移動式クレーン車を扱う仕事は、建設や物流業界を支える上で非常に重要な仕事の一つです。
前回の記事にて、この移動式クレーンの運転に必要な教育・資格・免許のご紹介をさせていただきました。
今回は、その中でも国家資格に分類される「移動式クレーン運転士免許」についてのご紹介となります。
◆合格率はどのくらいなのか?
◆資格の種類はどういったものがあるのか?
など、移動式クレーン運転士免許に関する情報を詳しく解説していきたいと思います。
「移動式クレーン運転士免許」とは?
この免許は、「労働安全衛生法」に定められた国家資格のことです。
この資格の最大の特徴は、「免許を取得すれば、荷重に関係なくすべての移動式クレーンを運転できる」という点にあります。
移動式クレーンは建設現場で多様されており、特に建設業界において需要がある資格といえます。
ただし、この資格はあくまで「クレーンを操縦する技術が身につく」という点には注意が必要です。
例えば、公道(一般道路)を走る場合は、別途「運転免許」が必要となります。
(免許の種類は、操縦する移動式クレーン車の種類によって異なる)
また、クレーンの先に付いている「フック」に荷物を掛け外しする場合は、別途「玉掛け技能講習」という教習を受けなくてはいけません。
将来性について
専門職である移動式クレーン運転士は、将来性のある職種といえるでしょう。
経験が重視されることから、定年を迎えても働き続けることができます。
その際は、年齢や自身の体力に応じて、操作するクレーンの種類やサイズを変更すれば良いので、比較的柔軟な働き方が可能です。
また、経験を活かして、安全担当者や教育担当者として企業に貢献する活動方法も選択できるでしょう。
さらに、この職種は「機械による全自動化が難しい」ともいえます。
“重い”もしくは”大きい”荷重を操作するため、下手をすれば事故や怪我の原因にもなってしまうのです。
このことから、“機械のサポート”を受けることはあっても、“機械による完全な自動化”は直近では実現は難しいとされています。
加えて、もう一つ。
建設業界は、人材確保が難しいといわれている業界の一つであり、特に国家資格を必要とする「移動式クレーン運転士」は需要に供給が追い付かない状況が続いています。
このことから、資格を取得すれば安定した需要があり、将来的に長く活躍できる業務となり得るかと思います。
「試験内容」について
はじめに
まず、本免許を取得するためには、「学科」と「実技」の試験に合格しなければいけません。
試験に合格することで、各都道府県労働局長から免許が与えられることとなります。
この試験は、全国7ブロック(北海道・宮城県・千葉県・愛知県・兵庫県・広島県・福岡県)にある、安全衛生技術センターで、「年6回(2ヶ月に1回ずつ)」行われています。
受験資格についてですが、これは特に定められておらず、誰でも・何歳でも受験することが可能です。
ただし、18歳未満で合格した場合は、満18歳になるまでは免許の交付は見送られることとなります。
また、クレーンやデリックなどの「関連資格保有者」や「小型移動式クレーン運転技能講習修了者」などは、共通する科目が免除されます。
◆クレーン・デリック、旧クレーン、旧デリック、揚貨装置運転士免許を持っている場合は、学科の3と実技の2が免除
◆移動式クレーン運転実技教習を修了し、その日から1年以内の場合、実技が免除
◆鉱山で吊り上げ荷重が5トン以上の移動式クレーンを使用した業務の経験が1ヶ月以上ある場合、実技が免除
◆移動式クレーンの学科試験に合格し、その日から1年以内の場合、学科が免除 など
次に、学科と実技の内容について、捕捉を加えていきましょう。
「学科」について
試験は、“5肢択一方式(※)”で実施されることとなります。
(※5肢択一方式:5個の選択肢の中から回答を選ぶ問題のこと)
試験科目は、以下の4つです。
◆「原動機及び電気に関する知識」
◆「移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識」
◆「関係法令」
※出題は、各科目10問・全科目で40問程度出題される
合格するには、各科目で“40%”を取った上で、“計60%以上”が必要となります。
試験範囲などは、過去問を参考にして把握していきます。
最後に「受験料」ですが、学科試験は“6,800円”となります。
「実技」について
試験科目は、以下の2点です。
◆「移動式クレーンの運転のための合図」:手や小旗などを使用し、荷のつり上げと運搬、おろす動作など
尚、試験は「トラッククレーン」「ホイールクレーン」「クローラクレーン」の中から、“吊り上げ荷重5t以上”のものを使用します。
合格基準は、“減点の合計が40点以下”です。
そして「受験料」ですが、実技試験は“11,000円”となります。
「合格率」と「難易度」について
まず「合格率」ですが、直近は以下のようになっています。
◆令和3年度:合格率64.2%(受験者数3,768人、合格者数2,418人)
◆令和2年度:合格率64.7%(受験者数5,359人、合格者数3,467人)
◆令和1年度:合格率65.3%(受験者数5,522人、合格者数3,604人)
◆平成30年度:合格率63.1%(受験者数5,515人、合格者数3,481人)
≪実技≫
◆令和3年度:合格率64.4%(受験者数379人、合格者数244人)
◆令和2年度:合格率61.5%(受験者数483人、合格者数297人)
◆令和1年度:合格率63.4%(受験者数636人、合格者数403人)
◆平成30年度:合格率60.0%(受験者数498人、合格者数299人)
概ね、“60%~65%”で推移しています。
上記の数字を見る限り、比較的試験の難易度は難しくはないといえます。
学科試験も実技試験も過去問が公開されているので、試験対策をしっかり行えば合格はしやすいと思います。
ただし、人によっては「移動式クレーンの操作練習の機会が少ない」という人もいるかもしれません。
そういう人の場合、実技試験は若干難易度が上がるかもしれません。
事項では、「免許を取得するための方法」について、ご紹介をしていきます。
免許を取得するために、どうやって勉強すればいい?
