運送業は、国内の貨物輸送の約4割を占め、日本の生活と経済に大きな貢献を果たしている中、その運送業者は荷主からの依頼を受けて運送をしています。
運送会社はもともと買い手優位の市場傾向にあり、運送会社側から値上げを持ち掛けることは難しく、買い手側優位の一方的な価格交渉を余儀なくされることも多いです。
こんな状況下ではドライバーとして働く人たちの賃金の上昇は見込めるはずもなく不満はたまっていくばかりでしょう。
この状況を打破するためにも、より良い価格交渉のスキルを運送業界のさらなる発展のためにも広めていきましょう。
運送・物流の仕組み
物流の分類
調達物流
国内外から原材料や部品などの調達を行います。
完成品、半製品の引き取り、販売するために仕入れる物流もこちらに含まれます。
回収物流
最終消費者が使用した後の製品や不良品、返品の回収、容器・運搬などリサイクル物質の回収など。
生産物流
資材の管理、工場内での流通、製品の管理から発送までをさし、調達部品や資材管理、工場内で生産した商品の管理・梱包・発送まで行います。
販売物流
販売が行われ、商品を倉庫から御売業者、小売業者、消費者へ届けます。物流センターから小売店など流通拠点への配送が主体となっていましたが、電子商取引の拡大により消費者へ直接配送するケースも増加傾向にあります。
物流の流れ
保管
品質や数量など適正な管理のもと、商品の在庫を倉庫に保存し、必要時に即出荷できるようにしておきます。
荷役
在庫を保管する場所に、貨物の積み込み・積み下ろし、倉庫への出荷・出庫を行う。運搬や仕分けもこちらに含まれる。
包装
配送中の在庫の保護や汚れ防止のための包装作業、また運搬や保管を容易にするために段ボールなどの箱に梱包します。
在庫の形によって紙や木、プラスチック製の容器やドラム缶等に入れられる場合もあります。
流通加工
品質の流通過程において、商品の価値向上のため、顧客のニーズに応じて検討、値付け、包装などの加工作業を行います。
物流の効率化、商品取引の利便性の確保のためにも重要な作業です。
情報管理
在庫がどの倉庫や流通センターにいくつあるか、在庫がどこに運送されているのかリアルタイムで把握するため、システムなどを使用し、迅速に荷物を配達するための情報を管理しています。
輸送・配送
商品を物流拠点から荷受人に届けます。
荷物を管理し配達するまでに重要とされているのが品質の管理。
食品群から大型家具や精密機器など、多くの荷物が毎日配達されています。
長距離移動の中、大切な製品が損傷したり劣化したりしない様、細心の注意が払われます。
製品の状態悪化だけでなく配送ミスも恐るべき事態なので、間違いがないか人の手によって管理を行います。
食品群においては常温・定温・冷蔵・冷凍と大きく4つに分けての温度管理も行っています。
新しい流れ3PLとは?
メーカーを”ファーストパーティ”、卸売業者や小売業者を”セカンドパーティ”と位置づけした場合、物流業務を担う物流会社は”サードパーティー”に相当します。
これらを合わせて3PLと呼ばれています。
荷主企業は自ら物量業務を行うことはせず、3PL事業を担う物流会社に発注することで、自社の中核事業に特化することができます。
3PL事業者が効率的な物流戦略の企画を立案したり、物流システム構築の提案をすることで物流業務を遂行する流れが広がり、近年では卸売事業者の進出も目立つようになっています。
物流システムを自社で一括管理する場合、人件費をはじめ輸送に伴う車両や倉庫管理のソフトの導入など、膨大なコストがかかってしまいますが、専門家による見直しで作業の品質と生産性が向上し、物流コスト可視化や圧縮、最適化が期待できます。
そうすれば、社内での業務範囲を絞り、集中させることができ、中核事業への集中と強みを伸ばすための投資にコストを回せるようになります。
要注意するべき取引条件
価格設定を一方的に設定される
運送委託者が運送事業者との十分な協議なしに通常であれば支払われる運賃・料金より著しく低い運賃・料金を定めることは下請法・独占禁止法に違反する恐れがあります。
解決策
有料道路の利用料金の負担をさせられる
運送委託者が有料道路の利用を前提とした運送を依頼しながら、有料道路利用料金の負担を拒むことは、下請法・独占禁止法に違反する恐れがあります。
