「自動車整備士」の資格は、1級・2級・3級と等級が分かれており、基本的には3級から順にステップアップして取得していく国家資格です。
各等級の資格を取得することで携われる業務内容が広がり、長く自動車産業界で活躍していくことができるようになります。
そして、上記とは別に設けられた自動車整備士の国家資格が存在します。
それが、「特殊整備士」というものです。
今回は、この資格について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
尚、「自動車整備士」に関しては、別の記事で詳細をご紹介しておりますので、以下を参照ください。
「特殊整備士」とはなにか?
まず、「自動車整備士」とは、自動車が安全に走行できるように点検したり、不具合を修理したりする“自動車のお医者さん”のような存在です。
カーディーラーや民間の自動車整備工場は、いわゆる“自動車の総合病院”のような場所となります。
ただ、病院にも「接骨院」「歯科医院」「耳鼻科医院」など専門分野に長けたところがあるように、自動車整備士にも“特定の分野に秀でた整備士”がいます。
それが、「特殊整備士」という存在であり、関連する資格を取得しなければいけません。
そして、資格を取得できれば、カーディーラーや自動車整備工場だけでなく、タイヤ販売店・板金塗装業・電装部品修理工場など、自動車に関するさまざまな分野で活躍することができるようになるのです。
資格の種類について
特定分野に特化したこの資格は、さらに以下の3つに分けられています。
◆「自動車車体整備士」
◆「自動車タイヤ整備士」
自動車整備士は等級が分かれており(基本的には)3級からステップアップしていきますが、こちらは各試験に合格することで対応する資格を取得することができます。
以下で、それぞれの特徴を解説していきます。
「自動車電気装置整備士」について
特に近年は、「ハイブリッド自動車」や「電気自動車」の数が増加しています。
また、一般的なガソリンエンジン車であってもコンピュータ制御で動くようになっており、電気に関する知識は必要不可欠です。
このことから、現代の自動車を整備するには、電気系統に特化した知識や技術が求められることとなるのです。
この資格は、電気系の部品の装備や、電子制御によって動作する箇所を点検・整備する際に役立つ資格です。
そのため、特殊整備士資格の中でも、今後さらに業界で必要とされる資格の一つであるといえるのです。
「自動車車体整備士」について
これは、自動車の車体(ボディやフレーム部分)の点検・修理・整備に秀でた知識や技術を持っていることを証明する資格となります。
板金塗装は、無資格でも作業を行うことはできます。
ただ、資格を所持していることで知識や技術の向上に役立てることができますし、お客様からより安心感や信頼感を得ることもできます。
「板金塗装の仕事を極めたい」という人にとって、役立てられる資格といえるのです。
「自動車タイヤ整備士」について
これは、タイヤ交換作業だけでなく、タイヤに関するさまざまな技術や知識を習得したことを証明するための資格となります。
素人目に見れば、自動車のタイヤはすべて同じように見えるかもしれません。
しかし、メーカーによって性質は異なりますし、同メーカーであってもグレードによって乗り心地は大きく変化します。
また、お客様の立場からみても、自動車使用状況やタイヤ購入の予算は人それぞれで異なります。
点検・問診などを行い、適切なタイヤをお客様に提供するのも、大切な仕事の一つとなるのです。
ただし、この資格の最後の試験が行われたのが2000年(平成12年)であり、もう20年以上試験が実施されていません。
この理由には、以下2つが挙げられます。
◆自動車整備士資格でタイヤについての知識を学べること
受験者募集を再開する予定も、今のところはないとされています。
とはいえ、昨今はタイヤに関する事故も多く取り上げられるようになってきたため、タイヤ整備の重要性も見直されています。
もしかしたら、今後注目される資格となるかもしれませんので、情報収集はしっかりと行っておいた方がいいかと思います。
資格の取得方法について
資格を取得する方法は、“受験資格を得たのちに、試験に合格する”ことです。
この項目では、資格の取得方法などについて、解説をしていきます。
「受験資格」を得る方法は?
