現在の日本は「超高齢化社会」に突入しており、同時に「少子化」も問題の一つに挙げられています。
そんな中で、さまざまな方にとって利用しやすい環境を整える「ユニバーサルデザイン」の重要性が説かれています。
そしてそれは、タクシー業界においても同様の施策が行われているのです。
今回は、この「ユニバーサルデザイン」および「ユニバーサルドライバー研修」について、詳しくご説明をしていきたいと思います。
「ユニバーサルデザイン」とは?
概要
そもそも「ユニバーサルデザイン(Universal Design/UD)とは何なのか?」この点からご紹介していきたいと思います。
これは、「文化・言語・国籍・年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のこと」をいいます。
もっと簡単に言ってしまうと、“誰でも利用できるように作られたデザインのこと”です。
「ユニバーサルデザインタクシー」とは?
上記「ユニバーサルデザイン」は、タクシー業界でも「ユニバーサルデザインタクシー」として普及が進められています。
これは、健康な方はもちろんのこと、足腰の弱い高齢者・車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の女性など、誰もが利用しやすい“みんなにやさしい新しいタクシー車両”のことを指しています。
もちろん、従来のタクシー同様に街中で呼び止めてもいいですし、予約して利用するのもOKです。
誰もが使える一般のタクシーとして、普及が進められています。
ちなみに、従来の一般車両のタクシーは「セダン型」のものが多いですが、ユニバーサルデザインタクシーの場合は「日産のNV200」などの利用が有名です。
ユニバーサルデザインタクシーの「特徴・メリット」について
最大のメリットは、やはり「一般車両のタクシーを利用することが困難な人でも、乗降・利用がしやすくなっている」という点です。
◆たくさんの荷物を持った方
◆セダンに乗りにくい服装の方
◆入退院の際の移動に困った方
◆車いすの方
◆小さな子ども連れの方
◆妊娠中の方
どんな方でも、利用が可能なのです。
もちろん、「どんな方でも利用しやすいように」と、一般車両にはない以下のような特徴もあります。
全体的にゆとりのある空間が確保できるように設計されており、どんな方でもゆったりくつろぐことができます。
【安全に配慮された乗降口】
人によっては、乗降時や座席の立ち座り時などで転倒してしまう可能性があります。
そのようなことが無いよう(安全確保のため)に、乗降用の手すりが装備されているのです。
また、ドアはスライド式になっていたり、ドアの開閉に連動したステップが装着されていたりと、乗降口と地上の段差がなるべく無くなるような設計になっています。
【安全でゆったりとした車いすスペース】
車いすのままでも乗降できるように、ゆとりあるスペースが確保されています。
加えて、緩勾配なスロープも装備しており、安全でスムーズな乗り降りが可能です。
【広々としたラゲッジスペース】
広々としたラゲッジスペース(※)が用意されており、大きな荷物もラクラク収納できます。
(※荷物を収納するスペースのこと)
「介護タクシー」との違いについて
以前に、「介護タクシー」についてのご紹介記事を公開いたしました。
機能的には両者は似通った部分が非常に多く、実際「車両の設計の違いに明確な差はない」となります。
ユニバーサルデザインタクシーであっても、介護が必要な方も安心して利用できる設計となっています。
では、両者の違いはなんなのでしょうか?
それは、「乗車できる対象者が異なる」という点にあります。
◆誰でも利用が可能である
「介護タクシー」
◆「介護が必要な方」に限定される
(要介護1以上、一人で公共交通機関を利用できない状態にある、など)
介護タクシーの場合、“移動手段”というよりは、“介護保険サービス・訪問介護の一部に含まれるものである”と考えておくといいかと思います。
利用にあたっては、まずは「介護認定」を受ける必要があり、さらに「要介護1以上」に認定されていなければいけません(要支援では利用ができない)。
このことから、好きな時に・好きな目的地に自由に送り届けてくれるものではありません。
対してユニバーサルデザインタクシーは、一般のタクシーのように誰でも自由に利用することができます。
この違いを、しっかりと把握しておくといいでしょう。
「ユニバーサルドライバー研修」とは?
どんな研修なのか?
これは、バリアフリー研修推進実行委員会(一般財団法人全国福祉輸送サービス協会及び一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会)が開発、推進している研修のことです。
タクシー乗務員の「接遇向上」を目的としており、研修を通して以下について学ぶことができます。
◆高齢者の方や障害者の方への介助(車いすの取り扱い、乗降時の介助)方法
など
また、タクシー乗務員の方だけでなく、この研修の「推進」「全国への普及」「定着化」を目指し、講師養成講座も開設されています。
既に全国から多くの受講生が参加していて、専任講師資格の資格取得されている方もいるほどです。
資格取得の方法について
まず、この研修の対象者となるのは「タクシードライバー」の方となります。
受講料は「5,700円(税込)/人(賠償責任保険料含む)」です。
肝心の講座内容ですが、以下のようになっています。
◆タクシーとユニバーサル社会
→時間:50分、研修内容:講義(一部映像)
◆お客様とのコミュニケーション
→時間:30分、研修内容:講義
◆お客様の理解と接遇・解除方法
→時間:250分、研修内容:講義(一部映像)
◆車いすの取り扱い方と乗車・降車
→時間:90分、映像・講義・車いすによる演習
上記の研修終了後に検定試験が各会場にて実施され、合格することで「修了証」が発行されることとなります。
ちなみに、研修当日に修了証に添付する写真を撮影しますので、必ず制服もしくはネクタイ着用でご参加ください。
資格取得の「メリット」について
この研修を修了することによって、一般のお客様はもちろんのこと、高齢者の方や障がい者の方への介助方法が身につきます。
そのため、“対象となるお客様の幅を広げることが可能”となるのです。
冒頭でもお話した通り、超高齢化社会に突入している日本では、今後も高齢者の数は増加していきます。
このますます高齢化が進んでいく中で、役に立つ研修と言っても良いのではないでしょうか。
研修自体も一日で修了できる内容となっており、講義を中心に、映像や演習・実践を交え、分かりやすく且つ楽しく知識を取得することができるプログラム内容です。
研修実施機関であるタクシー会社での受講が可能で、受講できる環境も広がりをみせていることから、タクシードライバーの方にとっては、身近に習得できるスキルアップ方法にもなっています。
まとめ
以上が、「ユニバーサルデザイン」および「ユニバーサルドライバー研修」についてのご紹介となります。
今後もユニバーサルデザインタクシーの普及はどんどん増えていくことかと思います。
この普及が進めば、当然“対応するお客様の幅も広げておく”に越したことはありません。
ユニバーサルドライバー研修を修了することで、健康な方はもちろん、高齢者や障がい者の方の利用にも臨機応変に対応できるようになるため、この研修内容は今後のタクシー業界には必要不可欠なものとなってくるかもしれません。
タクシードライバーになった際には、接遇向上のためユニバーサルドライバー研修をぜひ受講して頂ければと思います。