トラックドライバーは、日夜さまざまな荷物を運んでいます。
そして、その中には「危険物」を運搬しているドライバーもいるのです。
化学物質のような危険物を運搬・移送する場合は、各種運転士の免許とともに「関連する危険物の免許」を所持していなくてはいけません。
なぜなら、運搬・移送時に物質の危険性を知っておくと同時に、いざ何かあったときに取るべき処置についての知識が必要となるからです。
そして、その危険物の資格の中に、「高圧ガス移動監視者」というものが存在します。
今回は、この資格の概要・取得条件・合格率などについて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「危険物」にもさまざまな種類が存在する
「危険物」と一口にいっても、その種類や人体への影響にはさまざまなものがあります。
例えば、「引火性」があったり、「水に触れると激しく反応する」など……。
その性質は、物質によって異なることとなります。
このことから、危険物は“危険性”や“性質”ごとに分類され、法律によってそれぞれの取り扱いなどが細かく取り決められているのです。
危険物といえば、「ガソリン」「灯油」などをイメージする人も多いかと思いますが、それだけではありません。
今回ご紹介する「高圧ガス」や、「毒劇物」「放射性同位元素」などの化学物質も危険物とされ、輸送の際にはそれぞれ法律の規制を受けることとなります。
尚、危険物の移送・運搬に欠かせない資格といえば、以下が挙げられます。
◆「高圧ガス移動監視者」
「危険物取扱者」については、以前に別の記事で詳細をご紹介しておりますので、以下を参照ください。
では、以下より「高圧ガス移動監視者」についてのご紹介を進めていきましょう。
「高圧ガス移動監視者」とはなにか?
概要
この資格は、タンクローリーやトラックなどの車両で「規定量以上の高圧ガスを積み、安全に運搬する」ために必要な国家資格のことです。
以下の種類・量のガスを移動させるには、“有資格者の監視”が義務付けられているのです。
◆容積300㎥以上の可燃性ガス・酸素、容積100㎥以上の毒性ガス
【液化ガス】
◆質量3,000kg以上の可燃性ガス・LPガス・酸素
◆質量1,000kg以上の毒性ガス
◆圧縮水素スタンドの液化水素の貯槽に充填する液化水素
【特殊高圧ガス】
◆数量に関わらず、有資格者による監視が必要
資格を取得する条件とは?
「国家資格=取得難度が高い」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、この資格に関しては、それほど取得難度は高くありません。
取得するための方法は、「高圧ガス移動監視者講習」を受講し、終了後の検定試験に合格するだけです。
講習は2日間(14時間)で行われ、習得する知識・技術は以下となります。
◆高圧ガス保安法に係る法令(3時間)
【学識・保安管理技術】
◆高圧ガスの移動に必要な学識および保安管理の技術(11時間)
ちなみに、受講は“年4回”ほど開催されます。
(全国10か所程度で開催予定)
受講料は、「15,800円(液化石油ガスは14,900円)」となります。
試験に申し込むためには、各地域にある「高圧ガス関係団体」のホームページを確認してください。
もちろんホームページから試験の応募が可能であり、ネットで簡単に応募することが可能です。
合格率・注意点は?
この資格は、2日間の講習と修了考査(検定試験の合格)で取得が可能です。
そして、肝心の合格率は「88%」ほどとなっており、しっかりと講習を受ければ、比較的取得難度は易しい方かとは思います。
ただし、「高圧ガス(危険物)を扱う」という点は、しっかりと念頭に置いておいた方が良いことは事実です。
安全に輸送するためには知識と技術が必要であることは間違いありませんし、法律に基づいて監視・管理を行わなければいけません。
そもそも知識や技術が身に付いていないと安全に管理することはできませんし、専門の資格がなければ取り扱いが難しいほど危険なものなのです。
“取得難度が易しい”といっても、“誰にでも簡単に扱えるものではない”ということは意識しておかなくてはいけません。
誰にでも扱えるものであるならば、そもそも国家資格として存在していないはずなのですから……。
また取り扱いは法律で定められていますし、それが守れていなければ法律違反にもなります。
業務をおこなう上では知識と技術が必須となりますので、講習を通してしっかりと身に付けておく必要があるのです。
上記の通り、講習は2日間(14時間)行われますので、その間にしっかりと知識を身に付けておきましょう。
ちなみに、筆記試験の合格基準は「正解率60%以上」となっています。
試験の問題数は20問あり、それを90分以内に回答する必要があります。
制限時間に対して問題数はそれほど多くはありませんので、(時間配分は考えつつ)一問一問しっかりと回答していきましょう。
どういう人にオススメの資格なのか?
