火災や災害から人々を守る「消防士」について、これまでさまざまな記事を公開してまいりました。
この仕事は、自分一人だけでできるものではありません。
また、“人々の命を火災や災害から守る”という職業上、誰にでもできるものではなく、苦労の絶えない仕事でもあります。
では、消防士に「適性のある人」とは、どういう人なのでしょうか?
また、この仕事に求められる「知識」や「スキル」には、どういったものが挙げられるでしょうか?
今回は、こういった点について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
どういう人が向いている?消防士に「適性」のある人とは?
冒頭でもお伝えした通り、この仕事は一人でできるものではなく、また危険な場所や状況に直面する機会も多く出てきます。
人々の命や資産を守ることはもちろん、“自分や仲間の命”も守らなくてはいけないのです。
そのため、消防士という仕事にも「向き・不向き(適正)」というものが存在します。
初めに結論だけをまとめると、適性があるのは以下のような人が挙げられます。
2.冷静に状況を判断し、落ち着いて物事を考えられる人
3.心身ともに強さを持っている人
順に補足を加えていきましょう。
1.仲間と協力して行動できる人
この仕事は、常に他の消防士たちと連携して行動します。
仮に、「こうしたい」という自分なりの考えがあったとしても、自分の判断だけで勝手な行動を取るわけにはいきません。
なぜなら、その自己の判断が誤っていた場合、多くの人々の迷惑になる可能性があり、守れる命を守れない可能性も出てくるからです。
消防士は、採用試験に合格したあとに消防学校にて訓練を行うこととなります。
この消防学校時代から、「集団で行動する」という考え方を養っていくのです。
そのため、「チームワークを重視しながら何かを成し遂げたい!」と考えている人に向いている仕事といえます。
逆に、「一匹狼で、自分の考えで自由に行動したい」という人には、ちょっと向かない仕事といえるかもしれません。
2.冷静に状況を判断し、落ち着いて物事を考えられる人
火災や災害という現場に赴くことから、この仕事は危険な場所や状況に直面する機会も多く出てきます。
特に不慣れなうちは、緊急事態が起こった際に、どうしてもパニックになったり焦ったりすることもあるかもしれません。
そういう時に、“どれだけ冷静に状況を判断し、適切な行動をとれるか”が大事になってくるのです。
パニックになって冷静さを欠いたままでいてしまうと、現場がより混乱する事態を招きかねません。
そのため、「常に落ち着いて、冷静に周囲の状況を観察できる人」や「周囲の状況をよく見ながら行動したり、物事を考えたりすることができる人」に向いている仕事といえます。
逆に、ちょっとしたことで動揺したり大騒ぎしてしまう人には、向かない仕事といえるかもしれません。
ただし、どんな人であっても、慣れないうちは緊張したり焦ってしまうことはあります。
初めから、どんな物事にも冷静に対処できる人はおらず、これは「経験」によって養われるものでもあるのです。
そのため、この点については(消防士を目指す前から)それほど深刻に考えることでもないと言えます。
大切なのは、「気持ち」です。
「人命を助けたい」「世の中の役に立ちたい」という純粋な気持ちが強く、自分の体力や技術をそのために生かしたいと考えている人であれば、チャレンジしてみてもいいのではないかと考えます。
3.心身ともに強さを持っている人
災害の現場で救助活動を行う際は、自身の勇気と判断力が問われる場面が多々あります。
時にさまざまな出来事がきっかけで、トラウマを抱えて働けなくなってしまうこともあります。
このことから、身体的な体力が必要であることはもちろん、精神的な強さも必要となってくるのです。
肉体はトレーニングで鍛えることができますが、メンタルはそう簡単に鍛えられるものではありません。
そのため、どんな困難な局面においても自分を見失わない「強いメンタルを持った人」に適性のある仕事といえるかと思います。
必要な「スキル」や「能力」について
業務によって、幅広いスキルが求められる
人によっては、「消防士=火を消す仕事」とイメージすることもあるかもしれません。
実際に消火作業も消防士の業務の一つではありますが、実際にはその他にも多彩な業務が存在します。
そして、求められるスキルや資格というのは、「どのような業務を担当するのか?」によって変わってくるのです。
もっとも分かりやすい例を出すと、「救急隊」で働く場合は「救急救命士」という国家資格が必要となります。
他にも、
◆「玉掛け」「クレーン」などの作業免許
◆「ヘリコプター」のパイロット免許
◆「消防設備」を安全に使うための資格
など、担当する業務によって必要な技術・資格は変わってくるのです。
ただし、最初からすべての資格を取得している必要はありません。
「できることを増やすため」「さらなるキャリアアップ」のため、職に就いてからも自分を高め続ける姿勢が求められるのです。
ちなみに、「予防課」など、主にデスクワークを中心に行う部署に配属されることもあります。
デスクワークを中心に行う部署では、「事務」に関するスキルが求められることもあります。
場合によっては、「建物の防火設備に関する法律や専門知識」が必要になってくることもあり、一見するとあまり関連がなさそうなスキルが必要・役立つこともあるのです。
このように、求められるスキルは幅広いものとなっているため、配属された場所で「必要な知識やスキルはなにか?」をしっかりと把握し・身に着けていくことが重要となります。
「体力」も必要である
また、この仕事は「体力が求められる仕事」であることは間違いありません。
過酷な現場で重い装備を背負いながら消火活動を行ったり、人を助けたりするには、日ごろから一般の人以上に身体を鍛えておかなくてはならないのです。
もちろん、“体力がある=自分の身を守る”ことにもつながります。
ただし、体力面については最初からそこまで心配する必要はありません。
消防学校に入ってからしっかりと訓練を行いますし、日々の勤務の中でも毎日訓練やトレーニングを行うこととなるため、少しずつでも体力はついてきます。
大切なのは「気持ち」です。
現場はもちろん、訓練やトレーニングも厳しいものとなっているため、そこでめげない気持ちが大切となるのです。
まとめ
以上が、「消防士に適性のある人」や「求められる知識・スキル」のご紹介となります。
ここまでにさまざまな内容をご紹介してきましたが、実際は「消防士は絶対にこうでなくてはならない」ということはありません。
何度も言うように、大切なのは「気持ち」です。
◆「人命を救いたい!」
◆「世の中の役に立ちたい!」
強い意志があれば、どんな状況にあっても心が折れることはありません。
そしてもう一つ大切なことは、「努力を続けられること」です。
消防士になることは、「ゴールではなくスタート」なのです。
消防士になった後も、訓練やトレーニングはもちろん続きますし、「できることを増やす」や「キャリアアップのため」にさまざまな勉強を行っていく必要があります。
消防士として活躍するための努力を続けられる人……こういった人も、消防士になれるチャンスは十分にあるといえるでしょう。
とはいえ、この仕事は大変な仕事であることに違いはありません。
楽な仕事でないことはもちろん、時には危険にも立ち向かわなくてはいけないこともあります。
「なんとなく恰好よさそうだから」などの、いわゆる“憧れ”だけで消防士になってしまうと、厳しい訓練や現場に耐えられずに、早くに退職してしまう人もいるのです。
「消防士になりたい!」と考える人は、まずは早いうちから「消防士とはどういう仕事なのか?」をよく調べて、知見を広げてみてください。
その上で、「どんな消防士になりたいのか?」「どんな風に活躍したいのか?」をある程度でも明確にし、リアルな消防士の仕事を実感してみることをオススメします。