タイヤは消耗品であり、走行時の摩擦で少しずつすり減ってしまいます。
理想は全体的に満遍なくすり減っていくことではありますが、さまざまな理由によって摩耗の仕方は変わります。
今回は、この「摩耗」、そして摩耗の一種である「偏摩耗」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「偏摩耗」とはなにか?
車は、タイヤと路面の間に“摩擦”が生じることで、走ったり・止まったり・曲がったりすることができます。
そして、それに伴いタイヤは徐々に“摩耗”していきます。
タイヤは、常に地面との摩擦にさらされているため、走行距離が長くなるほどに消耗します。
加えて“ゴム”でできていることから、紫外線・熱・水分などの外的な要因によっても劣化が進んでしまい、余計に摩耗が進行しやすくなるのです。
ただし、タイヤは必ずしも均一に摩耗していくわけではありません。
道路の状況・ドライバーのクセ・空気圧・メンテナンスの頻度など、さまざまな理由によって前後左右にあるタイヤそれぞれ摩耗の仕方が変わるのです。
そして、一部のタイヤだけが極端に偏って摩耗してしまうことを「偏摩耗(へんまもう)」または「異常摩耗」というのです。
タイヤが摩耗するとどうなるの?
タイヤの摩耗が進行していくと、「”わだち”にとらわれやすくなる」と言われます。
この”わだち”とは、車の通ったあとに残る車輪の跡のことをいい、例えば「ぬかるみに”わだち”がつく」といったような使い方がされます。
タイヤは、摩耗が進むと接地面が横に広がっていき、そして接地面が摩耗していくと接地面積が大きくなっていく+タイヤの角が立っていくこととなります。
「角が立つ=”わだち”にとらわれやすくなる」(正確には”わだち”から抜け出しにくくなる)のです。
「”わだち”にとらわれやすくなったな……」と感じたら、タイヤの摩耗が進んできた合図と認識すると良いです。
そして、「摩耗する=溝がすり減っていく」ということであり、排水溝化や摩擦力の低下に大きく作用することとなります。
つまり、“スリップを招く原因となる”のです。
雨や雪の日はスリップによる事故が増える傾向にありますが、これは路面の水をかき出す効果のある溝が減っていることによって自動車が路面から浮き上がってしまい、水の上を滑ってしまうためです。
この現象のことを、「ハイドロプレーニング現象」といいます。
ハンドル操作やブレーキが効かなくなり、一時的に制御不能な状態に陥るので、タイヤの消耗には十分注意しておくことをオススメします。
尚、「タイヤの寿命」や「スリップ」については、以前に別の記事にてご紹介しておりますので、以下を参照ください。
タイヤを摩耗させる原因とは?
タイヤの摩耗具合は、使用頻度や環境によってことなりますが、概ね以下の4つに大別することができます。
②「車の状態」
③「走行の状態」
④「道路の状態」
それぞれ、順に補足を加えていきます。
摩耗の原因①「タイヤの状態」
もっともタイヤを摩耗させる原因となるのは、「空気圧が適正でない」ことです。
空気圧が適正に保たれていないと、最適な接地状態ではないまま走行することとなるため、タイヤへの負荷がかかりやすく・接地面が摩耗しやすくなります。
空気圧が高すぎても・低すぎても問題で、車種やタイヤに合った適正の空気圧を保つ必要があります。
「空気圧」については、以下の記事にて詳細をご紹介しておりますので、参考にしてみてください。
尚、タイヤによっては、性能維持のために摩耗しやすいゴムを使用している場合もあります。
その場合、通常よりも摩耗スピードが速くなる傾向にあるので、注意しておきましょう。
摩耗の原因②「車の状態」
車は、前後左右にある4本のタイヤによって支えられています。
当然、車が重くなればなるほどタイヤの接地面が広くなり、重量がある分だけ強い摩擦を受け止めることになります。
つまり、“重ければ重いほどタイヤが摩耗しやすくなる”のです。
車には「最大積載量」が定められていますが、これを超えて荷物を積んだりしていると、それだけ早くタイヤが摩耗していくこととなります。
特に、旅行時や帰省時などの荷物や乗車人数が増えるタイミングは要注意です。
「バースト(破裂)」などの危険性も高まるため、十分に注意しておきましょう。
※「バースト」については、以下記事を参照ください※
摩耗の原因③「走行の状態」
急ブレーキや急発進をすると、いつも以上にタイヤの接地面に強い不可が加わることとなります。
このような急制動を頻繁に行っていると、摩擦が加わる回数が多くなってしまい、結果としてタイヤの摩耗スピードを速めてしまいます。
あとは、高速道路の走行機会が多い人も要注意です。
タイヤの接地面が広い上に、発熱している時間も長くなってしまうため、通常走行時よりも摩耗が進行しやすくなります。
摩耗の原因④「道路の状態」
路面状態が悪い道を走行する場合、タイヤの部分的な摩耗が生じやすくなります。
後は、真夏の炎天下での走行も要注意です。
路面が発熱しているためゴムが軟化しやすく、路面との摩擦の影響を受けやすくなってしまいます。
「偏摩耗」はなぜ起こるのか?
