人々の生活の”足”として、古くより活躍している「自転車」。
また、現在は趣味の一環としてサイクリングを楽しむ人も増えています。
エコロジー・健康志向の高まりとともに、自転車ブームの熱はさらに加速しているのです。
そんな中で、注目を集めている資格があります。
「自転車技士」と「自転車安全整備士」という資格です。
この2つはどういった資格で、どんな違いがあるのか。
資格を取得するには、どうすればいいのか。
今回は、こういった点に注目して、ご紹介をしていきたいと思います。
「自転車技士」「自転車安全整備士」の資格について
まずは、各資格の特徴および違いについて、解説していきます。
「自転車技士」とは?
これは、「一般財団法人日本車両検査協会(VIA)」が審査・認定している資格制度のことです。
◆検査
◆整備
上記に関する正しい技術と知識を持った“自転車専門の技術者”であることを証明することができます。
自転車の安全性を保障するマークには、「JISマーク」「SGマーク」「BAAマーク」の3種類がありますが、このマークが付いた自転車の組み立て・検査・整備を行うためには自転車技士の資格を所持していなくてはいけません。
組立や検査を通して、自転車の品質・性能の向上などを図り、安全な自転車の供給をサポートしているのです。
「自転車安全整備士」とは?
こちらは、「公益財団法人日本交通管理技術協会」が審査・認定している資格制度のことです。
◆安全な普通自転車であることの点検確認
◆自転車の正しい乗り方などの安全指導
上記を行うことができ、専門的な知識と技能を有する“自転車専門の技術者”であることを証明できる資格です。
また、この資格を取得すると、自転車を点検・整備し、安全性が担保された自転車に「TSマーク」を添付することができます(自転車安全整備士資格を持つ者でないと添付できない)。
この「TSマーク」には、傷害保険と賠償責任保険が付帯されています。
ちなみに“TS”は、「Traffic(交通)」と「Safety(安全)」の頭文字を取ったものであり、「交通安全」という意味になります。
また、この自転車安全整備士が勤務する場所として、「自転車安全整備店」があります。
自転車安全整備店として認定されるには登録申請や審査が必要であり、登録後に自転車安全整備店の「店章」が貸与されます。
ただし、3年ごとの登録の更新が義務付けられています。
両者の違いはなんなのか?
どちらも、“自転車専門の技術者”であることを証明できる資格です。
非常によく似た資格ではありますが、管轄しているところや資格の目的が異なります。
その違いは、以下の通りです。
◆認定団体:財団法人日本車両検査協会
◆後援 :経済産業省
◆目的 :自転車の組立・検査・整備
◆メリット:「JISマーク」「SGマーク」「BAAマーク」のついた自転車の組立・検査・整備を行える
【自転車安全整備士】
◆認定団体:公益財団法人 日本交通管理技術協会
◆後援 :警視庁
◆目的 :自転車の点検・整備と安全指導
◆メリット:「TSマーク」の添付+取扱店として登録できる
また、両者とも「国家資格」ではありません。
資格を取得するメリットとは?
開業・職に就くために必須となる資格ではない
まず、サイクルショップで働くor自分でお店を開業するとなった場合に、必須となる資格は(現時点では)存在しません。
その気さえあれば、誰でもお店を開業することができます。
また、自分の自転車を整備したり修理するのにも、特別な資格は必要ありません。
別に、「自転車技士」や「自転車安全整備士」の資格を必ず取得しなければいけないという訳ではないのです。
ただし、“開業する・勤務する=お客様からお金をもらって仕事をする”以上は、正しい知識や技術を習得しておかなくてはいけません。
資格を取得している方が、断然有利となるのです。
特に、自転車安全整備士は自転車安全整備店への開業・就職の際に優位となります。
もちろん、趣味で自転車いじりをする人にとっても、知識と技術はあった方が良いです。
近年は自転車の種類も大幅に増えており、一般の人が整備することが難しい自転車も存在します。
知識や技術を習得しておけば、さまざまな自転車を良い状態で維持することができるようになるのです。
ただし、両者の資格を受験する条件に「2年以上の実務経験」が必要となるため、誰でも気軽に取得できるものではありません。
この点には注意しておきましょう(詳細は後述にて)。
ダブル取得を目指す人も少なくない
「自転車技士」と「自転車安全整備士」の資格は、必須ではないものの、以下のような方におすすめできる資格です。
◆自転車が好きで、整備に関心がある人
◆交通安全に関心があり、人々の安全を支えたい人
理由は、“自転車に関する正しい知識と技術を証明できる資格”だからです。
そのため、両方の資格をダブル取得しようと考える人も少なくありません。
自転車の需要は途切れることがなく、むしろその需要は拡大しています。
通勤・通学・買い物などの移動手段として利用する人もいれば、趣味としてスポーツバイクを楽しむ人もいます。
健康のために、自転車で運動の習慣化を目指す人も増えているのです。
今後も自転車のニーズは見込めることから、両者の資格は取得しておいて損のないものといえるでしょう。
資格を取得するにはどうしたらいい?