受験資格は、所持している資格や経験によって分かれています。
まとめると、以下の通りです。
受検資格:自動車整備業務に従事し、2年以上の実務経験を積むこと
●自動車整備系の学校に通い、2級整備士課程を修了した人
受検資格:1年以上を実務経験を積むこと
●自動車整備系の学校に通い、特殊整備士課程を修了した人
受検資格:実務経験なしで受験が可能
無資格でも取得できるの?
上記に記載した通り、自動車整備や機械工学系の学校に通っていない人でも、実務経験を積むことで受験資格を得ることはできます。
そのため、(実務経験さえ積めば)理論上は無資格でも資格を取得することができます。
ただし、この資格だけでは、整備業務を行うことはできません。
整備・分解を単独で行うためには、2級自動車整備士以上の資格が必須となるのです。
そのため、無資格でカーディーラーや自動車整備工場に入社した場合、自動車整備士の取得が優先されることとなります。
この資格は、あくまで「整備士としての更なるキャリアアップを図るもの」という面が強いため、取得優先度は自動車整備士の方が高くなってしまうのです。
さらに、“就職して実務経験を積む=試験勉強は独学で行う”ことが多くなると思います。
独学で勉強し試験に臨む場合、3級自動車整備士であっても合格率が低くなってしまいます。
働きながらの取得となるため、さらに取得への道は困難となるでしょう。
このことから、「特殊整備士資格は無資格で取得することはできなくはないが、取得優先度は落ちてしまう」こととなるのです。
「試験内容」と「試験難度」について
上述の受験資格を満たしたうえで、「自動車整備技能登録試験」を受け・合格することで、資格を取得することができます。
(試験は、「国土交通大臣の登録を受けた登録試験実施機関」または「国土交通省が行う検定試験」で受検が可能)
この試験には、「学科」と「実技」が設けられており、出題される内容は以下の通りです。
◆構造、機能及び取扱い方法
◆点検、修理、調整及び完成検査の方法
◆整備用機械に関する初等知識
◆整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法
◆材料の性質及び用法
◆図面に関する一般知識
◆保安基準その他の自動車の整備に関する法規
≪実技試験≫
◆基本工作
◆点検、分解、組立、調整及び完成検査
◆修理
◆整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
出題内容は、基礎的な知識があれば回答できるものが中心となっており、合格難度はそれほど高くないとはされています。
とはいえ、なんの勉強もなしに合格できるほど易しいものではないので、過去問題集などを活用して、しっかりと試験対策をしておくことをオススメします。
資格を取得するメリットとは?
極論をいうと、この資格を所持していなくても、業務に支障がでることはありません。
やはり優先されるのは「自動車整備士」の方であり、特に2級の取得が最優先となります。
(2級を取得すれば、自動車の整備に関しての業務全般を実施できるようになる)
ここまでに何度かお伝えした通り、この資格は「自動車整備士としての更なるキャリアアップを図るもの」なのです。
ただ、資格を取得できれば、自動車に関する知識・技術があらゆる面で豊富となるため、“業務を行っていく”上でも“お客様の安心感を得られる”という面でも役立てることができるのも確かです。
特に「自動車電気装置整備士」は、仕事の幅を広げるという点で、今後も重宝される資格となるでしょう。
また、特殊整備士は国家資格であり、取得していれば就職・転職面でも役立てることができるはずです。
自動車整備工場に一定数の特殊整備士の資格を持っている方がいれば、国から「優良自動車整備事業者」という認定を受けることができるようになります(審査に合格する必要はある)。
企業側としても、特殊整備士の入社は大きなメリットとなるのです。
取得優先度は自動車整備士資格より下がるものの、“キャリアアップし就職や転職に活かせる”という点で、取得しておいて損のない資格であるといえるのです。
まとめ
専門性の高い資格を取得するということは、今後のキャリアにおいて非常に有利な要素となります。
資格を取得することで、整備士業務の幅がさらに広がる可能性が高まるので、関心がある方はぜひ資格取得を目指してみてください。
ただ、この資格は「自動車整備士」を持っていてこそ意味のある資格であるといえます。
優先度は自動車整備士の方が高くなるため、資格を取得する順番にはお気を付けください。