重機を扱う仕事の一つに、「クレーン・デリック運転士」というものがあります。
これは、人の手では移動が困難な資材や荷物を「重機」を操作して吊り上げ・下げを行う作業のことをいうのです。
この免許には、いくつかの種類があります。
今回は、この「クレーン・デリック運転士」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「クレーン・デリック運転士」とはなにか?
労働安全衛生法に定められた「国家資格」である
まず、「クレーン・デリック運転士」とは、「クレーン」および「デリック」を扱う職業についている人もしくは関連する資格(免許)のことを指しています。
これは、「労働安全衛生法」に定められた国家資格の一つであり、試験に合格することで免許の交付を受けることができます。
尚、この免許は旧来の「クレーン運転士」と「デリック運転士」の免許を統合してできたもので、2006年4月1日から新設されています。
旧来の免許を所持(デリック運転士免許のみは除く)していれば、本免許を受けているものとみなされます。
そして、本免許を取得することによって、「5t以上の荷物を運べる、各種クレーンやデリックを操作することが可能」となります。
そもそもクレーンは、資格・免許を取得している人でなければ運転することができないので、本免許を取得する人も多いと言われています。
なぜ「免許」が必要なのか?
「クレーンやデリックで業務を行う=人の手では動かせない重いor大きい物を扱う」こととなります。
重い・大きな物を扱うことから、一つのミスが大事故につながる恐れもあります。
周囲を注意深く確認し、事故が起きないように気を付けて作業することが求められる=「危機管理能力」が求められる仕事なのです。
だからこそ、免許取得を通して、クレーンやデリックの正しい扱い方を学ぶ必要があるのです。
「クレーン」と「デリック」の違いは?
どちらも「人の力では動かすことができない荷物を扱う」ために必要となる機械であり、両者は混同されてしまうこともあります。
そもそも、両者は全く異なる安全規制が定義されているため、構造以外の部分も異なります。
また、分かりやすい違いを挙げるとすると、「動力装置の有無」があるでしょうか。
クレーンの場合は、“単体の力”で荷物を吊り上げます。
それに対してデリックは、「甲板にあるウインチ(巻き上げ機)」の力で吊り上げることとなります。
加えてもう1つ。
クレーンは、吊り上げた荷物を水平に移動することができます。
しかし、デリックの方は、水平移動できるタイプとできないタイプがあります。
また、どちらにも共通していえることですが、「玉掛け」を行う場合は、別途「玉掛け技能講習」を受けて、知識を学ばなくてはいけません。
クレーンにしろデリックにしろ、荷物を掛け外しするための「フック」が先端に付いています。
このフックに荷物を掛け外しすることを「玉掛け」というのですが、玉掛けを行うには専用の講習(玉掛け技能講習)を受けなくては従事することはできないのです。
もちろん、玉掛け資格を所持していても、「クレーン・デリック運転士」などの資格を所持していなければ、運転することはできません。
このように仕事に従事するためには、複数の資格を所持していなくてはいけないので、若干の注意が必要となります。
免許の「種類」について
はじめに
上項でもご紹介した通り、操作するためには、“各機体の種類・特徴に応じた資格”を持っていることが条件となります。
その資格は、以下の4つが該当します。
②「クレーン・デリック運転士 クレーン限定」
③「クレーン・デリック運転士 床上運転式クレーン限定」
④「移動式クレーン」
「クレーンやデリックの運転士になりたい!」と考えている人は、就職や転職の際に「どの免許が必要となるのか?」をしっかりと確認しておくことをオススメします。
ちなみに、免許を取得するための受験資格というものは、特段存在しません。
18歳以上+身分証明書があれば、誰でも取得することができます。
以下より、各資格について、捕捉を加えていきましょう。
資格①:「クレーン・デリック運転士 限定なし」
“限定なし”と記載されている通り、吊り荷5t以上が対象となる「クレーン」「デリック」両方の運転資格を得ることができます。
どちらも操作できることから、重宝されやすい傾向にあり、優先的に取得した方がよい資格といえます。
ちなみに、冒頭で「2006年に、クレーン運転士とデリック運転士の資格は統合された」と記載をしましたが、統合後でもクレーン単体のものは残っています(後述で紹介する資格)。
しかし、“デリックのみ”という免許はありません。
資格②:「クレーン・デリック運転士 クレーン限定」
“クレーン限定”と記載されている通り、この資格だけでは「デリック」に関する扱いは不可能となります。
“クレーンのみ操縦が可能”で、5tを上回るタイプの機体を扱うことができます。
ただし、クレーンのみといっても、工場・建設現場・土木作業など活躍の場は多岐に渡ります。
