ネット通販サイトなどで「電動自転車」と検索すると、そのほとんどが「電動アシスト自転車」が表示されます。
ただし、中には「フル電動自転車」や「モペット」と書かれているものもあります。
意外と“電動自転車と電動アシスト自転車は同じもの”という認識を持った人が多いのですが、両者は似て非なるものです。
また、電動自転車を運転しようと思うと、いくつか用意しなければいけないものがあります。
今回は、この電動自転車の特徴や交通ルール、購入時の注意点などについて解説していきたいと思います。
「電動自転車」とはなにか?
概要
「電動自転車」「フル電動自転車」、中には「ペダル付き原動機付自転車」などと表記されることがありますが、これらはいわゆる「バイク」であって、道路交通法上では原動機付自転車に分類されます。
ちなみに「モペット」と呼ばれることもありますが、この理由はモーターとペダルを兼ね備えた乗り物ということから名付けられています。
端的に言ってしまうと、“電気を動力として走るバイク”であり、バッテリーに充電した電気の力でモーターを回して走行します。
モーター走行であるため、ガソリン車よりも音は小さく、排気ガスも出ません。
環境にも優しい乗り物といえるでしょう。
「電動アシスト自転車」とはまったく違う乗り物である
別の記事で「電動アシスト自転車」についてご紹介をさせていただきましたが、名称こそ似ているものの両者はまったく違う乗り物です。
※「電動アシスト自転車」については、以下記事を参照ください※
まず、電動アシスト自転車の分類は“自転車”であり、ペダルを漕ぐことによって電気モーターが作動し運転をアシストしてくれるというものです。
ペダルを漕がなければアシスト機能が働くことはなく、自動で走り出すことはありません。
また、自転車をこぐ速度によってアシスト比率も変化していき、速度とともに弱まるように設計されています(24km/hになればアシスト機能が切れる)。
電動アシスト自転車は、あくまで“運転の補助”が目的であり、“スピードを出す”ためではなく“楽に走る”ことを前提に設計されているのです。
対して電動自転車の分類は“バイク”であり、「アクセル」が付いていることが電動アシスト自転車との最大の違いとなります。
アクセルのおかげで、ペダルを漕がなくてもモーターの力だけで動かすことができます。
電動アシスト自転車と違い、24km/hでもアシストが切れることはなく、30km/h以上出るようなものがほとんどです。
また、自転車と同じようにペダルを踏むことで前に進むことができるようにもなっていて、電動アシスト自転車のような補助機能も備わっています。
そして、電動自転車を運転するには、絶対に必要となるものがいくつか存在します。
次項にて、その解説をしていきましょう。
電動自転車を運転する際に必要なもの
電機を利用して走る電動自転車ですが、分類が“バイク”である以上、運転するためには用意しておかなくてはいけないものがあります。
それが、以下です。
◆「ナンバープレート」
◆「原動機付自転車の交通ルールを守る」
◆「保安基準を満たした装置」
◆「自賠責保険」または「共済」の契約
順に解説を加えていきます。
「運転免許」
一見すると自転車と大差がないタイプもある電動自転車ですが、あくまで“バイク”という扱いになるため、運転するためには免許が必要となります。
公道を走る場合、出力サイズに応じて運転免許が必要となります。
ちなみに、ガソリンエンジン車の場合は「排気量(cc)」に応じて免許区分が異なりますが、電動自転車の場合は「定格出力(kW)」で必要な免許区分が定められています。
◆1.0kW以下:小型限定普通二輪免許
◆20kW以下:普通二輪免許
◆20kW超:大型二輪免許
最低でも、原動機付自転車を運転できる免許(原付免許・普通免許など)が必須となります。
※小型特殊自動車免許では運転はできません※
ちなみに、電動アシスト自転車はあくまで“自転車”なので、免許は不要です。
「ナンバープレート」
電動自転車はモーターのみで走行可能なため、ナンバープレートの取付けも必須となります。
交付を受けていない場合は、速やかに原動機付自転車の標識交付申請を行ってください。
取付けは、車両の後面・周囲の人でも確認できる見やすい位置に表示することが大切です。
尚、電動アシスト自転車は“モーターのみでは走行できない”ため、ナンバープレートの交付は不要です。
「原動機付自転車の交通ルールを守る」
あくまでバイクであるため、運転時は原動機付自転車の交通ルールを守ることが必要となります。
例えば、以下のようなものです。
◆一番左側の車両通行帯を通行すること
◆多通行帯の交差点では二段階右折をすること など
また、歩道や普通自転車専用通行帯を走行することもできません。
もし交通ルールを守れていない場合、バイクと同じく罰則や罰金の対象となってしまいます。
ちなみに、電動アシスト自転車の場合は、ヘルメットの着用は強制ではありません。
ただし、2023年4月1日からは、道路交通法の改正によって、「自転車に乗る人は年齢を問わずヘルメットの着用が努力義務化される」こととなります。
