前回の記事では、「バス運転手のなり方・必要な資格」についてのご紹介をさせていただきました。
バス運転手は、「普通自動車運転免許(※)」を所持していれば、未経験でも採用される可能性があります。
(※実際に業務に携わるには、最終的に「大型二種自動車免許」を取得する必要がある)
また、バスは公共交通機関の要の一つであり、今後もその需要は確かに存在するため、「バスの運転手になりたい!」と考える人も一定数いらっしゃいます。
しかし、
◆募集している「雇用形態」は?
◆一日の働き方はどうなっているの?
など、気になる点も多いかと思います。
今回は、「バス運転手の収入」「雇用形態」「働き方」について、詳しくお話をしていきたいと思います。
「給与」や「雇用形態」について
お給料はどのくらい?
まず、給与の面からご紹介をしていこうと思います。
結論から言うと、バス会社は全国各地に存在し、勤め先の企業や自身の勤務年数・経験・年齢などによってその数値は千差万別となります。
ただ、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」にて、平均給与は公開されています。
それによると、令和3年度の給与は以下のようになっています。
◆勤続年数: 11.7年
◆労働時間/月: 161時間/月
◆超過労働: 25時間/月
◆月額給与: 284,900円
◆年間賞与: 620,500円
◆平均年収: 4,039,300円
出所:厚生労働省「令和3年度 賃金構造基本統計調査」
他職種と同じく、給与額は年齢や経験が増えるごとに上がっていくのが一般的とされています。
また、上記でお伝えした通り、勤務先の規模や地域によっても給与額は変化し、地方より都市部・小規模な会社より大手の方が給与額は高くなる傾向にはあります。
そのため、平均年齢53歳で月給が284,000円というのは、他職種に比べると少々給与額が少ないと言えます。
特に、20代のうちは年収が200万円後半~300万円ほどの人が多く、月収にすると250,000円弱となることが多いようです。
給与に関しては、「年齢や経験とともに昇給していく可能性はあるが、若いうちはそれほど稼げない」という認識でいた方がいいかもしれません。
もちろん、企業によって給与額はさまざまなため、金額が気になる方は求人募集の給与欄をしっかり確認し、不明点があれば相談するようにしましょう。
「繁忙期」と「閑散期」について
“路線バス”の場合は気にすることはないのですが、“観光バス”の場合、一つ注意しておくべきことがあります。
それが、「繁忙期」と「閑散期」です。
観光バスがあまり利用されることが少ない「閑散期」の場合、乗務の仕事が少なく営業所で待機する日も多くなってしまいます。
その場合は、(もちろん企業によりけりだが)給与が下がってしまう可能性もあります。
これについても、求人の応募要件をしっかり確認したり、不明点があれば面接の際などに質問してみるといいでしょう。
「雇用形態」の種類は?
次に「雇用形態」についてですが、これも企業や求人募集内容によってさまざまです。
「正社員」として募集をしているところもあれば、(人件費削減のため)「契約社員」「嘱託社員」「アルバイト」などで募集をかけることもあります。
ただし、バス運転手は基本的に「アルバイト」で人を雇うことはありません。
その理由は、以下の2点が挙げられます。
◆大人数の命を預かる仕事であるため、アルバイトとして軽率に雇うことができない
ただし、観光バスの場合は、繁忙期に短期的にアルバイトを採用することもありますし、小型バス(マイクロバス)のような「大型二種免許を必要としないバスの運転手」の場合は、アルバイトで募集をかけているところもあります。
(幼稚園や養護・老人施設、社員の送迎など)
とはいえ、「バス運転手=利用客の命を預かる仕事」であることに間違いはありませんので、どんな雇用形態であっても相応の責任はかかってきます。
「アルバイトだから楽」「正社員だから厳しい」ということはありませんので、その点は注意しておいてください。
バス運転手の「働き方」について
次に、バス運転手の「働き方」について、詳しくご紹介していきたいと思います。
「バス」と一口に言っても、さまざまな種類が存在します。
大きく分けると「路線バス」「貸切バス」の2つでしょうか。
それぞれで働き方は異なりますので、各々ご紹介していきます。
「勤務時間」について
「路線バス」の場合
こちらは、「早番」「遅番」「夜番」の3交代制で働くことが一般的となります。
勤務スケジュールはあらかじめ決まっており、1時間半~2時間程度の運転と小休憩を繰り返していくこととなるのです。
当然、日によって勤務時間(出退勤時間)が異なるため、生活リズムは若干狂いがちになると言えるでしょう。
ただし、路線バスは基本的に「ダイヤに沿って運行をする」こととなります(始発と終発の時間も決まっている)。
そのため、貸切バスに比べると、まだ規則的な生活は送りやすいかと思います。
「貸切(観光)バス」の場合
こちらの場合、利用者の旅程によって勤務時間が変わるため、かなり不規則な生活となります。
日帰りで仕事をすることもありますし、遠方へ出かけて宿泊となるケースもあります。
加えて、旅行=高速道路を利用することも多く、夜に出発して深夜の時間帯を走り続け、早朝に目的地に到着……ということも少なくありません。
遠距離の場合は複数の運転手が後退しながら走ることにはなりますが、路線バスの運転手とは働き方そのものが大きく異なるという点には注意が必要かと思います。
加えて、「ツアーごとに運転する場所が異なる」という点も、路線バスとは違う特徴として、理解しておくといいでしょう。
「休日」について
これも企業や運転するバスによって異なりますが、休日は4週8休となることが基本です。
ただし、要注意点は「シフト制」であるということ。
路線バスでも貸切バスであっても、バスは土日祝関係なく動くこととなります。
そのため、運転手の休みは不規則であり、平日に休みとなることも多いのです。
ちなみに、会社によっては「有給休暇」「夏季・冬季休暇」「慶事休暇」「育児・介護休暇」なども設けられていることがあります。
ただ、(特に有給休暇は)繁忙期などで取得するのは難しいかと思います。
“残業”ってあるの?
