誰でも手軽に利用でき、かつ小回りが利くため、子どもから高齢者まで幅広く利用されている「自転車」。
俗に”ママチャリ”とも呼ばれる「シティサイクル」や「電動アシスト付き自転車」、「ロードバイク」や「クロスバイク」などその種類も多様で、古くより多くの人々に愛用されている乗り物です。
コロナ対策の一環として、自転車を利用する人も増えたのではないでしょうか。
しかし、それと同時に“自転車の盗難”も問題視されています。
決して安い買い物ではない自転車を、盗難から守るためにはどうすればいいのでしょうか。
また、実際に盗難に遭った場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
今回は、“自転車の盗難”について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
自転車の「盗難件数」について
健康的で環境に優しい移動手段として、自転車を活用する人は増えています。
しかし、それと同時に自転車は盗難のリスクと常に隣り合わせでもあります。
きちんと施錠していても、きちんと駐輪スペースに駐輪していたとしても、盗まれる可能性があるのです(被害者からすればたまったものではありませんが……)。
実際、警察庁の調べによると、認知されている盗難の被害件数は以下のように発表されています。
◆平成30年:183,879件
◆令和元年:168,703件
◆令和2年:120,797件
◆令和3年:106,585件
その数は年々減少傾向にはありますが、それでも10万件以上の盗難が発生しているのです。
尚、自転車の盗難は触法行為であり、「窃盗罪」あるいは「占有離脱物横領罪」が適用されます。
迷惑な行為であると同時に、立派な“犯罪行為”なのです。
盗難する心理は理解しかねますが、例えば「駅までの移動手段……」などの軽い気持ちで盗む人もいれば、「転売目的」などで盗む人もいるようです。
自転車も最近な高性能なものが多く、電動アシスト付き自転車のバッテリーであったり、ロードバイクのパーツなどは高値で売れるのだとか……。
いずれにせよ、どんな理由があろうと正当化されるものではありません。
大切な自転車を盗難から守る方法
盗難リスクが高い場所とは?
自転車の盗難と聞くと、街中や人気の少ない駐輪場などで発生するイメージがあるかもしれません。
しかし、盗難のリスクがもっとも高い場所は「自宅」なのです。
警視庁が発行している「自転車盗の防犯対策」という資料によれば、東京都内における自転車盗の約4割が、「自宅」で発生しているとしています。
続いて、「駐車場・駐輪場」、そして「道路上」と続いているのです。
外出先でしっかりと防犯対策をしておくことはもちろん、自宅で保管する場合にも油断をしてはいけません。
では、どうすれば大切な自転車を盗難から守ることができるでしょうか。
方法としては、以下の7つが挙げられます。
②施錠を忘れず、主錠の他に補助錠をつける
③犯罪防止効果が高い場所に駐輪する
④自宅の駐輪場に監視カメラや人感センサーを設置する
⑤GPSトラッカーで追跡する
⑥自転車パーツに名前や印を書く
⑦盗難保険に加入しておく
順に補足を加えていきます。
対策①:防犯登録済みの自転車に乗る
防犯対策の大前提です。
そもそも、平成6年以降は、自転車の所有者は「車体番号」と「防犯登録番号」を都道府県に登録することが法律で義務付けられています。
防犯登録を行うことで、自転車の所有者が明確となり、盗難や盗難品の転売・放置自転車の防止にもつながるのです。
ちなみに、実店舗で販売されている自転車は防犯登録がされていることがほとんどですが、通販で購入する場合は防犯登録がされていないこともあります。
その場合は、以下を準備したうえで自転車専門店やホームセンターなどに行き、防犯登録の手続きを行ってください。
◆販売証明書や譲渡証明書
◆保険証や免許証などの身分証明書
◆登録料(地域によって違うので要確認)
登録を行うと、「防犯登録番号」というものが付与されます。
これが、実際に盗難被害に遭ってしまった際に重要となるのです。
ちなみに、上記の通り“防犯登録は法律で義務付けられている”ものであり、中古で購入した自転車であっても、絶対に防犯登録を行わなくてはいけません。
また、防犯登録には原則“有効期限”があり、これは都道府県によって異なります。
有効期限が切れてしまうと「盗難届」が出せなくなりますので、期限が過ぎたら新たに防犯登録をし直す必要があります。
対策②:施錠を忘れず、主錠の他に補助錠をつける
基本的なことではありますが、自転車を離れる際は(ほんの一瞬であっても)必ず施錠しましょう。
意外と多いのが、スーパーやコンビニなどに立ち寄る際に「ほんの少しだけだし……」と鍵をかけずに自転車から離れることです。
