「大型車両」に分類される車には、さまざまな種類があります。
「タンクローリー」はその中の一つであり、大容量の液体を安全に運ぶことが可能です。
これは、普通のトラックでは運ぶのが難しい荷物を運搬するために作られた車であり、3つの種類に大別することができます。
そして、運転する車によって必要となる資格や免許や異なります。
今回は、タンクローリーの種類や必要な資格・免許などについて、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「タンクローリー」ってなに?
トラックの荷台部分に「大きなタンクがある」車のことである
これは、「円筒状のタンクを背中に設置している車」のことを指しています。
トラックの荷台にあたる部分に大きなタンクがあり、そこに“荷物”を入れて運ぶのです。
この“荷物”となるものは、「セメント」「ガソリン」「水」といった“液体物”や、「高圧」などの“気体”が該当します。
言うなれば、“形のない荷物”です。
通常のトラックで運ぶことが困難なこれら荷物を運ぶために必要となるのです。
このタンク部分の形状は「楕円形」となっています。
(荷物の種類が変わっても、基本的には同じである)
その理由は、以下の2つが挙げられます。
◆「強度を確保するため」
また、タンクはいくつかの部屋に分かれていて、さまざまな種類の液体が混ざることなく運搬できるようにもなっています。
ただし、「高圧ガス」のみ、内部からの圧力を均等にする必要があるため、完全な“丸い形”になっています。
ちなみに、「タンクローリー」の「ローリー(Lorry)」ですが、これはイギリス英語で“トラック”という意味になります。
(トラック(Truck)はアメリカ英語である)
また、消防法においては、タンクローリーのことを「移動タンク貯蔵庫」と、定義・表現しています。
「構造」は法律で定められている
タンクの積載量は、消防法で定められています。
その数値は、「30,000l(30t)」です。
また、「石油」などの“危険物”と定められているものを運ぶ場合は、一室「最大4,000l」の複数の部屋に分かれています。
この理由は、運転時や作業時のリスクを軽減するためです。
また、各部屋ごとに別の液体を入れて運ぶことも可能です。
種類の違うものを運ぶこともできますし、もちろん同じ液体を一気に運ぶこともできます。
尚、荷物を運ぶ際には、「何を運んでいるのか?」を大まかに示す”ステッカー”もしくは”板”を見えるところに貼ることが義務付けられています。
例えば、危険物を運ぶ場合は「危」というステッカーや板が見えるところに貼られています。
「種類」について
種類は、3つに大別することができます。
それぞれの特徴を、順に補足していきましょう。
「危険物タンクローリー」
これは、ガソリンや灯油など、消防法で定める「危険物」としての性質があるものを移送する用途で使用される車両のことです。
「危険物=火災の発生・拡大の危険性があり、消火が困難な引火性液体や酸化性液体のこと」を指します。
タンクの材質は基本的に耐久性が高く、 危険物タンクローリーでは化学変化が起きにくい普通鋼や強度を上げた高張力鋼材になっています。
「非危険物タンクローリー」
これは、その名の通り「危険性のないもの」……例えば、食品・飲料水・セメントなどを運搬する際に使用されます。
ちなみに、以下のようなものを運搬する際に使用されるタンクローリーは、「粉粒体運搬車ローリー」とも呼ばれます。
◆「小麦粉や砂糖、飼料といった食品」
当然、これらの運搬にも(事故を除く)大きな危険性はないため、「非危険物タンクローリー」という扱いになります。
非危険物タンクローリーの素材は腐食や傷に強いステンレスです。
「高圧ガスローリー」
これも、その名の通りで「高圧ガス」を運搬するために使用されるタンクローリーのことです。
種類としては、高圧ガス保安法で定める「圧縮ガス」や「液化天然ガス」といった、“爆発の危険性”があるものを指しています。
高圧ガスローリーの素材は圧力に強い高張力鋼材が使われることが多いです。
タンクローリーにも、さまざまなサイズのものがある!
