自転車は、古くより人々の移動手段の一つとして重宝されており、時代とともにその種類も多様化しています。
特に、新型コロナウイルス感染症の影響で、「人との接触を極力避ける」「運動不足解消」のために利用する人が増えており、長い歴史がありながら今なお根強い人気を誇っています。
そして、この日々の生活の足として、自転車の中でも「電動アシスト自転車」が幅広い世代に支持されています。
電動アシスト自転車とは、どのようなものなのか。
運転時・購入時には、どのような点に注意しなければいけないのか。
今回は、こういった点について詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「電動アシスト自転車」とはなにか?
概要
その名の通り、「ペダルを踏む際に、電動モーターがアシスト(補助)してくれる自転車」のことを指しています。
一般の自転車に比べて足腰(身体)への負担を大きく減らすことができるので、小さなお子さんを乗せて運転する場合や高齢者の方にも利用しやすい乗り物です。
尚、道路交通法では、電動アシスト自転車は以下のように定義されています。
◆時速が10km/h未満までは、人の力が1に対して、アシスト比率は2以下
◆時速が10km/h 以上24km/h以内では速度が上がるに従って徐々にアシスト比率が下がり、人の力が時速24km/hの場合アシスト比率は0であること
電動アシスト自転車は、あくまで“自転車”であり、原付などのバイクや車のように免許は必要としません。
基本は“人力”で動かすものであり、電動モーターはあくまで“補助しているだけ”に過ぎないのです。
速さを求める自転車ではない
まず平均速度に関してですが、実は、人力のみで動かすママチャリと大した違いはありません。
一般的に、ママチャリの平均速度は「12km~15km/h」といわれており、電動アシスト自転車は「10km~17km/h」なのです。
これには、主に3つの理由があります。
1つは、「アシストが利く速度には限界がある」という点です。
上記にも記載した通り、アシスト比率は速度が上がるにつれて下がっていき、時速24km/hでアシスト比率は0になります。
もちろんそれ以上のスピードを出すことも不可能ではありませんが、それだと人力のみで動かす一般的な自転車と違いがありません。
むしろ、車体が“重たい”分、スピードは出しくくなります。
そう、2つ目の理由は、「車体重量が重い」のです。
電動アシスト機能が搭載されていることによって、一般的なママチャリよりも1.5倍~2倍ほど重たくなります。
電動モーターがアシストしてくれている間=時速24kmまでは比較的スイスイと進みますが、それを超えると簡単には速度を上げられなくなってしまいます。
最後の理由は、「利用者は、ご年配の方やママ世代が多い」ということです。
電動アシスト自転車の主な利用者は、体調・体力に不安がある方や子どもを乗せて移動する方……つまり、“安全な速度で、楽に走りたい”という利用者層が多いのです。
こういった理由で、電動アシスト自転車の平均速度は一般的なママチャリと大差がなく、時速24km以上の速度も出しにくくなっています。
電動モーターは、あくまでも補助的な役割を担うものであり、自転車を速く走らせるために搭載されているのではありません。
ちなみに、自転車は法律上時速60kmまで速度を出すことが可能です。
ただし、スピードを出すためには“こぐ力”が必要であり、速さを求めるのであれば人力のみで運転できる自転車(シティサイクル・クロスバイク・ロードバイク)などを購入した方が良いかと思います。
雨の日でも乗ることはできるの?
バッテリーが付いているため、人によっては「雨に濡れて感電しない?」と気にするかもしれませんが、この点はご安心ください。
雨の日でも利用することができますし、雨に濡れても感電することもありません。
ちなみに、バッテリーを外して乗った場合、バッテリーボックスの端子が雨に濡れることもあるかもしれません。
その場合であっても、電動アシスト自転車本体には影響はなく、安心して乗ることができます。
※要注意点※「電動自転車」と「電動アシスト自転車」は違う乗り物である
電動アシスト自転車を略して「電動自転車」という人もいるかもしれませんが、厳密には両者は違う乗り物を指しています。
比較してみると、両者の違いは一目瞭然です。
◆特徴 :ペダルを漕がなくても進む
◆アシスト力:時速24kmを超えてもアシストが利く
◆車両区分 :原動機付自転車と同じ
◆免許の有無:運転には原付免許が必要
【電動アシスト自転車】
◆特徴 :ペダルを踏みこむ力をアシストして進む
◆アシスト力:時速24kmまで
◆車両区分 :自転車と同じ
◆免許の有無:免許取得の必要はない
仮に、原付免許を持たずに公道を走ってしまうと、法令違反となってしまいます。
この点には、十分注意しておきましょう。
購入の際の見分け方については、後述でご紹介します。
「バッテリー」の要領、選び方のポイントは?
