車のフロントガラスの下や、バックガラスにシール(マーク)が貼られていることがあります。
多くの人は、それを「若葉マーク」や「四つ葉マーク」とイメージするかと思いますが、実はそれ以外にもいくつかの種類が存在します。
そして、「若葉マーク」や「四つ葉マーク」も通称であり、正式名称はそれとは別にあります。
それぞれのマークの意味をしっかりと理解することは、運転をする上で非常に重要です。
今回は、この「車に貼るマーク(シール)」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「マーク」の種類と意味について
4つの種類が存在する
車に貼りつけるマークには、以下4つの種類が存在します。
②「高齢運転者標識」
③「聴覚障害者標識」
④「身体障害者標識」
①②などは街中でもよく見かけることはあるかと思いますが、③④はあまり目にしたことがないという人もいるかもしれません。
これらマークは、“運転になんらかの支障をきたす恐れがある”場合に車に貼るものであり、「他のドライバーに注意を促している」「配慮してほしい」という意思の表れになります。
運転中にこれらのマークを貼っている車を見かけたときは、十分に配慮した運転を意識する必要があるのです。
では、以下よりそれぞれの意味をご紹介していきたいと思います。
「初心運転者標識」とは?
通称、「初心者マーク」「若葉マーク」とも呼ばれており、もっとも見かけることが多いマークかと思います。
なぜ、見かけることが多いのか?
実はこのマークは、「運転免許を取得して1年以内は貼るように義務付けられている」からです。
(道路交通法第71条5より)
仮に免許取得1年以内の人がマークを貼らなかった場合、違反点数や反則金が科せられることとなります。
現在は、自動車学校にて卒業記念品としてプレゼントされることも多くなっていますので、免許を取得し立ての人は、必ずこのマークを車に貼っておくようにしてください。
ちなみに、初心者マークは「運転に不慣れなので、気を付けてください」という意味で、周囲に注意を促すマークとなります。
そのため、免許取得から1年以上経っていても、「ペーパードライバーなど”運転に自信がない人”」も、初心者マークを付けて運転することが可能です。
「高齢運転者標識」とは?
こちらは、通称「高齢者マーク」「シルバーマーク」「四つ葉マーク」とも呼ばれており、その名の通り「高齢者ドライバーが運転している車である」ということを、周囲に知らせるためのものとなります。
これは、「70歳以上」のドライバーが運転する車に貼りつけることとなります。
ただし、「努力義務」であり、初心者マークのように絶対に貼らないといけないわけではありません。
当然、罰則もありません。
しかし、現在は、高齢化に伴って高齢者ドライバーも増えています。
実際、元気な高齢者も多い……のですが、70歳を超えてくるといろいろな機能が低下し、運転時に支障をきたすようになります。
本人は「大丈夫、問題ない」と思っていても、いざというときに何かしらの問題を起こし、周囲の人たちを巻き込む事故に発展しないとも限りません。
(実際、それでさまざまな事故が起きていることも事実である)
そのため、高齢者の方はできる限りマークを表示しておいた方がいいことは確かなのです。
その上で、しっかりと安全運転を心掛ける必要があるのです。
ちなみに、高齢者マークはデザイン面が不評だったらしく、2011年2月にデザインが更新されています。
以前のものは、その色合いから「もみじマーク」と呼ばれていました。
「聴覚障害者標識」とは?
これは、通称「蝶々マーク」「聴覚障害者マーク」とも呼ばれており、「聴覚に障害がある人が運転している車」に貼り付けるマークとなっています。
免許証取得時に聴覚のテストを行いますが、本来は「(補聴器により補われた聴力を含め)10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえる」という基準を満たさなくてはいけません。
しかし基準を満たさない場合でも、運転する車種を限定した上で、特定後写鏡(ワイドミラーや補助ミラー)を設置していることを条件に、車の運転を許可されることがあるのです。
その場合に、この蝶々マークを貼り付けなくてはいけません。
これは、“貼り付ける義務”があり、違反した場合は、罰金と違反点数が科せられることとなります。
なぜ貼り付ける義務があるのかというと、「周囲の音が聞き取りづらい(聞こえない)ことを、他のドライバーに知らせる必要があるから」です。
場合によってはクラクションが聞こえないこともあるため、周囲の車の配慮が必ず必要となるのです。
ちなみに、聴覚障害者を保護するため、この蝶々マークを表示した車に対して「幅寄せ」や「割り込み」などの行為を行った場合、罰金と違反点数が科せられることとなります。
この点にも、十分注意が必要となります。
「身体障害者標識」とは?