また、「自宅の駐輪スペースなので、盗まれる心配はないだろう」と判断(油断)し、鍵をかけずに置いておくこと。
上述にも記載した通り、自転車盗の約4割が「自宅」で発生しています。
短期間であろうと、自宅であろうと、自転車から離れる際は必ず施錠しておくことをオススメいたします。
また、盗難抑止効果を高めるために、「主錠」と「補助錠」を組み合わせて利用することも重要です。
シティサイクルや電動アシスト付き自転車等の場合は、自転車に裾付けされている鍵があるはずなので、それとは別に補助錠も付けてみるといいでしょう。
ロードバイクやクロスバイクの場合、(軽量化や見栄えのため)主錠そのものが付いていないものも多く、そもそも主錠としてワイヤー錠やチェーンロックを使用することもあるはずです。
それとは別に、もう一つ(あるいはいくつか)の補助錠を活用してみてください。
ちなみに、補助錠は地面からできるだけ遠い位置に付け、自転車と固形物とを繋ぐように取り付けてみてください。
補助錠が地面と近い位置にあると、ワイヤーカッターを足で踏むことで補助錠を破壊できてしまうためです。
対策③:犯罪防止効果が高い場所に駐輪する
外出先で駐輪する場合は、犯罪防止効果が高い場所に駐輪するようにしてください。
例えば、「通行人などの人目につきやすい」「車体をつなぐ固定物がある」「固定物と車体を繋ぐロックがある」「明るさと見通しが確保されている」「防犯カメラが設置されている」などです。
また、“駐輪禁止区域などに自転車を停める=違法駐輪”は絶対にしないようお気を付けください。
違法であり、自転車を撤去される可能性もあります。
※「違法駐輪」については、以下記事を参照ください※
対策④:自宅の駐輪場に監視カメラや人感センサーを設置する
自転車の盗難は「自宅」でも多く発生しています。
(そもそも私有地への不法侵入であり、窃盗罪などの罪にも問われるため)盗難の被害に遭う側はなにも悪いことはしていないのですが……それでも悪事を働く人は一定数存在するのが事実です。
人によっては、自宅の駐車場・駐輪場に監視カメラや人感センサーなどを設置するのも良いと思います。
導入コストがかかる……という点ではデメリットにもなり得ますが、自転車は決して安い買い物ではありません。
特に電動アシスト付き自転車やロードバイクなどは数万円~十数万円……もしくはそれ以上の高価な買い物となる可能性があり、それだけ購入した自転車にも思い入れが強くなるはずです。
大切な自転車を守るためにも、こういった対策もしっかり行っておいた方が良いとも思います。
対策⑤:GPSトラッカーで追跡する
GPSトラッカー(追跡機能)とは、リアルタイムで位置情報を追うことができる発信機のことです。
これを自転車に装着しておくことで、自転車の盗難に遭っても、リアルタイムで自転車の位置を把握することができます。
最近では、自転車専用に開発されたコンパクトなものも販売されています。
値段はピンからキリまでありますが、数千円程度で購入できるものもありますので、比較的低予算で防犯対策が可能となります。
対策⑥:自転車パーツに名前や印を書く
自転車は、本体だけでなく、サドルやタイヤ・電動アシスト付き自転車のバッテリーなど、各パーツが“転売目的”で盗難されるケースもあります。
パーツの盗難被害を防ぐには、パーツごとに盗難対策を施すのも良いでしょう。
例えば、サドルであれば、専用の盗難防止ボルトなどが販売されており、これを装着することでサドルの盗難を抑制することができます。
また、パーツ自体に名前を書いたり目印をつけたりすれば、転売されにくくなります。
自分専用の目印をつければ、犯罪防止にも役立てられますし、より自転車に愛着も沸くかもしれません。
名前を書く・目印をつけると聞くと「格好悪い」と感じる人もいるかもしれませんが、「自分好みにカスタマイズする」と考えれば、捉え方も変わってくるかと思います。
対策⑦:盗難保険に加入しておく
盗難保険とは、「盗難に遭った際に、自転車の購入金額の全額もしくは一部が補償され、保険金が支払われる」というものです。
保険料と補償額は、加入する保険の種類によって変わります。
基本的に、「補償額が上がる=保険料も上がる」となっていることが多いので、どのくらいの補償が必要かをよく検討してから加入してください。
ロードバイクは特に高価なものが多いので、盗難保険への加入はオススメできます。
ちなみに、「鍵のかけ忘れ」や「パーツだけ盗まれた場合」は、補償の対象外となるケースもあります。
これも保険の種類によって異なりますので、加入の際はその内容をしっかりと確認しておきましょう。
「自転車が盗まれた!?」こんなときはどうしたらいい?