現時点では”努力義務”であり罰則もありませんが、将来的にはどうなるか分かりません。
というのも、バイクも「努力義務(罰則なし)→義務化(罰則あり)」と変化していったのです。
義務化されることとなった背景は、バイク人口が増えたことと、若年層ライダーによる事故増加などが増加したことを受けて……とされています。
自転車に乗る人口も増加しており、事故も多発していることから今回のような努力義務が課せられることとなったため、いずれは義務化される可能性もあるかもしれません。
それに、ヘルメットは万が一の事故が発生したときに、大切な頭部を守るためのアイテムとして役立ちます。
大事な命を事故から守るためにも、自転車に乗っている人も積極的に利用していった方が良いかとは思います。
「保安基準を満たした装置」
道路運送車両法に定められている保安基準に適合した装置を備えている必要があります。
例えば、以下のようなものです。
◆前照灯
◆制動灯
◆尾灯
◆番号灯
◆後写鏡
◆方向指示器
◆警音器
しっかりと整備されていて、安全に走行できるかどうかは非常に重要です。
何度も言うように、電動自転車はバイクであり、自動車と同じ道路を走らなくてはいけません。
すべてが揃っていないと実際に道路を走った際に非常に危険となるため、しっかりと準備をしておくことが重要となります。
「自賠責保険」または「共済」の契約
自転車でも事故は多く、現在は任意で保険に加入することが義務付けられています。
これは電動自転車でも同じなのですが、加えて、強制保険でもある「自賠責保険」にも加入しておかなくてはいけません。
車道にはたくさんの危険が潜んでおり、どれだけ気を付けて走行していたとしても、万が一ということはあり得ます。
自分が怪我をしたとき、相手に怪我をさせてしまったとき、どちらにしろ高額なお金が発生することとなるのです。
その不安を軽減するために、保険というものが存在します。
ただし、自賠責保険は、自分が怪我をしたときや器物破損してしまった際には補償の対象にはなりません。
自賠責保険だけでなく任意保険にも加入し、万が一の事態に備えておくようにしましょう。
ルールを守らないと”違反”となる
当然のことではありますが、法律で定められている以上、上記ルールを守ることは絶対です。
もし破ってしまえば違反となり、罰則や罰金の対象となってしまいます。
特に多いのが、「無免許運転」です。
万が一警察官が取り調べをしているときに、電動自転車に乗っているのに無免許運転をしていたら、違反の対象者として罰せられています。
「免許が必要なんて知らなかった」「短い距離だから」なとは、通用しないのです。
電動自転車は、ルールをしっかり把握した上で購入するかどうかを決めてみてください。
気になる場合は、免許が不要な電動アシスト自転車を検討する方が良いかとも思います。
購入時の見分け方について
ややこしいのは、「電動自転車と電動アシスト自転車の見分けがつきづらい」ということです。
実際に乗ってみるとその違いは一目瞭然ですが、見た目はほとんど変わらず、パッと見ただけだと同じ乗り物にしか見えません。
そのため、比較・検討・購入する際には、混同しないように注意しておかなくてはいけません。
見分け方の方法は、「名称」と「説明文」をしっかり見るということです。
例えば、「電動自転車」とネットで検索をかけると、電動自転車と電動アシスト自転車の両方が検索に上がってきます。
しかし、名前を良く見ると「電動自転車」か「電動アシスト自転車」かの記載がしっかりとされているはずです。
ただし、電動自転車は別名として、「電動機付自転車」「電気自転車」「フル電動アシスト自転車」などと呼称されていることもあるので、その場合は内容を良く確認してみてください。
名前こそ似ているものの、電動自転車と電動アシスト自転車の特徴は異なります。
説明文などを見れば、その特徴の違いが明確に分かるかと思います。
また、お店で購入する場合は、店員さんに相談してみるのも良いでしょう。
尚、インターネット経由で購入する場合は注意が必要です。
特に、オークションサイトやフリマアプリなどで購入する場合は、現物を画像以外で確認する術はほぼなく、出品者からの情報だけが頼りとなります。
「安ければなんでも良い」という気持ちで購入してしまうと、後で面倒な事態に発展しかねません。
ネット経由で購入する場合は、「画像が豊富に用意されている」「情報がしっかり明記されている」「説明がしっかり記載されている」などの点を意識して、情報収集をしてみてください。
「電動自転車」と「ガソリン車」どっちを選べば良い?
電動自転車は分類がバイクであることから、「ガソリン車」とも比較されることがあります。
どちらであっても、企画に応じた免許が必要である点は同じです。
もっとも違う点といえば、動力が「電気」か「エンジン(ガソリン)」かという点でしょうか。
この項目では、両者を比較しながら、電動自転車を選ぶメリット・デメリットについてご紹介をしていきたいと思います。
電動自転車を選ぶメリットとは?
