合は、「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」の受講は必要ありません。
なぜかというと、電気ホイスト、エアーホイストなどは、特別教育が必要な巻上げ機に該当しないからです。
ただし、「ホイスト式天井クレーン」の場合は、荷重により特別教育の受講が必要になるのでご注意ください。
「受講内容」について
この特別教育では、以下の内容を受講することとなります。
① 巻上げ機に関する知識(3時間)
・巻上げ機の原動機、ブレーキ、クラッチ、巻胴、逆転防止装置、動力伝達装置、電気装置、信号装置、連結器材、安全装置、各種計器及び巻上用ワイヤロープの構造及び取扱いの方法、巻上げ機の据付方法
② 巻上げ機の運転に必要な一般的事項に関する知識(2時間)
・合図方法
・荷掛方法
・連結方法
・点検方法
③ 関係法令(1時間)
・法、令及び安衛則中の関係条項
【実技】
④ 巻上げ機の運転(3時間)
・荷の巻上げ及び巻卸し
⑤ 荷掛け及び合図(1時間)
・荷の種類に応じた荷掛け手
・小旗等を用いて行う合図
ちなみに、この特別教習の受講については、特別な受講資格はありません(学歴や実務経験など)。
満18歳以上であれば、誰でも受講することができます。
また、以下の講習・資格をお持ちの場合は、講習の科目が免除される場合もあります。
◆「小型移動式クレーン」
◆「床上操作式クレーンなどの技能講習」
◆「移動式クレーン運転士免許」
上記の講習を受けている、資格を所持しているという人は、必ず事前に確認をとっておくことをオススメします。
「受講方法」について
次に受講する方法についてですが、これは以下2通りの方法があります。
◆通信講座で受講する
それぞれ、詳細をご紹介していきます。
「講習会で受講する」
この特別教育は、安全教育を実施する“各種協会・機械車両の民間教習所”などで実施されています。
ただし、会場によって、“学科・実技の両方を実施している”ところと、“学科のみを実施している”ところがあるため、会場選びは事前に確認をしておいた方が良いかと思います。
ちなみに、学科のみを受講した場合は、実技は各事業場で実施、「実技実施報告書」を提出すれば講習修了となる場合があります。
これは、事前に勤務先に「実技を実施できるかどうか」を確認しておくといいでしょう。
最後に。
講習会への参加費用は、“10,000円~15,000円ほど”となります。
「通信講座で受講する」
この特別教育は、学科のみ通信講座でも受けることができます。
この場合は、“通信講座で学科を学び、実技は職場で実施する”という流れになります。
職場で「実技実施責任者」を選任したうえで、業務内容に沿った実習を行うこととなります。
上記でも記載した通り、事前に勤務先に「実技を実施できるかどうか」を確認しておきましょう。
尚、通信講座では実技マニュアルも用意しているケースが多いため、職場の実習であってもスムーズに進めることができるはずです。
「講習会」と「通信講座」どちらで講習をうけるべき?
これは、人や職場によりけりとなります。
講習会に参加するメリットは、上手くいけば「1回の講習で修了することができる」という点が挙げられます。
そのため、「最短で特別教育を修了したい」という場合、講習会に参加をした方がいいかと思います。
ただ、中には以下のような方もいると思います。
◆最寄りの会場が遠い
◆自分のペースで学習したい
そういう人は、「通信講座」の方がメリットは大きいかと思います。
通信講座のメリットは、“時間・場所を問わずに勉強できる”という点にあります。
学科教習に関しては、自宅・通勤中・休憩時間・休みの日など、時間の合間を見つけて自分のペースで勉強することが可能です。
ちなみに、eラーニングにより学習状況も一目で確認できるため、受講漏れを防ぐことができますのでご安心ください。
どちらを選ぶかは人によりけりなので、ぜひ自分に合った方法で、特別教育を受講してみてください。
まとめ
以上が、「ウインチ」および「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」についてのご紹介となります。
ウインチは、“重量物を簡単に移動させられる”というメリットがあり、業種によっては業務で頻繁に利用されることでしょう。
しかし、使い方を誤ると、負傷や死亡事故などの重大な事故につながる恐れもあるため、使用には十分な注意が必要です。
また、業務上で扱う場合は、必ず「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」を受講するようにしてください。
学科に関しては、「講習会」だけでなく「通信講座」で受講することも可能なので、忙しい人でも自分のペースで勉強をすることができるはずです。
自分に合ったやり方で、特別教育を受講してみてください。
その上で、安全を意識してウインチを使用していくようにしましょう。