自動車やバイクを運転する際に必要不可欠な燃料である「ガソリン」。
そして、そのガソリンを給油するために、街中のいたるところに存在する「ガソリンスタンド」。
……というのは昔の話であり、現在はガソリンスタンドの数もどんどん減少しており、特にフルサービス店(有人スタンド)はその数が大きく減りつつあります。
仮に街中でガソリンスタンドを見つけても「セルフ式」ということも多く、中には「近所のガソリンスタンドはすべてセルフ式」なんて人もいらっしゃるかもしれません。
コツさえ押さえればスムーズかつ便利に利用できる「セルフ式」ですが、慣れていないと戸惑ってしまう方も多いはず。
そこで今回は、「セルフ式ガソリンスタンドの使い方・注意点」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
ちなみに、「フルサービス店(有人スタンド)」については下記記事にて詳細をご紹介しておりますので、関心がある方はご覧いただけると幸いです。
「セルフ式ガソリンスタンド」とは?
「フルサービス」と「セルフサービス」の違いについて
まず、現在のガソリンスタンド(給油取扱所)は、「フルサービス」と「セルフサービス」の2種類が存在します。
この2つの違いは、文字通り「給油作業を”専門スタッフ”が行うか”利用者自身”で行うか」です。
もう少し細かく違いを解説すると、以下のようになります。
◆給油コスト :ガソリン料金にサービス料を加えた価格設定
◆給油中の居場所 :自由、車を降りなくてもOK
◆給油時間制限 :なし
◆給油量制限 :毎分45Lの給油が可能
◆スタッフによるセールストーク:あり
◆窓ふき・点検などのサービス :あり
◆営業時間 :7時~22時頃(給油所により土日定休などの場合もある)
≪セルフスタンド≫
◆給油コスト :ガソリン料金のみ
◆給油中の居場所 :必ず車から降りる(自身で給油する)
◆給油時間制限 :4分間
◆給油量制限 :ガソリン・ハイオクが100L、軽油が200L
◆スタッフによるセールストーク:なし
◆窓ふき・点検などのサービス :なし
◆営業時間 :早朝~深夜もしくは24時間営業(※)
(※)営業時間は、ガソリンスタンドによって異なる場合がある
「フルサービス」の場合は、セルフ式に比べて若干給油コストが高くなる(企業努力によって値段が抑えられている場所もある)ものの、給油作業に加えて「窓ふき・灰皿の清掃・ゴミの処理・オイル交換・洗車・タイヤの空気圧チェック」など、安全走行に関するサービスを提供してくれます。
また、従業員と会話ができることから、何かあれば質問することもできます。
これは、道を聞けたり・美味しいお店を教えてもらえたり……など、見知らぬ土地に赴いたときほど助けられるサービスの一環だったりもします。
対して「セルフサービス」の場合は、利用者自身が給油を行うサービス方式の給油取扱所のこととなります。
これは1998年(平成10年)の消防法改正により普及し、現在のガソリンスタンドの多くは、この「セルフ式」となっています。
なぜ「セルフサービス」が普及しているのか?
メリットも多くある「フルサービス」ですが、現在は「セルフサービス」のガソリンスタンドの方が多くなっています。
それはなぜか?
この理由は、大きく2つ存在します。
一つは、「人件費の削減」です。
給油する利用客がひっきりなしに来るような人気店であるならばまだしも、近年は自動車の燃費性能が飛躍的に向上しており、そもそも「ガソリンを入れる機会自体がどんどん減っている」こととなります。
従業員を配置すれば、当然「人件費」が発生します。
お客さんが来なくても、従業員を配置している時間帯は必ず「人件費」が発生するのです。
それでなくても利用客自体が減少傾向にある中で、複数のスタッフを店舗に待機させておくのは、経営者視点でみれば“人件費の無駄遣い”となってしまいます。
ガソリンスタンドは経営が苦しい場合も多くなっており、やむなくセルフ式に転向した店舗もあるのです。
そしてもう一つは、「フルサービス式に比べて、燃料価格が安く設定されている場合が多い」ということです。
もちろん、フルサービス式であっても、企業努力によって燃料価格を低めに設定していることもあります。
しかし、人件費などの関係上、「燃料価格を抑えるにも限界がある」のです。
セルフ式であれば、この人件費を大幅に抑えることができるため、フルサービス式に比べて燃料価格が安く設定されている場合があります。
他にも、
◆店員と関わる人が苦手な人もいる
◆スタッフサービスを「おせっかい」と感じる人もいる(給油のみをサッと済ませたい)
などの理由も挙げられます。
そのため、大型のガソリンスタンドであれば、フルサービスが受けられる給油レーンとセルフ式の給油レーンが両方用意されていて、顧客の好きな方を選べるようなところもあるのです。
「セルフ式」であっても店員はいる……?