この資格は、「高圧ガス(可燃性ガス、酸素、毒性ガス、LPガスなど)」を輸送するために必須の資格となります。
そのため、以下のような人に取得をオススメできる資格となります。
◆ガス業界やエネルギー業界で働きたい人
「トラックなどのドライバーの仕事をしている」
「将来的に、トラックドライバーとして働きたい」
「ガスやエネルギー業界で働きたい」
こういう人にこそ必要となる資格であるため、関心がある方は、ぜひ積極的に資格取得に向けて動き出してみてください。
「高圧ガス移動監視者」の需要・将来性について
上項でも記載した通り、高圧ガスの輸送には必須となる本資格……。
輸送の際には本資格所持者の同乗が義務付けられているため、有資格者に対するニーズは高く、給与や待遇面での優遇措置もあります。
そもそも、この仕事は「人手不足」も問題視されているのが現状です。
そのため、需要は確かに存在し「ドライバーになりたい!」という人にとっては優先的に取得すべき資格といえるのではないでしょうか。
高圧ガスも、人々の生活の中で重要な要素の一つとなります。
また、こういった「危険物の輸送」というのは、“機械による自動化”というものが難しくもあるのです。
なぜなら、「危険物を安全に輸送する」ことはもちろん、「何かあった際に適切な対応を取る」ことも、“人だからこそできること”だからです。
“車の自動運転”が取り沙汰されている時代ではありますが、自動運転を行ったとしても運転手は同乗しなければいけません。
危険物の輸送ともなれば、なおさら資格所持者の同乗が必須となってくるのです。
そのため、この仕事は人にしか行うことはできません。
そういう意味でも、需要も将来性も抜群にある仕事かと思いますので、関心がある人は資格取得に向けて動き出しても良いかと思います。
まとめ
以上が、「高圧ガス移動監視者」についてのご紹介となります。
高圧ガスは、タンクやボンベへの強い刺激で爆発したり、毒性ガスが漏えいしたりする危険性がありますので、取り扱いには細心の注意が要求されます。
そのため、輸送の際には必ず資格所持者の同乗が義務付けられています。
資格そのものは比較的取得しやすくはなっていますので、「関心がある」や「キャリアアップを目指したい」という方は、資格取得に向けて一歩踏み出してみるのも良いかと思います。
ただし、免許・資格というのは、「ただ所持していればいい」という訳ではなく、「知識・技術を深め、いざという時に発揮できる」ようにしておかなくてはいけません。
危険物質の中には、ひとたび事故が起きてしまうと、二次災害・三次災害へとつながり、被害がどんどん大きくなってしまうものもあるのです。
例えば“引火性”と“毒性”を同時にあわせ持つ物質だとしたらどうでしょうか。
ひとたび事故などで漏えいしてしまえば、引火と人体への被害の両方が考えられ、深刻な被害になることは想像に難くないでしょう。
だからこそ、資格を取得し、「危険物に関する、確かな知識と技術を有しておく」必要があるのです。
資格の取得難度は確かに易しめに設定されているかもしれません。
しかし、「国家資格=国に認められている資格」となっているからには、その重要性が(国にも世間一般にも)認められている証拠でもあるのです。
いざという時に適切な対応が取れるように、そして何よりも「危険物を輸送している」という自覚と責任感を持って、常日頃から安全運転を心がける意識が欠かせないのです。