電動アシスト自転車は、バッテリーに充電した電気の力を使って、自転車の走行をアシストしてくれます。
つまり、アシストを利用するにはバッテリーの存在が必要不可欠であり、「バッテリーの要領が大きいほどたくさんの電気を充電できる=一度の充電で長い距離を走行できる」ようになります。
このバッテリーですが、専用の充電器を使って充電します。
そして、バッテリー容量は「〇〇Ah」と示されています。
電動アシスト自転車に搭載されているバッテリー容量は、以下の4種類が多いです。
◆バッテリー容量:8.0Ah→走行距離:約30km、充電時間:約3.5時間
◆バッテリー容量:12.0Ah→走行距離:約45km、充電時間:約4.5時間
◆バッテリー容量:16.0Ah→走行距離:約60km、充電時間:約6時間
ただし、上記はあくまでも目安であり、走行距離や充電時間は、使用頻度や充電頻度によって異なります。
また、バッテリー容量は他にも種類がありますので、気になる方は調べてみてください。
なんにせよ、大容量のバッテリーを搭載した分だけ、バッテリー切れの心配や充電の手間は少なくなり、より快適に使用することができます。
ちなみに、バッテリーは他の電子機器と同様にあくまでも“消耗品”であり、充電を繰り返しているとどんどん充電できる容量は少なくなってしまいます。
電動アシスト自転車のバッテリーの場合、700回~900回程度の充電で、充電容量の約半分になるといわれています。
とはいえ、仮に週に1回充電するのであれば700回充電するのに10年以上かかりますので、新品を購入したのであればそこまで気にする必要はないかと思います。
問題なのは、ネット上で購入する中古品の場合です。
この点も、購入時の注意点として後述でご紹介いたします。
購入時の注意点について
使い勝手の良い電動アシスト自転車ですが、決して安い買い物ではないため、しっかりと比較・検討したうえで購入した方が良いかと思います。
この「購入時の注意点」ですが、以下のものが挙げられます。
◆メーカーによる違いを理解し、いろいろな種類を比較・検討する
◆利用シーンや使用目的に合わせて、自分に合うものを選択する
◆中古品を購入する場合は、品質をしっかりと確認する
順に解説していきます。
「電動アシスト自転車」であることをしっかりと確認する
上述でもご紹介した通り、「電動自転車」と「電動アシスト自転車」は、名前こそ似ているものの似て非なるものです。
もし原付免許を持たずに電動自転車を運転してしまうと、法令違反となってしまいます。
ただ、ややこしいことに一般的に両者の使い分けはされておらず、見た目も似ているため違いが判別しづらいのです。
そのため、電動アシスト自転車を購入する際は、以下の3点を確認してみてください。
②「電動自転車」もしくは別名である「電動機付自転車」「電気自転車」「フル電動アシスト自転車」と書かれている商品は選ばない
③「公道での走行は禁止されている」といった表記のある商品は選ばない
非常に紛らわしいので、不安な方は自転車屋さんで店員に相談しながら、比較・検討をしてみることをオススメします。
メーカーによる違いを理解し、いろいろな種類を比較・検討する
電動機自転車にも多くの種類があり、メーカーや商品によって性能は異なります。
例えば、以下のような点です。
◆1回の充電で走れる距離
◆走行パターン
そして、性能が異なれば、当然値段も変動します。
まず「バッテリー」は、充電時間が長いものほど、1回の充電で走れる距離が長くなるのと同時に、値段も高くなりがちです。
逆に、充電時間が短いものほど、1回の充電で走れる距離が短くなる変わりに、値段は安くなりやすいです。
「値段を抑えたい」「1回の充電を手短に終わらせたい」という人は、充電時間が短いものを選択するといいかもしれません。
また、「走行パターン」の種類にも違いがあります。
走行パターンがONとOFFだけのシンプルなものもあれば、アシスト力を2~3段階選べるものもあるのです。
シンプルなものほど値段を安く抑えることができ、逆に充電の消費を抑えたい人は走行パターンを選択できるものを選ぶのが良いかと思います。
とはいえ、自転車によって特徴・性能・値段は千差万別です。
電動アシスト自転車は、値段が6万円~10万円以上するほど高価なものですので、一度購入すればそう簡単に乗り換えることはありません。
予算を決めて、その範囲内でできるだけ自分が納得できる自転車を購入してみてください。
利用シーンや使用目的に合わせて、自分に合うものを選択する
移動手段として利用する自転車ですが、「通勤・通学のため」や「子どもの保育園への送り迎えのため」など、人によって利用シーンや使用目的は変わるはずです。
そのため、バッテリー容量やデザインだけでなく、用途や目的に合わせて、以下の点にも注意してみてください。
◆タイヤサイズ
◆取り回しや小回りの良さ
◆子供乗せ対応の有無