結論からいうと、「セルフ式であっても、従業員はいる」となります(必要最低限しかいないが)。
なぜなら給油とは本来、国家資格である「危険物取扱者 乙4類」の所持者が行う業務だからです。
そのため、セルフサービスであったとしても、「危険物取扱者 乙4類」を持つ従業員が事務所内にいます。
直接監視をしているパターンもありますし、表に出ていなくても監視カメラによって間接監視を行っているのです。
「誰もいないように見えて、実は監視されている」なんて聞くと、少し不気味に感じる人もいるかもしれませんが、これはガソリンスタンドを運営するにあたって絶対に必要なことなのです。
「もし、選択した油種とは違うノズルを持っていたら?」
「もし、明らかにディーゼル社ではない車に”軽油”を入れようとしていたら?」
事故や故障はもちろん、下手をすれば大事故に発展する可能性もあるかもしれません。
監視者は、ドライバー(利用者)による事故を防止するために、必要不可欠な存在なのです。
加えて、一定の安全対策を行うことも必要であり、これらを行うことで従来のガソリンスタンド(フルサービススタンド)と同等の安全性を確保したと認められるのです。
また、店舗によりけりではありますが、セルフ式であっても空気圧点検に対応してくれたり、洗車機などの利用方法を説明してくれるスタッフもいます。
「セルフ式」だからといって、完全に“無人”ではないのです。
もし「セルフ式の利用にあまり慣れてない」と不安を感じる人がいらっしゃれば、スタッフが近くにいるようなセルフ式ガソリンスタンドを選択して利用するのもいいかもしれません。
セルフサービス利用時に「注意」しておくべきこととは?
上記でもご紹介した通り、セルフ式であっても“何か問題があれば”スタッフが手を差し伸べてくれることはあります。
しかし、基本的には誰も利用方法を教えてはくれませんし、恥ずかしい思いもしたくはないでしょう。
それに、下手をすれば「引火」「事故」「故障」などの原因にもなるため、安全かつスムーズに利用できるようになりたいものです。
そのため、この項目にて、注意すべき点をいくつかご紹介しておきたいと思います。
注意点①その車に給油すべき「油種」を予習しておく
燃料には、「レギュラー」「ハイオク」「軽油」という3つの種類があります。
◆ディーゼル車:「軽油」を入れる
このような決まりがあるため、「自分の車にはどの燃料を入れるのか?」を明確に把握しておかなくてはいけません。
特に「軽油」は要注意です。
「”軽”自動車だから”軽油”だと思っていた」といった間違いをしてしまうと、場合によっては車が動かなくなることもあります。
レギュラーとハイオクの違いならそこまで大きなトラブルには発展しませんが……、ディーゼル車にガソリン、ガソリン車に軽油を入れてしまうと大変なことになりますので、この点は十分に注意しておきましょう。
注意点②「給油口」はどちら側にあるか、「開け方」も確認しておく
セルフ式の場合は、自分で車やバイクを給油レーンまで進めることとなります。
そして、一般的な乗用車は、給油口はどちらか片側にしか付いていません。
バイクであればあまり気にすることはありませんが、車の場合は給油口のある方と逆に止めてしまうと、そう簡単に動かすことはできません。
他のお客さんの迷惑にもなりますし、ちょっと恥ずかしいですし……。
そのため、「車のどちら側に給油口が付いているのか?」を、事前に確認しておく必要があります。
「そんなの間違える人いるの?」と、普段から車をよく運転する人なら思うこともあるかもしれません。
しかし、
◆免許を取得したばかりの人
◆レンタカーや家族の車など、普段乗りなれていない車を扱った場合
など、状況によっては給油口がどちらに付いているかパッと判断ができない場合もあるのです。
ちなみに、最近の車であれば、ガソリン残業計の横に「給油機を模したマーク」が付いていることもあり、そのマークに”左向きや右向きの三角形”が表示されていることもあります。
(この三角の向き側に給油口がついている)
どちらにしろ事前に確認しておくと、とっさに焦ることはありません。
後は、“位置”だけでなく“開け方”も、事前に確認をしておいた方がいいと思います。
スムーズに給油ができるように、合わせて事前に確認しておきましょう。
注意点③ スタンドに着いたら「エンジン停止」と「パーキングブレーキ」を引くことを忘れずに!