通称、「クローバーマーク」「身体障害者マーク」と呼ばれており、「身体的な障害を抱えながら車を運転する」ときに必要となるマークのことです。
ただし、これも四つ葉マークと同じく「貼り付けるのは努力義務」であり、表示しなかったとしても罰則などはありません。
ただ、表示位置に関しては「車体の前面と後面の両方に、地上0.4メートル以上1.2メートル以下の見やすい位置」と定められています。
(この規定は、どのマークであっても同じである)
尚、このクローバーマークを表示している車(身体障害者が運転している車)に対しても、「幅寄せ」や「割り込み」をした場合、罰金と違反点数が科せられることとなるので注意が必要となります。
4つのマークの「共通点」について
4つのマークは、表示するべき対象者は大きく異なることとなります。
しかし、4つのマークすべてに共通する点がいくつか存在します。
一つは、「表示対象は軽自動車を含む普通自動車」であり、表示位置は「車体の前面と後面の両方に、地上0.4メートル以上1.2メートル以下の見やすい位置」と定められている点です。
車によっては、リヤウインドの上部に表示している場合などもありますが、これは厳密には“違反”となります。
そしてもう一つは、これらのマークをつけた車に「幅寄せ」や「割り込み」などを行った場合、罰金と違反点数が科せられることとなる……という点です。
(「初心運転者等保護義務違反」という)
ただし、危険防止のため“やむを得ない場合”は除かれます。
通常は、反則金6,000円(普通車・二輪車)と累積1点が。
(大型・中型・準中型は7,000円、小型特殊の場合は5,000円)
悪質で違反がより重い場合は「刑事処分」となり、5万円以下の罰金が科されることとなるのです。
上項では、蝶々マークやクローバーマークなどの項目でこの点については記載しましたが、実際は4つのマークのどれであっても違反の対象となるのです。
表示の「義務」について
上項で記載した通り、4つのマークは「表示義務」のあるものとないものが存在します。
◆「初心運転者標識」
◆「聴覚障害者標識」
≪努力義務のもの≫
◆「高齢運転者標識」
◆「身体障害者標識」
若葉マークや蝶々マークの場合、「表示義務」があるため、マークを貼り付けていないと違反となってしまいます。
当たり前のことですが「知らなかった」では済まされないため、この点には十分に注意しておきましょう。
また、努力義務である四つ葉マークやクローバーマークの場合、表示していなくても違反にはなりませんが、極力表示はしておいた方が良いかと思います。
そもそも、これらマークは「運転に支障をきたす可能性があるため、周囲の人は気を付けてください」という、周囲の人への注意喚起のために表示するものなのです。
「違反対象になるから表示しなければならない」「違反対象にならないから表示しなくても良い」という問題ではないのです。
車の運転は、下手をすれば周囲の人を巻き込む大事故に発展する恐れがあります。
場合によっては、その事故で命を落とす人だっているかもしれません……。
“問題を極力起こさないように周囲に注意を促す”ために表示されるものなので、「自分は大丈夫、問題ない」という自分勝手な判断をせずに、できる限り表示することを意識してみてください。
実際に事故は起こっています。
何かあってからでは、遅いのです……。
その他のマークについて
実は、上項でご紹介したもの以外にも、いくつかマークは存在します。
例えば、赤ちゃんを乗せている車であることを周囲に知らせるための「BABY IN CARマーク」。
妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけることで、妊産婦であることを示し、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするための「マタニティマーク」。
(これは、交通機関だけでなくさまざまな場所で使用されている)
障害のある人々が利用できる建築物や公共輸送機関であることを示す、世界共通のマーク「国際シンボルマーク」など……。
(これは、基本的には建築物や公共輸送機関を対象につくられたマークであり、個人の車に表示することは、国際シンボルマーク本来の主旨ではない)
車に貼り付けるだけのものではなく、幅広い場所で使用されているマークがほとんどですが、こういったマークもあるという点をご留意いただければと思います。
まとめ
以上が、車に貼るマークについてのご紹介となります。
覚えておくべきことは、
◆努力義務であっても、マークは表示しておいた方が安全である
◆マーク表示がある車に幅寄せや割り込みをすると「道路交通法違反」となる
といった点でしょうか。
また、身近に該当者がいる人も、そうでない人も、各マークの意味をしっかりと理解しておくことが重要です。
人が運転している以上、車にも「クルマ対クルマのコミュニケーション」が存在します。
もちろん、表示のあるなしに関わらず、思いやりのある行動を取ることは大切です。
ただ、マークが表示されている車には、特に十分な注意と警戒・思いやりのある行動が必要となってきます。
こういったマークが表示された車を街中で見かけたときは、注意して思いやりのある運転を心掛けてみてください。