「停めていた場所に自転車がない!?」となれば、誰でも焦ると思います。
特に、高価な自転車や思い入れのある自転車であれば、余計に気持ちが焦ってしまうはず。
ただ、こういうときこそ焦らず冷静に行動に移すことが重要です。
この項目にて、盗難時の対処法について解説していきたいと思います。
そもそも、「盗難」ではなく「撤去」の可能性を考える
まずは、落ち着いて「撤去」された可能性がないかを確認してみてください。
駐輪禁止区域など、自転車を「駐輪可能スペース以外の場所に停めていた……」ということは、意外とよくあることです。
もし撤去されていた場合は、撤去した旨の張り紙が貼ってありますので、まずは駐輪していた場所の近くを確認してみてください。
張り紙があった場合は、自転車の保管場所が記載されているはずなので、そこまで自転車を回収しに行ってください。
警察に「被害届」を出そう
周辺に撤去公示がない場合は、盗まれた可能性が高くなります。
盗まれた時点でもう周囲に自転車はないことがほとんどであるため、周囲を無暗に探し回ろうとせず、まずは「盗難が発生した時間と場所」を把握することから始めてみてください。
そして、警察に赴き、「被害届」を出してください。
この際に必要となるものは、以下の通りです。
◆自転車の防犯登録番号
◆自転車の車体番号
◆身分証明書
◆発生日時や状況、自転車の特徴などのメモ
「防犯登録番号」は、防犯登録時の控えや車体に貼り付けた防犯登録シールに記載されています。
盗まれた後だと防犯登録シールを確認することはできないので、念のため(特に大切な自転車の場合は)防犯登録番号や控えの場所をあらかじめ把握しておくといいでしょう。
「車体番号」は、自転車の保証書に記載されているので、こちらも事前に把握しておくといいかもしれません。
ちなみに、「防犯登録番号」と「車体番号」が分からない場合であっても、被害届を出すことはできます。
ただし、番号の記載がないと、警察側も探しようがなく捜索は非常に困難となります。
また、もし発見されたとしても「本当に持ち主なのかが証明できない」ため、確認に手間取ることとなってしまいます。
できる限り、「防犯登録番号」と「車体番号」は把握しておいた方が賢明かと思います。
最後にもう一つ。
盗難届が受理されると、「盗難届出証明書」というものが発行されます。
これは、「自転車保険の盗難補償を申請する場合などに必要となる」ため、必ず保管しておいてください。
「自転車が見つかる」とどうなるの?
盗難届を提出すると、盗難された自転車のデータが警察のデータベース上で情報共有されます。
そして自転車が見つかった場合、被害届を出した本人に直接連絡がいき、指定された保管所に取りに行くこととなります。
また、自転車を引き取りに行く際も、本人確認のために「身分証」と「印鑑」が必要となりますので、忘れずに持参してください。
もし警察から連絡が来る前に「自分で発見できた」場合は……?
可能性は低いですが、もし警察や保管所から連絡が来る前に「自分の自転車を発見できた場合」、それでも自分で独自の判断で勝手に回収してはいけません。
理由は2つ。
「犯人が乗っている」もしくは「自分の自転車ではない」可能性があるからです。
別のトラブルに発展する可能性も否定はできないので、発見しても回収せずに、まずは警察署に連絡してください。
そして、自分のものであることが確認されたら、「被害届を取り下げる」ようにしましょう。
被害届を取り下げないと、「窃盗の犯人として疑われてしまう」という可能性もあるからです。
尚、被害届の取り下げ方は簡単です。
「印鑑を持って交番もしくは警察署にいき、盗難届を取り下げる旨の書類にハンコを押す」これだけです。
時間も10分程度で済みますので、無用なトラブルを避けるためにも、必ず被害届の取り下げを行ってください。
まとめ
以上が、「自転車の盗難」に関するご紹介となります。
どれだけルールを守って・正しく自転車を利用していたとしても、時には被害者となってしまう可能性もあります。
もし被害に遭った際は、焦らず冷静になって状況確認をし、警察に被害届を出してみてください。
被害届を出したからといって必ず自転車が返ってくるわけではありませんが、闇雲に周囲を探し回るよりは見つかる可能性は高くなるはずです。
また、警察や保管所から連絡が来る前に自転車を見つけた場合、無用なトラブルを避けるためにも、警察に連絡し被害届の取り下げも忘れずに行ってください。
そして、大切な自転車を守るためにも、自衛手段はしっかりと取っておくことをオススメします。
自転車は決して安い買い物ではなく、安くても数万円、高ければ数十万円もする高価なものです。
値段の問題だけでなく、自転車に対する“思い入れ”がある人も多いと思います。
セキュリティを徹底し、安心・安全・快適な自転車ライフを楽しんでください。