普段何気なく使用している言葉であっても、似たような意味の言葉があると、使い分けに悩むことがあると思います。
特に、ドライバーの求人を見ていると、「輸送」「運送」「配送」と、それぞれで求人募集をかけている企業も見受けられるかと思います。
「どれも、”物”を運ぶ仕事でしょう……?何が違うの……?」と感じている方もいるかもしれません。
実は、それぞれの言葉には違い(意味)があり、言葉が違う通り仕事内容も違ってきます。
今回は、この「輸送」「運送」「配送」の違いについて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
そもそも「物流」とはなんなのか?
そもそもの話ですが、「物流」という言葉の意味をご存じでしょうか。
これは「物的流通(Physical Distribution)」の略であり、“モノを流通させる仕組み”のことです。
あくまで“モノを運ぶ”ことを指しているため、物流には“人間の移動”は当てはまりません。
また、物流はモノを運ぶ以外にも、「保管」「荷役」「包装」「流通加工」などの機能も併せ持っており、一言で「物流」といっても、その範囲は非常に広いものとされているのです。
そして今回の主題でもある「輸送」「運送」「配送」ですが、これは“モノが運ばれる工程”を表しています。
順番としては「輸送」→「運送」→「配送」です。
“モノを運ぶ”という意味では同じですが、実は役割が大きく異なるのがこの3つとなります。
次項より、あいまいになりがちな上記3つの定義と使い分けをご紹介していきましょう。
「輸送」とは?
輸送は「一次輸送」とも呼ばれており、“長距離の移動”を伴いながらモノを運ぶ役割をもっています。
そして、この“輸送”には、交通手段に応じて名称がさまざまに異なります。
◆鉄道輸送(鉄道)
◆船舶輸送(船舶)
◆航空輸送(飛行機)
◆パイプライン輸送 など
例えば、工場から物流センターなどに運ばれる荷物や、農作物を農家から市場などに運ぶ場合などに「輸送」が利用されることとなります。
その性質上、基本的には“大量の荷物を運ぶ”こととなります。
ちなみに、“輸送”と辞書で調べると、「人や物を運ぶこと」となっています。
上記で“物流は人間を運ばない”と記載しましたが、輸送に関しては“船や航空機で人を運ぶこと”も対象となってくるのです。
ただし、物流の世界においては、“大量の物を長距離にわたって運ぶこと”という認識でいればいいかと思います。
尚、上記でさまざまな交通手段について記載をしましたが、それぞれにメリット・デメリットなる特性が存在します。
・メリット :ドア・ツー・ドアでモノを運ぶことができる
・デメリット:走行できる距離が限定的となる
【鉄道輸送】
・メリット :自動車輸送以上に大量の荷物を輸送でき、CO2削減や道路の渋滞緩和に役立つ
トラックドライバー不足や過重労働などの問題解決にもつながる
・デメリット:トラックよりリードタイム(※)が長く鉄道ダイヤが決まっているため、緊急性の高い輸送が難しい
(※)リードタイム=商品の発注から納品に至るまでの生産や輸送などにかかる時間のこと
【船舶輸送】
・メリット :大量の荷物を安価に運ぶことができる
・デメリット:(陸上輸送と異なり)輸送に時間がかかり、荷扱いには手間と時間を必要とする
【航空輸送】
・メリット :長距離を短時間で輸送できる
・デメリット:運賃が高く、大量輸送に適していない
それぞれにメリット・デメリットが存在するため、状況に応じて使い分けされるのが一般的となります。
「配送」とは?
これは「二次輸送」とも呼ばれており、近距離の小口輸送を担っています。
流通の流れで説明すると、まず「一時輸送」として拠点→拠点(工場から物流センターなど)に荷物が運ばれます(これが、輸送である)。
そして、各拠点から「二次輸送」として、卸問屋・小売店・エンドユーザーなどの顧客に荷物が運び込まれるのです(これが配送である)。
このことから、配送先は、複数個所に渡ることがほとんどとなります。
ちなみに、配送は原則として「経済圏内(域内)」において行われるものであり、そのほとんどが“自動車”で行われています。
小回りの利く“軽トラック”を使われることも多いですし、近年は“自転車”などの活用も広がりを見せています。
「運送」とは?
運送とは、「車やトラックを用いた輸送・配送」のことを指しています。
これは“車(トラック)で品物を運ぶこと”という意味であり、輸送・配送のどちらの意味も備えているのです。
そして、運送も輸送と同じく“人やモノを運ぶこと”という意味になりますが、物流の世界では「運送=トラックでモノを運ぶ」という意味で使用されると考えておきましょう。
当然ながら、あくまで“車(トラック)で運ぶ=運送”となるため、飛行機や船で荷物を運ぶことを「運送」とは言いません。
まとめ+物流業界の変化について
以上が、「輸送」「配送」「運送」の違いとなります。
端的に違いをまとめると、以下のようになります。
◆「配送」:二次輸送と呼ばれ、一時輸送で運ばれてきた荷物を、各顧客に配り届けることを言う
◆「運送」:車やトラックで、荷物を輸送・配送する場合に使用される
そして、物流の世界においては、原則として「モノを運ぶこと」を指していると考えておきましょう。
輸送や運送の場合、意味を調べると“人間を運ぶこと”も対象となっていますが、物流業界においては意味合いが少し変わってきます。
ちなみに、上記3つの使い分けについてですが、イメージとしては以下のように考えていただければ分かりやすいかと思います。
↓↓↓
◆「運送(車)」で、各拠点や工場にモノを運ぶ
↓↓↓
◆「配送」で、卸問屋・小売店・エンドユーザーなどの顧客にモノを運ぶ
最後に。
代表的な輸送手段についてですが、これは国土交通省にて発表されています。
●「内航海運」 :8%
●「鉄道」 :1%
●「航空」 :0.02%
※国内貨物輸送量(t・kベース)
それぞれにメリット・デメリットがありますが、現時点では「自動車(トラック)」での運送が輸送の代表的手段となっているのです。
この理由は、「日本が、周りを海で囲まれる島国であること」や「国土が狭いから」というのが挙げられます。
トラックの場合、“小回りが利き・利便性が高い”という点も、大きなメリットとして挙げられるでしょう。
他にも“荷物の積み替えが少ない”や“荷物の破損リスクが少ない”、そして“輸配送にかかる時間にも柔軟性がある”といった点もあるでしょうか。
ただし、少しずつ運送の利用率が減少し、逆に内航海運と鉄道の利用率が上昇してきています。
この背景は、「モーダルシフト」の利用率拡大があると考えられています。
「モーダルシフト」というのは、“トラックによる長距離輸送から海運・鉄道などに転換すること”を指しています。
その理由となるのは、以下が挙げられます。
◆CO2削減や道路の渋滞緩和のため
◆流通業務の効率化のため
特にCO2削減は大きな効果が期待できるとされており、政府もこのモーダルシフトを大いに推進しているとのことです。
(CO2の量:トラック233g、船舶38g、鉄道22gと言われている)
物流業界も、状況や環境に応じて常に変化を続けています。
それぞれの違い・特性をしっかりと理解し、状況に応じて使い分けができるようになりましょう。