一口に「タンクローリー」といっても、さまざまなサイズのものが存在します。
大別すると「小型」「中型」「大型」の3種類に分けられます。
この項目で、それぞれの特徴について、ご紹介をしていきましょう。
「小型タンクローリー」
これは、“2t~3t”までの車両のことを指しています。
小型の場合は、積載量が2kl~2.5klのトラックが一般的とされていますが、中には4klなどの大容量サイズのタンクを保有している車両も存在します。
主な使用用途は、「住宅街への灯油や軽油の移送」となります。
小型であるがゆえに狭い道路でも通行がしやすく、特に冬場の住宅街への灯油の配送には需要があります。
言い方を変えると、「一般の個人消費者向けに使用される車両が、小型のタンクローリーである」とも言えるでしょう。
ちなみに、小型タンクローリーを運転するために必要な免許は「普通自動車免許」もしくは「準中型免許」となります。
これは、“乗務する車両の大きさ”や“積載量”によって、必要となる免許が異なることとなります。
その基準は、以下の通りです。
◆「準中型免許」 :車両総重量3.5t以上7.5t未満、最大積載量2t以上4.5t未満
2017年に道路交通法の改正がありましたが、それによって「準中型免許」が新設されました。
普通自動車免許で運転できる車両が制限されることとはなりましたが、準中型免許のおかげで18歳以上でも中小型クラスのトラックが運転できるようになったのです。
ただし、要注意点は「普通自動車免許で運転する場合、車両総重量と最大積載量の両方の条件を満たしている車両を選択する」必要があります。
“小型=普通免許で運転できるとは限らない”ということです。
この点には、注意しておきましょう。
「中型タンクローリー」
これは、主に“3t~4t”の車両のことを指しています。
タンクサイズはメーカーによって異なり、“3kl~8kl”まで幅広いサイズが用意されています。
使用用途は非常に幅広く、特に需要が大きいのは「重油・灯油・軽油の移送」です。
他にも、
◆飲食店や小売店などへの食用油配送
◆小麦粉や佐藤といった粉粒体を工場へ移送
など、液体物だけでなく、さらに幅広い用途で使用されています。
そして、中型のタンクローリーを運転するためには、「準中型免許」か「中型免許」が必要であり、これも車両の総重量や積載量によって異なることとなります。
◆「中型免許」 :車両総重量7.5以上11t未満、最大積載量4.5t以上6.5t未満
尚、「中型免許」も2007年の道路交通法の改正で新設されたものであり、それ以前は「普通自動車免許」と「大型免許」の2つしか区分が存在しませんでした。
つまり、“普通免許でも中型サイズのトラックが運転可能”となっていたのです。
このことから、2007年の法改正以前に普通免許を取得している人は、“車両総重量8t未満・最大積載量5t未満”の条件を満たしている車両に限って、運転をすることが可能となります。
「大型タンクローリー」
タンクローリーの中で、もっとも利用頻度が多く・私たちの生活の中でも目に入りやすいのが、「大型タンクローリー」です。
一般的には、“4t~10t”のトラック以上の大きさの車両は、すべて「大型扱い」となります。
サイズが大型になると、タンク部分がトレーラー車両となることもあり、別々のトレーラーヘッドで移送することも可能となります。
積載容量は“6kl~20kl”となり、トレーラータンクローリーになると最大で“30kl”まで積載できる車両もあります。
また、「目にする機会が多い=使用用途が幅広い」ということでもあり、小型・中型タンクローリー以上にさまざまな場面で使用されることとなります。
もっとも多くの人がイメージしやすいものといえば、「ガソリンスタンド間のガソリン移送」ではないでしょうか。
よっぽど規模の小さいガソリンスタンドでもない限りは、大型のタンクローリーが定期的に出入りして、地下のタンクへと補充を行っているのです。
もちろん、“大型=一度に多くのものを積載できる”ということでもあるため、長距離移送でも使用される場面は多いです。
例えば、工場間の液体物・粉粒物の移送に使われることもあります。
必要な免許は、“大型”と明記してある通り「大型免許」が必要となります。
この取得条件は、「21歳以上+普通自動車免許の運転経歴が3年以上」です。
そのため、まずは普通自動車免許の運転経験が要求されることとなります。
後は、トレーラーを運転する際は、「けん引免許」も必要です。
大型であるがゆえに扱いは非常に難しく、相応の経験・免許が必要となるのです。
必要な免許が多く取得難度も高いですが、必要な免許をすべて取得し職に就くことができれば、長く・安定して仕事を続けていくことができるようになるかと思います。
尚、「けん引免許」については別の記事にて詳細をご紹介しておりますので、以下に関連するリンクを貼り付けておきたいと思います。
参考にしていただければ幸いです。
運転に必要な「資格」「免許」とは?