「ガソリン=液体」をイメージする人もいるかもしれませんが、ガソリンは非常に“気化”しやすい危険な物質です。
だからこそ、そもそもガソリンを扱えるのは、国家資格である「危険物取扱者 乙4種」を取得している人だったのです。
セルフ式で一般人でも給油ができるようになったとはいえ、ガソリンの本質そのものが変わっているわけではなく、扱いには十分な注意が必要となります。
そこで注意しておくのが、「エンジンを切ること」と「サイドブレーキをかけること」です。
エンジンが回っているからといって100%何かしらの問題に発展するというわけではありませんが、運悪く別の要素と組み合わさった場合は、恐ろしい事故につながる可能性も否定はできないのです。
実際に起こる可能性は低いとは思いますが、何が起こるかは分かりませんし、エンジンを切るだけでリスクを減らすことはできます。
そして、もう一つは「サイドブレーキをかけること」です。
スタンドの敷地内は平坦になっていることが多いです。
しかし、どこのスタンドも100%平坦……というわけではなく、傾斜しているところもあります。
これも可能性が低いとは思いますが、下手をすれば給油中に不意に車が動き出してしまう可能性も0ではないのです。
下手をすればガソリンを周囲にまき散らすことにもつながりかねませんので、しっかりとサイドブレーキをかけてから車を降りるように意識しておいてください。
注意点④.給油前に「静電気除去」、給油後の「継ぎ足し」は厳禁!
給油機には、備え付けの「静電気除去シート」が付いていますので、給油の前に必ずシートに軽く触れておくようにしましょう。
特に冬場は静電気が溜まりやすいです。
実際、この静電気によってガソリンに引火してしまったという事故も起きているそうなので、給油前に静電気除去シートに触れてから給油を行ってください。
(もちろん、冬場に限らずです)
満タンになると「カチッ」と音がして自動で給油が止まるので、後はノズルから燃料を滴らせないように注意しながら、給油機に戻してください。
そして、この時にもう一度トリガーを引いて「継ぎ足し」を行うことは止めてください。
ガソリンが吹きこぼれてしまう原因となるため、絶対にNGです。
ちなみに、上項でも記載しましたが、セルフタイムの給油時間制限は“4分間”となっています。
何らかの理由で給油に4分以上の時間がかかった場合は、給油が自動的に止まってしまいますので、念のためこちらにもご注意ください。
注意点⑤「キャップ」を忘れずに、お釣りも忘れずに
ノズルを給油機に戻すことができれば、後は燃料キャップをきちんと閉め、支払いを済ませてしまいましょう。
(給油口の蓋を閉めることもお忘れなく)
ちなみに、現金払いの場合は、支払額によってはお釣りが出てくることもあります。
意外と、お釣りの受け取りミスは誰でもやってしまうことだったりしますので、取り忘れのないように注意しておきましょう。
まとめ
以上が、「セルフ式ガソリンスタンドの、使い方と注意点」のご紹介となります。
運転に慣れている人であれば、「そんな初歩的なこと……」と思う人もいるかもしれません。
しかし、皆が皆運転に慣れた人ばかりではないのです。
特に免許を取得し立ての初心者であれば、ここでご紹介した内容を確認しつつ、スムーズに給油が行えるように頑張ってみてください。
後、慣れればスムーズに給油できるセルフ式ではありますが、「慣れている人ほど意外と危険行為をしている」という可能性も否定はできません。
誰にでも給油が行えるようになったとはいえ、「ガソリン=危険物」であることに変わりはありません。
慣れてきた人ほど、この機会に改めて使い方を見直してみるのもいいかもしれません。