方法は”3つ”ある
実は、「自動車教習所」などと同じように、移動式クレーン運転士免許について学ぶための「指定教習機関」というものが存在します。
もちろん、「学科」についても「実技」についても学ぶことが可能です。
これは、クレーンや建設機械などを専門に教える教習機関もありますし、普通の自動車教習所に併設されている場合もあります。
また、この免許を取得しようと考えている人の中には、すでに就業中の人も多いです。
そのため、夜間や短期集中で受けられる「合宿教習」も用意されています。
上記も含め、免許取得の方法は“3つ”存在します。
②「学科は独学、実技のみを教習所で習う」
③「学科・実技ともに独学で学ぶ」
順に補足を加えていきましょう。
その1.「教習所で学ぶ」
一つ目の方法は、上記で記載した「教習所で学ぶ」という方法です。
一般の自動車教習所と同じように、学科・実技の両方を学ぶことができるため、「クレーン車を触ったことがない」という未経験者でも免許取得がしやすいのが特徴です。
ちなみに、教習所内で行われる実技の修了試験に合格すると、試験所での実技試験は免除されます。
試験所では、「学科試験さえ合格すれば良い」ということになるのです。
また、教習所によっては試験所への受験手続もやってくれます。
その2.「学科は独学、実技のみを教習所で習う」
これは、まず「学科試験を独学で勉強し、試験に合格する。その後、実技だけを指定教習機関で習う」という方法になります。
学科試験に関しては、過去問も公開されていますし、参考書や試験対策本なども販売されているので、独学で合格することも不可能ではありません。
しかし、上項でも少しお伝えした通り、実技の練習は「実際の移動式クレーン車に乗れる環境がないと、練習もできない」こととなり、合格難度が高まってしまいます。
そのため、環境が整っていない人は、「実技練習だけを指定教習機関で習う」のです。
教習所で習うのが実技だけになることから、教習費用も割安となります。
また、教習機関内の修了試験に合格すれば免許取得となるため、再度試験所に赴く必要もありません。
その3.「学科・実技ともに独学で学ぶ」
この方法は、「学科・実技ともに独学で学び、一発合格を目指す」というものです。
上記で記載した通り、学科試験に関しては、独学で学ぶことも十分可能です。
そして実技は、「練習できる環境」もしくは「小型移動式クレーンなどの実務経験がある人」ならば、指定教習機関に通わなくても独学で学ぶことも可能ではあるのです。
仮に一発合格できた場合、出費は受験料のみで済むので、費用負担はもっとも軽くはなります。
ただし、自動車と同じように、「移動式クレーンの実技試験に一発同格するのは非常に難しい」とも言われています。
自信がある人ならばともかく、そうでない場合は不合格が続き、結果として“出費がかさむ”という可能性もあるため、注意は必要かと思います。
まとめ
以上が、「移動式クレーン運転士免許」に関するご紹介となります。
さまざまな移動式クレーン車を扱うことができるという点で、この国家資格を取得すれば、業務の幅は非常に広がることとなります。
将来性もありますので、関心がある方は知見を広げて、資格取得に向けてその一歩を踏み出していただければと思います。
ただし、合格率は65%弱あり比較的難易度の低い国家資格ではあるものの、残り4割は試験に不合格になっているのも事実です。
勉強もせず・何の対策も打たずに合格できるほど簡単な資格ではありませんので、この点には十分にご注意いただければと思います。
特に、「実技試験」。
人によっては「練習できる環境がない」という場合もあるでしょうから、そういう人は費用がかかってでも指定教習機関を利用することをオススメいたします。
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