バッテリーが搭載されている分、人力のみの自転車に比べると非常に重いです。
小柄な女性や高齢者の方は、できるだけ総重量が軽いものやタイヤサイズが小さいものを選ぶと乗りやすくなるかと思います。
特に注意すべきなのは、「子どもを乗せて走る」という場合です。
チャイルドシートの重さや子どもの体重なども考慮しなければいけませんので、「子どもを乗せて安定走行ができるか?」という点を意識して検討してみてください。
尚、チャイルドシートの装着が可能かどうかは、自転車によって異なります。
※詳細は、以下記事を参照ください※
子どもを事故や怪我から守るためにも、“走行性”だけでなく“安全・安定性”も考慮して選択するようにしてください。
中古品を購入する場合は、品質をしっかりと確認する
自転車のパーツは消耗品であり、中古品を購入すれば大なり小なり何かしらのパーツが劣化しています。
特に、バッテリーは電動アシスト自転車の命といっても良いほど大事なパーツで、「せっかく購入したのにバッテリーの持ちが悪すぎる」となっては電動アシスト自転車を購入した意味がありません。
そのため、中古品を購入する場合は“品質を確認する”ことを絶対に忘れないでください(特にバッテリー)。
自転車屋さんで販売されている中古自転車であれば、一般的に自転車整備士などのプロの確認や清掃、必要であればパーツの交換などがされてから店頭で販売されます。
それに、分からないことがあれば、その場で店員さんに聞くこともできます。
しかし、インターネット経由……特にオークションサイトやフリマアプリなどで購入する場合は、現物を画像以外で確認する術はほぼなく、出品者からの情報だけが頼りです。
電動アシスト自転車の場合、購入後数か月してすぐにバッテリーがダメになってしまうケースも良くある話で、そうなれば余計な手間と費用が発生してしまいます。
もちろん「中古を購入してはダメ」とは言いませんが、ネット通販に不慣れな人ほど購入は慎重になった方が良いと思います。
その商品の概要・使用年数・状態・今までの利用頻度などは理解しておいた方が良いので、詳細がしっかりと掲載されているものを候補に選んでいくようにしてください。
基本的には、自転車屋さんで購入すべき!
中には、「ほんの少し利用するだけだから」「安ければなんでもいいから」という人もいます。
もちろん価値観は人それぞれですし、モノによってはその方法で購入しても問題ないものだってあります。
しかし、自転車……特に電動アシスト自転車の場合はそうもいきません。
安くても数万円はする高額なものですし、もし万が一購入してすぐに修理が必要となれば、修理費だって馬鹿になりません。
例えば、バッテリーを新しいものに交換するとなった場合、費用は2万円~4万円ほどかかる可能性があります(あくまで相場であり、メーカーごとに価格帯は変わります)。
そのため、できる限り「自転車屋さんで店員に相談しながら購入を検討すべきである」といえます。
用途・目的・予算などを伝えることで、自転車のプロがその人に合った自転車をオススメしてくれます。
また、お店によっては試し乗りをさせてくれるところもあるかもしれません。
一度購入すれば長く利用するものであり、通勤・通学・子どもの送迎など普段の生活のなかで多用する人ほど、乗り心地の良い安全な自転車を選ぶべきかと思います。
電動アシスト自転車に乗るときの注意点について
「電動アシスト自転車に初めて乗る」という人は、以下2つの点に注意しておいてください。
一つは、“漕ぎ出しに注意”という点です。
アシスト機能のおかげで、「思った以上の速さで走り出す」と感じることがあるのです。
人力のみの自転車と同じような感覚で漕ぎ出すと、身体が置いて行かれて発進が不安定になることもあります。
まずはギアを軽くしてゆっくりと漕ぎ出し、徐々にアシストされたスピードに慣れていきましょう。
そしてもう一つの注意点は、“バッテリー切れ”です。
外出中にバッテリーが切れてしまうと、ただの重たい自転車になってしまい、まともに走行ができません。
充電の残量は、付属の液晶モニターで確認ができますので、バッテリー切れを引き起こさないようこまめに充電しておくことをオススメいたします。
まとめ
電動アシスト自転車は、電動モーターを用いて“自転車の運転をアシストする乗り物”です。
通勤・通学・子どもの送迎・買い物などの移動手段としてはもちろん、高齢者の方にとっても扱いやすい乗り物となります。
ただし、購入する際に注意しておくべきこともあります。
性能や値段は千差万別ですし、「電動自転車」との違いも把握しておくべきですし、中古品やネット経由で購入する場合は確認すべき事項もたくさんあります。
「面倒だな」と感じることもあるかもしれませんが、高額な買い物かつ一度購入すれば長く使用していくものとなりますので、しっかり比較・検討して自分に合ったものを選択できるよう工夫してみてください。