そのため、現場作業員などに就職・転職を考えている人にとっては、非常に心強い資格となります。
資格③:「クレーン・デリック運転士 床上運転式クレーン限定」
“床上”と記載されている通り、これは「床の上で機体をコントロールするための資格」となります。
上記2つの資格とは異なり、「天井式」などの“床から離れた状態のクレーン”を扱うことはできないのです。
ただし、対象は“吊り上げ荷重5tを超えるタイプを扱える”こととなります。
ちなみに、「無線操作タイプ」も対象外です。
(作業員がコントローラを持っている状態に限る)
操縦できるクレーンが限定されるため、上記2つに比べると、業務の幅は狭まってしまうかと思います。
資格④:「移動式クレーン」
最後は、「吊り上げ荷重5t以上の”移動式クレーン”を操作できる」資格となります。
また、これも「労働安全衛生法」に定められた国家資格の一つであり、学科・実技の試験に合格することで免許の交付を受けることができます。
移動式クレーン車はその種類が非常に多いため、「クレーン・デリック運転士 限定なし」と合わせて取得すれば、業務の幅を非常に広げることが可能となります。
ただし、あくまで「移動式クレーンの操縦技術を学ぶための資格」であるため、公道(一般道路)を走行する場合は、対象となる「運転免許」を別途所持していなくてはいけません。
この「移動式クレーン運転士」については、以前に別の記事にてご紹介しておりますので、以下にリンクを貼っておきたいと思います。
クレーン・デリック運転士の「試験内容」について
概要
まず、試験内容は「学科」と「実技」が設けられており、以下のようになっています。
① クレーンに関する知識(10問)
② 関係法令(10問)
③ 原動機及び電気に関する知識(10問)
④ クレーンの運転のために必要な力学に関する知識(10問)【受験料】
◆6,800円
【合格基準】
◆総得点が、満点中60%以上の得点率
◆各科目が、満点中40%以上の得点率
※上記すべての条件を満たすこと※
≪実技≫
① クレーンの運転
② クレーンの運転のための合図
【受験料】
◆11,100円
【合格基準】
◆減点の合計が40点以下
尚、一定の条件を満たすことで、学科試験の一部および実試験が免除となる場合があります。
また、受験日程は「月に1回程度」であり、受験地は「管轄住所のセンターで受験」することとなります。
条件は、取得している資格や実務経験によって大きく異なりますし、受験日程も地域によって異なります。
気になる方はホームページを確認してみてください。
「合格率」や「難易度」について
令和3年度の近年の合格率については、以下のようになっています。
◆受験者数:12,548人
◆合格者数:7,235人
◆合格率 :57.7%
≪実技≫
◆受験者数:1,730人
◆合格者数:839人
◆合格率 :48.5%
※移動式クレーン運転士免許については、【前回の記事】を参照ください※
学科に関しては“約60%”の推移となっているため、他の国家資格に比べれば、比較的難易度は抑えめです。
過去問・参考書・試験対策本などを駆使すれば、独学でもなんとか合格できるレベルではないかと思います。
ただ、実務は“50%弱”と、学科試験よりも難度が高くなっています。
その理由の一つは、「クレーン・デリックを操縦(練習)できる環境がない(少ない)」ことが挙げられます。
とはいえ、一般の自動車教習所と同じく、クレーン・デリックの運転技術を学ぶための「教習所」や「クレーン専門の学校」などが存在します。
費用こそ掛かるものの、スムーズに進めば卒業まで“10日間”ほどとなるので、それほど時間を取られることもありません。
「できるだけ費用を抑えたい」「すぐにでも資格を取得したい」と考える人も多いとは思います。
しかし、だからといって“一発試験”に臨んでも、実務経験が浅い人では合格は非常に難しいかと思います。
「急がば回れ」
実務経験がある人ならばともかく、経験がない(浅い)人は、できる限り教習所に通って実技や学科の勉強をすることをオススメいたします。
まとめ
以上が、「クレーン・デリック運転士資格」に関する情報となります。
関連する資格……特に「クレーンデリック運転士 限定なし」や「移動式クレーン運転士」の資格を取得すれば、業務の幅が大きく広がるため、「クレーン・デリック運転士として長く仕事をしたい」という人は、この資格を必ず取得しておいた方が良いかと思います。
人によっては、「国家資格だから難しいのでは……?」と、なかなか試験に踏み切ることができない人もいるかもしれません。
しかし、教習所や専門の学校に通うことで、実務未経験や経験が浅い人であっても、十分合格を目指せる難易度かとは思います。
“国家資格+専門職”であるという点から、資格を取得すれば長くこの仕事を続けることもできるでしょう。
関心がある方は、ぜひ知見を広げて、資格(免許)取得に向けて、その一歩を踏み出してみてください。
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