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物流業界の「2024年問題」とはなにか?その内容や取り組むべき課題などについて解説します!

この記事は約8分で読めます。

「2024年問題」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

これは物流業界に関する「働き方改革関連法」に関連する問題のことを指しています。

人によっては「物流とは違う業界で働いているから、関係ない」と感じる人もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

場合によっては“支払う運賃が上昇する”こともあるため、決して他人事では済まされない可能性があるからです。

今回は、この「2024年問題」について、詳しく解説をしていきたいと思います。

「2024年問題」とはどんな問題なのか?

概要

「物流の2024年問題」とも呼ばれるこの問題は、働き方改革関連法によって2024年4月1日から物流業界に生じるさまざまな問題のことを指す言葉のことです。

改正点はいくつか存在しますが、その中でも「時間外労働の上限規制」が特に大きな影響を与えるといわれているのです。

これによって、自動車運転の業務に関連する時間外労働が「年960時間」となります。

「時間外労働の上限が規制される=残業が減る=プライベートの時間が増える」

これをメリットなのでは?と考える人もいると思います。

確かにその通りではあるのですが、問題点もあります。

それは、「ドライバー一人当たりの走行距離が短くなる=長距離でモノが運べなくなる」ということです。

そうなれば、以下のような問題が発生する可能性が高まることとなるのです。

◆トラック運送業界の売上が減少する
◆トラックドライバーの収入が減少する
◆荷主企業の運賃が上昇する など

適用はすでに始まっている

働き方改革はほとんどの企業ですでに行われています。

大企業は2019年4月から、中小企業では2020年4月から施行されているのです。

そして、働き方改革関連法は、以下の3つをポイントとしています。

◆年次有給休暇の時季指定
◆時間外労働の上限制限
◆同一労働同一賃金

そして時間外労働の上限についてですが、これは原則として「月45時間」「年360時間」に制限されています。
(労使間で36協定を結んだとしても、時間外労働は年720時間に制限される)

しかし、猶予された事業および業務があるのです。

それが、以下です。

●建設事業
●自動車運転の業務
●医師
●鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業

なぜかというと「目標と実情が、あまりにかけ離れていたため」です。

ちなみに、他業種に比べて年間240時間もの開きがあります。

このことから、他の業種や働き方に比べて、運送・物流業務を行うドライバーの時間外労働の上限規制は、実情に合わせて緩く設定されているといえるのです。

ただし、あくまでもこれは現時点での話です。

将来的には、時間外労働の上限が他職種と統一される可能性も否定はできません。

現時点での労働時間はどうなっているのか?

そもそもですが、現時点でトラック運転手は人手が足りておらず、社会課題の一つとなっています。

その原因の一つが、「長時間労働」です。

例えば、2020年度におけるトラック運転手の平均年間労働および時間外労働の時間は、以下のようになっています。

【大型トラック運転手】
◆平均年間労働 :2,532時間
◆平均時間外労働:420時間(月当たり35時間)

【中小型トラック運転手】
◆平均年間労働 :2,484時間
◆平均時間外労働:372時間(月当たり31時間)

(全日本トラック協会調べ)

全産業の平均が「2,100時間」となっているので、トラック運転手がどれだけ長時間労働を行っているかがご理解いただけるかと思います。

ただし、この数字を見た人の中には、「時間外労働時間の規制がかかる”960時間”はクリアしているのでは?」と感じるかもしれません。

しかし、上記はあくまでも“平均”なのです。

実際、2020年に厚生労働省が行った別の調査によると、繁忙期ではない通常月の時間外労働時間は、以下のような結果が出ています。

①時間外労働なし:20.8%
②1時間未満:12.7%
③1時間以上~4時間以下:48.1%
④4時間超~7時間以下:14.0%
⑤7時間超:4.3%

2024年4月以降の時間外労働は「960時間」となり、例えば1ヶ月の稼働日数を22日にして計算すれば、1日あたりは「約3.6時間」となります。

つまり、上記の④と⑤を足した数字の18.3%の人は、上限を超えていることとなるのです。

しかも、これは「通常月」の話です。

繁忙期であればもっと時間外労働が増える可能性もあります。

また、企業規模によっても労働環境は大きく変化する可能性があるため、絞り込みをかければ、さらにその結果も変わってくるかもしれません。

「違反」した場合はどうなるのか?