大前提として「運転免許」が必要である
まず、大前提として必要となるのは、「運転免許」です。
上項でご紹介した通り、「普通」「準中型」「中型」「大型」など、車両区分にあった運転資格を所持していなくてはいけません。
基本的にタンクローリーは大型車両であることが多いため、「タンクローリーの運転手として長く仕事を続けたい」と考えるのであれば、最終的に「大型自動車免許」の取得は必須になってくるかと思います。
後は、トレーラータイプを運転する場合は、別途「けん引免許」が必要にもなります。
大型免許を取得するのであれば、合わせて免許取得を目標にしておくといいでしょう。
そして、タンクローリーを運転する場合、運転免許以外に必要となる資格・免許があります。
それは、「運搬するものによって異なる」こととなります。
「運搬する種類」によって、必要な免許・資格は異なる
上項で、タンクローリーには「危険物」「非危険物」「高圧ガス」の3つの種類があることをお伝えしました。
そして、運搬する種類によって、必要な資格や免許が異なるのです。
まず、「非危険物」ですが、これは特別な資格や運転条件はありません。
「運転免許」と、(必要があれば)「けん引免許」があれば、運転することが可能です。
次に、「危険物」ですが、これは以下の条件を必要とします。
※毒物(硝酸や過酸化水素水など)を運搬する場合は、「毒物劇物取扱責任者」の資格が必要である
その名の通り“危険物”を運搬するため、当然ながら危険物に関する知識・技術を要している人が必要となるのです。
ただし、「危険物取扱者」の資格を有しているならば、運転手1人で乗務することが可能です。
この「危険物取扱者」に関しては、以前に別の記事にて詳細をご紹介しておりますので、以下にリンクを貼っておきます。
次に「高圧ガス」についてですが、これは「高圧ガス移動看視者」の資格者が同乗する必要があり、また「高圧ガス移動監視者講習修了証」を携帯する必要があります。
この資格が必要となる条件は、以下の通りです。
◆容積300m3以上の可燃性ガス、酸素
◆容積100m3以上の毒性ガス
≪液化ガス≫
◆質量3,000kg以上の可燃性ガス、LPガス、酸素
◆質量1,000kg以上の毒性ガス
◆圧縮水素スタンドの液化水素の貯槽に充てんする液化水素
≪特殊高圧ガス≫
◆移動する数量の多少に関係なく必要
※特殊高圧ガス=モノシラン・ジシラン・アルシン・ホスフィン・ジボラン・モノゲルマン・セレン化水素の計7種のこと
もちろん、複数の異なる荷物を取り扱う場合は、対応した資格・免許が必要となります。
また、複数のタンクローリー&荷物を扱えるようになれば、運転手としての価値は大きく上がることにもなります。
どれもこれも「小さなミスが大きな大事故につながる恐れがある」という危険なものであるため、それぞれの取得難度も高くなっています。
いきなり「すべての資格を取得しよう!」と考えるのではなく、状況に応じて一つひとつ資格や免許を取得し、徐々にステージアップしていければいいのではないかと思います。
まとめ
以上が、「タンクローリーの種類、必要な資格・免許」についてのご紹介となります。
タンクローリーの種類は3つに分類され、それぞれで必要な運転資格が異なります。
また、「危険物」や「高圧ガス」を運搬する場合、運転免許やけん引免許とは別に、対応する資格も取得しなければいけません。
“事故=大事故につながる恐れがある”ということもあって、各資格・免許の取得難度は非常に高いものばかりです。
取得には相応の勉強期間が必要であり、一筋縄でもいかないでしょう。
しかし、言い方を変えれば、「資格が取得できれば、一生モノの仕事になる」ということでもあります。
キャリアアップにもつながりますし、就職・転職にも有利となります。
「タンクローリーの運転手として、少しでも良い条件+長く仕事がしたい!」と考えるのであれば、ここまでにご紹介した資格・免許を少しでも多く取得できるように頑張ってみてください。