路線バスでも貸切バスでも、基本的には事前に決められた時間帯の中で運転をすることとなります。
ただし、道路の混雑状況によっては残業しなくてはならないこともあるため、基本的には「残業はあるもの」として日々勤務をした方がいいかと思います。
道路状況は日によって全く異なります。
特に貸切バス(日帰り観光ツアーなどは特に)の場合は、休日であることも多く、渋滞に巻き込まれて帰りがかなり遅くなることもあります。
“夜勤”ってあるの?
路線バスの場合は、運行ダイヤが決まっており、“残業”こそ発生する可能性はあれど“夜勤”というものは原則存在しません。
ただし、貸切バスの場合は夜中に高速道路を走る場合なども多く、夜勤が発生する可能性は多いにあり得ます。
後は、夜行バスなど。
不規則な生活になりがちではありますが、“夜勤=深夜手当が付いたり・拘束時間が長く給与面の待遇が良い”などの理由で、(収入アップのために)自ら夜勤を希望する運転手も多いのです。
尚、夜勤をするかどうかは「どのバスを運転するのか?」で、求人探しの時点で絞り込むことは可能です。
◆「収入アップのために、深夜帯も働きたい!」
など、路線バスか貸切バスかで働き方はある程度変えることができますので、希望する働き方ができる求人を探すのが良いかと思います。
一日の流れはどんな感じ?
次に、一日の仕事の流れをご紹介しておきたいと思います。
観光バスであれ路線バスであれ、出勤時には以下のことから始めていきます。
◆アルコール検知器によって、飲酒検知を行う
◆免許証の携帯確認・体調の良し悪しなどの確認を行う
◆鍵や携帯電話、路線バス運転手であれば金庫など、必要な荷物を受け取る
◆車両点検を行う
いずれも安全に乗客を目的地まで運送するために必要不可欠なことです。
ちなみに「車両点検」についてですが、点検するのはタイヤの空気圧やランプ類の点灯、ブレーキ液量など、”車両点検表”に書かれた50項目以上のものを確認することとなります。
これは、特に安全運転を行う上で欠かせない業務の一つであり、出勤時には毎回必ず確認を行います。
その後は、運行管理者と一緒に指差呼称を行い、運転時間表を受け取ったのちに出発します。
そして、業務が終了して営業所へ戻った後は、以下の作業を行います。
◆(安全管理のために)車体に傷や汚れがないかの確認をする
◆運行後の飲酒検知を行う
◆運転日誌に、その日の業務内容を記載する
最後に、運行管理者との終了点呼をした後に鍵などを返却し、業務は終了となります。
これが一日の主な流れです。
ただし、あくまで基本的なご紹介とはなりますので、勤務する企業や乗務するバスによって、業務内容に若干の違いは出てくるかと思います。
当然のことではありますが、業務内容に関しては、各企業の支持に従って行動してみてください。
まとめ
以上が、バス運転手の「給与」「雇用形態」「働き方」などのご紹介となります。
バス運転手の仕事は、「交代制」や「夜勤」などもあって、基本的に“不規則な生活”になりがちです。
また「長時間の運転を行う必要がある」という点や「乗客の命を預かる仕事」でもあることから、バスの運転は非常に神経を使います。
その仕事内容に比べると、給与は低めに設定されていると言われており、現場からは若干不満の声が漏れているようです。
人によっては比較的早くに現場を離れてしまうこともあり、総じて「バス運転手の人手不足」が問題となっています。
ただし、バス会社は全国各地に存在し、地域や会社によって労働環境は大きく異なります。
もし「これからバス運転手として働きたい!」と考えている人は、就職前に多くの会社の情報を仕入れ、面接なども活用しながら会社の雰囲気や給与・待遇などを良く調べておいた方が良いかと思います。