もし仮に上限規則に違反した場合、「6ヶ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が罰則として課される可能性があるとされています。

その他「2点」の変更点について


働き方改革関連法は、時間外労働の上限規制の他に後2つ変更点が生じることとなります。

◆同一労働・同一賃金
◆月60時間超の時間外労働の割増賃金引上げ

それぞれ、捕捉を加えていきましょう。

「同一労働・同一賃金」について

これは、同一企業内において「正規雇用と非正規雇用の間で生じる不合理な待遇差を解消する」という目的で行われるものであり、この法改正に伴い、運送・物流会社は以下のルールを順守しなければいけなくなります。

●正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などの待遇に差をつけてはならない
●非正規雇用労働者から求めがあった場合には、待遇の差に関して理由を説明する必要がある

運送・物流業界は、正規はもちろん非正規でドライバーを雇っている会社も少なくはありません。

正規と非正規の間に“待遇の差が生じないように”合理的な給与体系や評価基準を設定しなければいけなくなるのです。

「月60時間超の時間外労働の割増賃金引上げ」

割増賃金に関しては、現時点では「大企業:50%」「中小企業:25%」と設定されています。

しかし、2023年4月からは、中小企業に関しても割増賃金の割合が50%となるのです。

月60時間を1日(1ヶ月22日稼働として)に換算すると、“約2.7時間”となります。

1日あたりの時間外労働に上限が設けられる上に、さらに一定時間を超えればこれまで以上の残業手当を支払わなければならなくなる……。

となれば、経営者視点で考えれば、必然的に経営方針を変えざるを得なくなります。

方々にもさまざまな影響が出る


上記でご紹介した内容は、企業だけでなく運転手側にとっても危惧しなければならない重要な問題です。

なぜなら、「時間外手当がもらえなくなる」可能性が高まるからです。

“残業がなくなる=自由が時間が増える”というメリットはありますし、企業によっては基本給などを上げてドライバーの収入が減らないように配慮する企業もあるかもしれません。

しかし、自由な時間が増えても給料そのものが減っては意味がありませんし、すべての企業がドライバーに対する収入面の配慮ができるかといえば、それも土台無理な話です。

このことから、運送業界およびそこで働くドライバーの人たちは、今後厳しい状況に立たされることとなるのです。

そしてもう一つ。

利用者側にとっても、「利用料の値上げ」という問題が発生する可能性があります。

企業側としては、仮にどれだけ売上が下がったとしても、“減らすことができないコスト”というものが存在します。

例えば、トラックの減価償却費などです。

そうなると、利益はもちろん経営を維持するために、多くの運送・物流企業が「利用料の値上げ」を行ってくる可能性も否定はできません。

企業・運転手・利用者……すべてにおいて、デメリットが発生するかもしれないのです。

これが、「物流業界の2024年問題」というものなのです。

まとめ:今後の取り組み方について

この問題に対し、業界が取り組むべき課題には何があるでしょうか。

それは、以下が挙げられます。

◆労働環境・労働条件の見直し
◆勤怠管理の強化
◆輸配送効率の向上
◆輸配送形態の切り替え など

時間外労働の上限が設けられることによって、確かに残業代が減り、働きやすい環境は整備されるかもしれません。

しかし、それと同時にドライバー一人あたりの賃金低下は予想される事態となります。

それでなくても人手不足であるこの業界ですが、この問題によって今後ドライバーの数がどうなっていくかは予想もつきません。

とはいえ、企業を運営する以上、どんな状況であっても人手・利益を確保するためにさまざまな取り組みを行わなければならないことも事実です。

そうなると、今度は“支払う運賃”が上昇する可能性が高まり、利用者側の負担も増大してくる可能性があります。

誰にとっても他人事ではない、この問題……。

今後、この問題をどうクリアしていくかが運送・物流業界にとっての重要な課題となるでしょう。

これについては、ITを活用して業務効率化を図ることが、問題を乗り越えるカギとなり得るかもしれません。

たとえば、トラックの予約受付システムを導入すれば「荷待ち時間の短縮」、車両管理システムを導入すれば「トラックの稼働率向上」の効果が期待できます。

こうした効果が発揮されれば、労働時間の削減や生産性の向上につながることでしょう。

また、M&A(合併、売却・買収)の実施も効果的といえるかもしれません。

活用できるものはすべて活用し、この問題をクリアできるよう、さまざまな取り組みを実施していくことが重要といえるのです。

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