タイヤというのは必ずしも均一に摩耗していくわけではありません。
「一部のタイヤが極端にすり減ってしまう=偏摩耗」ですが、この原因となるのは、主に以下の3つです。
②「アライメントのズレ」
③「運転の仕方」
①は上記でご紹介した通りであり、空気圧が適正に保たれていないタイヤほど最適な接地状態ではないまま走行するため、タイヤへの負荷がかかりやすくなってしまいます。
②の「アライメント」というのは、ホイールの取付け角度のことであり、これが崩れると偏摩耗を引き起こす原因となってしまいます。
ホイールアライメントが狂う要因となるのは、主に「走行中に受けた強い衝撃」「縁石に乗り上げた場合の影響」「事故」などが挙げられます。
最後に③ですが、運転の仕方によっても偏摩耗が起こりやすくなります。
例えば、カーブを曲がるときはタイヤが地面にこすられるような形となるため、本来であればできる限りスピードを落とす必要があります。
しかし、速度が高いまま曲がってしまうと、タイヤの外側に重さが集中してしまうために片減りの原因となってしまうのです。
他にも、急ハンドルや急ブレーキを使用する・車が止まった状態でハンドルを切るなどの癖があると、タイヤの摩耗を早めてしまう(部分的な摩耗を引き起こす)恐れがあるので、注意しておきましょう。
偏摩耗を予防するにはどうしたらいい?
タイヤの偏摩耗を防ぐうえで重要なのは、以下の4つです。
②アライメントを適正値に調整する
③「急」が付く運転をしない
④タイヤローテーションを行う
偏摩耗を防ぎ、かつタイヤの寿命を延ばす効果もあります。
それは、安全性の確保にも直結するため、ぜひ実践してみてください。
順に、補足を加えていきましょう。
予防法①空気圧を適正に保つ
まず、偏摩耗を防ぐうえでの基本中の基本は、「空気圧を適正に保つこと」です。
あくまで“空気”なので、仮にまったく運転しなかったとしても空気は自然と減少していきます。
そのため、月に1度くらいは定期的に空気圧のチェックをし、適正値に調整するようにしましょう。
ただし、抜けることを考慮して空気を入れすぎる(=空気圧を高くする)と、逆に偏摩耗を起こしやすくなってしまうのでご注意ください。
予防法②アライメントを適正値に調整する
ホイールアライメントを適正値に調整することで、偏摩耗を防ぐことができます。
もし適正空気圧を維持していても偏摩耗する場合は、アライメントが狂っている可能性があるかもしれませんので、こちらをチェックしてみるのも良いかと思います。
ただし、この調整は専門知識と機材が必要となるため、業者に依頼するのが適切です。
調整費用には数万円する可能性があり少し費用は高額になりますが、問題を解消するためには効果的です。
タイヤをぶつけたり、路面からの強い衝撃があった場合も、調整(点検)を依頼してみることをオススメいたします。
予防法③「急」が付く運転をしない
急ハンドル・急ブレーキ・急旋回などの、“急”が付く運転をすると、タイヤの温度が上がり摩耗しやすくなります。
極力、”急”が付く運転を避けて、安全走行を心がけましょう。
予防法④タイヤローテーションを行う
偏摩耗対策の有効な手段の一つとして、「タイヤローテーション」が挙げられます。
「偏摩耗=4本あるタイヤのいずれかが極端に摩耗する状態」です。
そのため、定期的にタイヤを入れ替えることで、摩耗状態を均等にでき4本のタイヤの満遍なく使用することができるようになるのです。
タイヤローテーションの一般的な目安は、「約5,000km走行するごと」と言われています。
ちなみに、タイヤ交換はDIYでも可能ではありますが、不安があるなら業者に依頼するのもいいかもしれません。
まとめ
以上が、「摩耗」「偏摩耗」についてのご紹介となります。
消耗品であるタイヤは、走らせていれば必ず摩耗していきます。
いずれは交換しなければいけないものではありますが、大切に扱うことで寿命を延ばすことはできるのです。
また、さまざまな理由によって一部のタイヤだけが極端に摩耗する可能性もあります。
この偏摩耗には、
◆「内減り」
◆「両肩減り」
◆「センター摩耗」
など、摩耗の仕方によっていくつかの種類に分かれます。
タイヤを長持ちさせるためにも、偏摩耗の特徴をしっかりと理解し、対策を講じてみることをオススメいたします。
最後に。
タイヤは車検において厳しくチェックされる項目の一つです(損傷と溝の深さをチェックされる)。
保安基準があり、「タイヤのすべての溝の深さが1.6mm以上有すること」と定められているため、一部でも基準値を下回っていると車検に落ちてしまうのです。
偏摩耗が進行していると車検基準に引っかかってしまう可能性もあるため、十分ご注意ください。
※「車検」については、以下記事を参照ください※