解決策
労働時間を守れない運送の強要
運送委託者の指示により運送事業者が労働時間のルールを守れなくなった場合などには荷主勧告※の対象となる恐れがあります。※荷主勧告の対象には直接の運送委託者のみならず、真荷主までが含まれ得ます。
解決策
契約の内容の書面化できていない
「運送業における書面化推進ガイドライン」では運送契約にあたって運送日時、附帯業務の内容や運賃・料金の額などの必要事項について書面で共有することをルール化しています。
運送事業者が再委託する際に、必要事項を全て記載した書面を交付しないしないことは下請法に違反する恐れがあります。
解決策
運送委託者に附帯業務料金の負担してもらえない
運送委託者が運送事業者の運転者等に契約にない役割を無償で提供させることは下請法・独占禁止法に違反する恐れがあります。
解決策
運送委託者の都合で発生した料金を運送委託者が負担しない
運送委託者の都合で契約内容を変更し追加費用が生じたにもかかわらず、運送委託者が費用を負担しないことは、下請法・独占禁止法に違反する恐れがあります。
解決策
燃料費や人件費の上昇分を料金に反映してもらえない
運送委託者が運送事業者から燃料費・人件費の上昇コストを運賃・料金に反映することを求められたのにもかかわらず、運賃・料金を不当に据え置くことは、下請法・独占禁止法に違反する恐れがあります。
解決策
荷待ち時間への対策を講じてもらえない
運送委託者の都合により、荷待ち時間が発生するなど、労働時間等のルールを守れなくなる行為が見受けられる場合には、荷主勧告の対象になる恐れがあります。
また、運送委託者が出発時間を指定したにもかかわらず、運送委託者の都合により荷待ち時間が発生し、必要経費を支払わない場合には、下請法・独占禁止法に違反する恐れがあります。
解決策
受注者のための価格交渉の知識
明確な取引条件を
荷主・元請運送事業者と運送事業者間のトラブルを避けるためには、その取引条件を明確にすることが重要です。
まず、取引条件に関するルールを定めたうえで価格設定方法等について両者の間で合意をとることが望ましいです。
業務内容について
業務内容・責任の範囲を明確化し、契約を結びましょう。
運賃・料金設定について
運賃・料金を荷主・元請運送事業者と運送事業者の双方の合意に基づき明確に設定を行い、定期的に協議の場を設け、適宜見直しを心がけましょう。
上手な価格根拠の伝達
荷主・元請運送事業者との価格交渉にあたって燃料費や人件費等のコストに関する客観的なデータを提示するなど、自社が提示する価格の根拠を合理的に相手に伝えることが必要です。
荷主・元請運送事業者による運賃・料金の低減要請の対応
原価計算ご参考 http://www.jta.or.jp/
燃料費・人件費等の高騰分に対して
燃料サーチャージのご参考 http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000004.html
交渉経緯やルールの書面化
取引条件の改善に向け、発注者と決めたルールを着実に実行するには、書面に取り決めを残すことが重要となってきます。
書面化するべき事項
契約内容を書面化する際、業務上必要最小限の項目として、以下の項目が挙げられます。
これらの項目に業務上必要な記載項目を記載して下さい。
①荷主・元請運送事業者/受託者、連絡先
まとめ
いかがだったでしょうか?
低賃金に長時間労働、劣悪な労働環境が存在している事実もあり、このことからトラックドライバーになる若い方は年々減少傾向にあります。
若い方が減って全ドライバーの高齢化も問題視されています。
このままの状態を続けると、いずれドライバーが段々と減っていき、人員不足から今までのように安全で良好な運送が困難になり、経済にまで影響を及ぼしてしまう恐れがあります。
そんな危機を避けるためには、運送業界の賃金の上昇を前提とした労働環境や、若い方たちがドライバーとして働きたいと思える健全な労働環境に改善する必要があります。
適切な価格交渉の知識や方法がもっと広まっていき、運送業界全体がより良くなっていくことを心より願っております。