試験の概要について
上項でも記載した通り、「自転車技士」と「自転車安全整備士」の資格はダブル取得を目指す人が多く、同日に試験が行われます。
また、実技試験は両資格共通となっています。
そして、受験資格はどちらも同じで、「18歳以上+2年以上の実務経験」を必要とします。
受験概要をまとめると、以下のようになります。
◆5月下旬~6月上旬頃まで
【試験日程】
◆8月
※地域により実施時期が異なり、同一年度内には1回のみ受験が可能
【合格発表日】
◆10月上旬ごろ
【受験地】
◆北海道、宮城、茨城、埼玉、千葉、東京、愛知、滋賀、大阪、広島、福岡
※実施年度によって変更となる可能性あり
【免除について】
◆前年度の試験において、実技試験もしくは学科試験のいずれかに合格している場合、次回に限り合格科目が免除される
【受験料】
≪自転車技士≫
◆免除無し:22,590円
◆学科試験免除者:14,450円
◆実技試験免除者:8,700円
≪自転車安全整備士≫
◆免除無し:22,590円
◆面接試験免除者:20,280円
◆学科試験免除者:16,760円
◆学科、面接試験免除者:14,450円
◆実技試験免除者:8,700円
◆実技、面接試験免除者:6,390円
◆実技、学科試験免除者:2,850円
※同時受験の場合は、30,840円となる
※その他、同時受検の免除による受験料は、免除される科目によって受験料が異なる
詳細は、実施団体のホームページをご確認下さい。
試験内容・合格基準について
まず、「学科試験」についてですが、自転車技士・自転車安全整備士の両方が同じ時間に行われます。
試験内容は、以下の通りです。
1.自転車の構造、機能及び性能に関する知識
2.自転車の組立及び検査に関する知識
3.自転車の整備に関する知識
4.工業標準化法及び自転車・同部品の日本工業規格に関する知識
5.自転車の安全基準に関する知識
≪自転車安全整備士≫
1.自転車の構造及び機能に関する知識
2.自転車の点検及び整備に関する知識
3.自転車の安全利用の指導に関する知識
※どちらもマークシート方式
試験時間は、両方を受験する場合は70分、どちらか一方を受験する場合は50分となります。
合格基準は、どちらも100点満点で70点以上を取ることです。
次に実技試験ですが、両資格共通であり「受験用の自転車(新車)を受験者が持参し、七分組の状態から分解・組み立てを行う」こととなります(受験用の自転車には細かい規定がある)。
制限時間は、分解が25分、組立が80分です。
減点方式で審査が行われ、減点の合計が30点以下を合格とします。
ただし、必須項目および未完成の審査内容の1つでも該当する場合は、不合格となってしまいます。
そして、自転車安全整備士にはもう一つ、「面接試験」があります。
時間は1人5分程度で、以下が審査されます。
2.自転車利用者に応じた指導など
合格率について
合格率の平均値は以下の通りです。
◆筆記試験:自転車技士→約60%台、自転車安全整備士→約90%台
どちらかというと、自転車技士の方が取得難度が高い傾向にあります。
実技試験は両者で共通なので、問題となるのは筆記試験です。
合格率に大きさ開きがある理由は、ボルトの締め付け強度やスポークの組み込み方なども出題され、それなりに勉強しないと簡単には答えられないからです。
なんにせよ、どちらも勉強も練習もなしに取得できるものではありませんので、試験に向けてしっかりと準備を行っておきましょう。
まとめ
「自転車技士」「自転車安全整備士」のどちらの資格も、業務に携わる上で必須となるものではありません。
そもそも、受験資格に「2年以上の実務経験」を必要とするため、まずはサイクルショップに勤務して経験を積むことからスタートしなければいけません。
実務経験は、正社員だけでなくアルバイトなどでも条件をクリアすることができるので、仕事を通じて自転車整備の基本からしっかりと学びを進めていきましょう。
尚、試験に合格するためのポイントとしては、以下が挙げられます。
◆実技試験をクリアするために、何度も練習を重ね・経験を積むこと
◆筆記試験の勉強も怠らないこと(特に、自転車技士)
また、実技試験に使用する自転車・工具は、すべて自分で持参しなければいけません。
すべてを揃えるには相応の費用がかかるため、実務経験を積みながら順々に揃えていくことをオススメします。
自転車は利用者が多く、今後の一定の需要があります。
自転車が正しく整備されていないと、故障や事故につながる可能性が高まるため、技術者の存在は今後も欠かすことができません。
資格を取得できれば、開業や就職を行う上でも非常に有利となりますので、関心がある方はぜひ資格取得を目指して頑張ってみて下さい。