電動自転車を選ぶメリットとしては、以下が挙げられます。
②種類が豊富に存在する
③静穏性に優れている
④給油をする必要がない(時間の節約になる)
⑤メンテナンスが少なくて済む
⑥乗り心地がスムーズ
まず①の”燃費”についてですが、電動自転車の方が燃費は良いといえます。
あくまで参考程度ではありますが、ガソリン車の場合はおよそ1Lで35km~40km程度走行が可能です。
2022年6月時点のレギュラーガソリンlLあたりの全国平均価格は「174.9円」とされているので、ガソリン車で40kmほどを走るためには170円前後かかる計算となります。
対して、電動自転車の場合は、1回あたりの充電で同程度走行することができます。
1回の充電にかかる電気代は一般的に30円程度といわれているので、この数値だけで比較すると、電動自転車の方が格段に安く利用ができるといえるでしょう。
もちろん、バッテリーはメーカーや種類によって異なりますし、消耗品なので長く使用するほど充電効率は悪くなっていきます。
また、現在は電気代も高騰しているので、上記数値はあくまで参考程度にご覧ください。
そして②ですが、ガソリン車に比べて、電動バイクの方が種類は豊富に用意されています。
例えば、電動自転車には折りたたみ式がありますが、ガソリン車にはありません。
利用シーンに応じて、いろいろな車種を選べるというのは利点の一つになるかと思います。
③は、“モーターで走行する”という特性上、静穏性に優れているということです。
走行音がほとんど気にならないので、特に住宅街に住んでいる方は、周辺の方への配慮として利用してみるのも良いかもしれません。
④は、電動自転車は自宅でバッテリーを充電するものであるため、給油のためにわざわざガソリンスタンドに立ち寄る必要性がないということです。
また⑤は、電動自転車の方が構造がシンプルで故障しづらく、修理費用などのランニングコストがかかりづらいというメリットにつながります。
電気で動くためオイル交換をする必要もありませんので、メンテンナンスの手間があまり発生しません。
最後に⑥ですが、電動自転車はモーター走行であるため、ガソリン車に比べて振動が少なく・乗り心地がスムーズです。
このように、電動自転車には多くのメリットがあります。
ただ、その反面デメリットも存在します。
電動自転車を選ぶデメリットとは?
デメリットとして挙げられるのは、以下の3点です。
②長距離を走るのには向いていない
③車両価格がやや高い
まず①ですが、ガソリン車の場合は街中のいたる所にガソリンスタンドがあるので、仮にガソリンが少なくなってきてもすぐに補充することができます。
しかし、電動自転車の場合はそうはいきません。
充電は自宅で行うことが主となり、充電にもそれなりの時間が必要となります。
もし充電することを忘れてしまえば利用はできませんし、運転時に充電切れを起こしてしまえばただの重たい乗り物と化してしまいます。
そのため、いざという時の充電切れに備えて、替えのバッテリーを用意しておくことを推奨いたします。
そして②ですが、一般的な電動自転車の航続可能距離は「30km程度」とされています。
中にはもっと長距離を走れるものもありますが、運転の途中でバッテリー切れに遭遇してしまうと大変なことになってしまいます。
ガソリン車のように“途中で補充する”ということも難しいので、長距離移動には向かない乗り物といえるでしょう。
最後に③ですが、電動自転車は同規格帯のガソリン車よりも価格帯が高めに設定されています。
理由は、リチウムイオンバッテリーなどが利用されているためであり、本体価格だけでみるとガソリン車の方が安値で購入できる可能性が高いです。
ただし、メリットでお伝えしたように“燃費は良い”ので、長く愛用するのであれば、結果的に電動自転車の方がお得になるケースは多いかもしれません。
電動自転車は、普段使いする人にオススメ!
電動自転車は、「普段使い+楽に運転したい」という方にオススメできる乗り物です。
燃費が安く・種類も多く・乗り心地も良く・ランニングコストがかかりづらく・メンテンナンスも少なめで済む……と、長く普段使いをしたいというのであれば、電動自転車の購入を検討してみても良いと思います。
電動アシスト自転車のように“こぐ力”も必要としないので、体力に不安がある方も楽に利用できます。
ただし、バッテリー残量には気を配る必要があり・長距離移動はしづらいため、「長距離を走るツーリングがしたい」という方は、ガソリン車を選ぶ方が良いかと思います。
どちらにもメリット・デメリットが存在するため、自分の用途や目的に応じて、合ったものを選択していくのが良いと思います。
まとめ
電動自転車は、電動アシスト自転車とガソリン車の良いとこ取りをしたようなものであり、非常に扱いやすい乗り物といえます。
燃費も乗り心地も良いので、普段使いしたい人には特にオススメできます。
ただし、運転免許やナンバープレートなどが必要だったり、長距離移動には向かないなどのデメリットもありますので、しっかり検討してから購入に踏み切った方が良いかと思います。
また、電動アシスト自転車とは似て非なるものなので、特にネットで情報収集・購入する場合はご注意ください。
なんにせよ、数万円以上する高額なものであり、一度購入すれば長く使用していくものであるため、比較・検討をしっかり行い・自分に合ったものを選択できるようにしてください。